2005年大会INDEX

2005年日本平和大会in神奈川 国際シンポジウムパネリスト発言


line

ユ・ホン


平和と統一を開く人々(SPARK)
国際連帯局長

line


1. 韓米軍基地の再編
 
 「海外駐留米軍再編計画」(GDPR)の一部として、在韓米軍は、ピョンテク、テグ、プサンに、2008年までに移転されることになっています。ソウルのヨンサン(龍山)駐屯部隊と非武装地帯近くの第二歩兵師団がソウル南部のピョンテクに移動する理由のひとつは、部隊を北朝鮮の砲撃範囲外の安全な所に移すためです。それによって、在韓米軍は北朝鮮の先制攻撃の際、その負傷者を最小限にすることができます。しかし、移転の根本の理由は、ピョンテクの空軍、海軍基地を使って機動性を増し、「アジア・太平洋緊急展開軍」として機能できるようにするためです。
 なぜこれがそんなに重要なのでしょうか?在韓米軍の再編は、アジアと世界の私たちすべてにとって、重要な意味をもっています。中国の封じ込め、アジア・太平洋地域の支配という、アメリカの最も重要な戦略にとって不可欠な構成部分なのです。在韓米軍のアジア諸国の介入のための緊急展開軍への変革が阻止されなければ、戦争は起こりうるのです。


2. 在韓米軍の「アジア太平洋緊急展開軍」への変革

1)それは何か?

 在韓米軍の作戦範囲は、米韓相互防衛条約によれば、これまで韓国領土内に限定されていますが、在韓米軍は、「戦略的柔軟性」というごまかしの概念で、その地位と使命を変更しようとしています。すなわち、韓国を北朝鮮の攻撃から守る駐留軍から、アジア・太平洋地域をまたにかけて米国の軍事力を展開する緊急展開軍に変貌しようとしているのです。在韓米軍は、敏速な機動性をもち、この地域のどこにでも即座に派兵可能な軍隊になります。

2)その目的は?

 在韓米軍の「アジア太平洋地域緊急展開軍」への変革を通じて、アメリカは根本的に、中国を包囲し封じ込めることを狙っています。冷戦の終結とともに、アメリカはソ連の代わりに中国を主要な敵とみなしています。この新しい地政学的な状況のもと、アメリカは人民共和国が対抗する超大国になることを阻止したいと思っています。中東から中央アジア、北東アジアまで広がる、いわゆる「不安定の弧」は、アメリカの中国封じ込め戦略に関わる概念です。中国封じ込めの長期戦略を実行するために「不安定の弧」の範囲内の国々で軍事的支配を行使したいと考えているのです。そのために、中央アジアの米軍駐留、印パとの軍事協力の強化、フィリピン・タイとの合同軍事演習などを行っているのです。
 しかし、この広大な地域の中でも、東アジアは、中国包囲・封じ込め戦略の実施という点で最も重要な地域です。在韓・在日米軍の再編強化は、封じ込め政策のために進められているのです。在韓米軍の変革は、中国の封じ込めを主要な目的としており、米軍と韓国軍は、在日米軍と日本の自衛隊とともに、中国封じ込めのための前線軍となるのです。

3)その影響は?

 北東アジアは世界で最も激しく軍事化された地域です。軍事的緊張が最高に達しています。さらに、この転換は、アメリカとその同盟国、すなわち、韓国、日本、台湾と、北朝鮮、中国との間に終りなき軍拡競争を引き起こし、軍事的対立を激化させ、北東アジアに戦争の危険がたえず存在する状況をつくりだすでしょう。アメリカとその同盟国は、中国を圧倒的にしのぐ軍事的優位をもちながら、敵の反撃を無能にするミサイル防衛システムを配備しています。そして、ハイテク攻撃兵器を導入しています。この状況のもとで、アメリカが中国への圧力を増すならば、自衛において不安を感じている中国は、まちがいなく軍事力を増強し、北東アジア地域は恐ろしい軍拡競争に必然的に引き込まれます。この軍拡競争は、日本と近隣諸国、中国、ロシア、韓国などの領土紛争と相まって、アメリカが北朝鮮の核問題を口実に90年代に何度も北朝鮮への侵略を考えたような、より重大な危機を北東アジアにもたらすでしょう。

 一方で、在韓米軍の「アジア太平洋緊急展開軍」への変革によって、必然的に、韓国軍も「アジア太平洋緊急展開軍」として機能せざるをえなくなります。韓国と米軍の関係が垂直階級的なものになっているからです。(在韓米軍は朝鮮戦争以来、韓国軍を支配しています。)これは、韓米国家防衛同盟が、侵略的な地域同盟に変質することを意味しています。アフガニスタンとイラクに駐留する韓国軍が、米太平洋司令部の司令のもとで、米軍を支援するということは、韓米同盟がすでに侵略的な地域同盟に変貌していることを示しています。その上、韓国は中国への在韓米軍の侵略、アジア太平洋地域の紛争介入を行い、その兵站を担う基地となるのです。

 最後に、この変革は、アメリカが永久に中国を封じ込めようとの長期的、地政学的野望を実行に移すとき、韓国の安全保障を著しく危険にさらします。在韓米軍と韓国軍が「アジア太平洋緊急展開軍」に変革された後、中国・台湾紛争への介入は、韓国を中国の敵にし、それゆえ、韓国は中国の直接の反撃にさらされることになります。


3.在韓米軍の「アジア太平洋緊急展開軍」への変革に対するたたかい

1)平和と統一を開く人々(SPARK)の活動

 2003年以来、SPARKは主要な活動として、在韓米軍の「アジア太平洋緊急展開軍」への変革の阻止にとりくんできました。それは、この変革を許せば、朝鮮半島と北東アジアの平和に重大な脅威をもたらすからです。アメリカは、必要があればどこでも、いつでも、いかなる方法によってでも、この地域の軍事力をより制限なく自由に利用することができると考えるようになるでしょう。
 最近の調査によると、韓国国民の約54%が、在韓米軍の即時あるいは段階的撤去を支持しています。しかし、一般の人々は、この変革の危険については知りません。それは、韓米間の交渉が秘密裏に行われ、この転換の本質やその理由が、在韓米軍の「戦略的柔軟性」という名で、覆い隠されているからです。SPARKは、人々にこの危険を知らせる活動とピョンテクのたたかいの支援に力をいれています。

−政府の政策と法律制定に影響を与える国民の行動
 この変革についての韓米交渉が行われるときはいつでも、SPARKは政府機関の前で、記者会見、集会、座り込みなどをおこないます。国会がヨンサン基地の移転合意について議論したときには、SPARKは、国会の前で座り込みを行いました。SPARKは、政府の役人と話し合いを持ち、大統領、国防省と外務省に公開書簡を送りました。

−宣伝活動
 新聞やインターネットメディアにこの変革についての記事を載せたり、テレビやラジオでインタビューを流したりしています。ピョンテクの米軍基地拡大に反対し、街頭宣伝、署名行動を行っています。

−ピョンテク住民のたたかいへの支援
 ピョンテクの米軍基地拡大を阻むことが、在韓米軍の変革を阻止するうえで不可欠な課題であると考えており、事務局長を含めSPARKの二人のメンバーは、住民を支援するためにピョンテクに留まり活動しています。SPARKのメンバーは、住民の多彩な活動に活発に参加しています。

2)ピョンテクの米軍基地拡大に反対するたたかい:戦争ではなく、食べるために土地を!

a)このたたかいの意義
 ピョンテクの米軍基地拡張反対運動は、在韓米軍の「アジア太平洋緊急展開軍」への変革に反対するたたかいの核心です。それは、この拡張が、在韓米軍の可動性のために、資源と地政学的な基地を確保する決定的に重要なものであるからです。
 さらに、米軍がこの戦争基地をつくるために、農民から土地をとりあげておきながら、韓国にそのほとんどの経費の負担を要求していることから、この拡張は、ほとんどの韓国国民の怒りをかっています。とりわけ、ピョンテクの住民は、このたたかいの中心になっています。

b)ピョンテクの状況
 ピョンテクは、湿度、乾燥ともに農業に好条件の気候のもと、韓国でも最高の農地を有しています。ピョンテクの基地は、すでに1511ヘクタールを占拠していますが、さらに、1154ヘクタールの土地を要求しています。自分たちの土地が奪われて数十年経ちますが、ピョンテクの住民は、安全保障の名で再び、生活の糧が奪われる危険に瀕しています。
 まず、ピョンテクの農民たちは、植民地時代に日本に土地を奪われました。次に、朝鮮戦争の後、米軍に土地を奪われました。そして、今、土地は三度、在韓米軍によって奪われようとしています。農民にとって、土地は生活そのものです。特に、ピョンテクの住民にとっては。というのも、住民のほとんどは60代か70代で、新しい生活を始めるには年をとりすぎています。このように、彼らの土地を奪うことは、生活そのものを奪うことになります。

c)ピョンテク住民の運動
 地元住民は土地の収奪ばかりでなく、韓国政府がアメリカと交渉したとき、土地の収用について住民の意見を聞かなかったことにも憤慨しています。住民は、マスコミの報道がなければ、その計画を知る由もなかったのです。
 韓国国防省が2003年4月に計画を発表したとき、農民は米軍基地拡張に反対する住民委員会を結成し、様々な行動を行いました。国防省やアメリカ大使館前で、記者会見やデモを行い、地元で大集会を開きました。2004年9月1日、彼らの指導者の逮捕に抗議して、ピョンテクの警察署の前で、キャンドル・ビジル(ろうそくを灯して集う)を始めました。その日から、その地域では毎晩、キャンドル・ビジルを行っています。今日、11月24日は、450日目のビジルになります。

d)ピョンテク米軍基地拡張に反対する汎韓国解決委員会(KCPT)
 ピョンテクの米軍基地拡張は、住民ばかりでなく、すべての韓国国民の懸案となっています。もし在韓米軍の「アジア太平洋緊急展開軍」への危険な変革が達成されるようなことになれば、すべての韓民国民が決して望んでいない、国全体を滅ぼすような戦争にひきずりこまれることになるのです。しかし、基地拡張の予定地に住んでいるのは、ほんの1370人、535世帯です。このように、住民が自分たちだけで、基地拡張を阻止するのはとても困難です。

 先週の金曜日、SPARKも含めた平和活動家、韓国労働組合会議などの大衆組織、人権団体、市民団体など136組織が、ピョンテク米軍基地拡張に反対する汎韓国解決委員会(KCPT)を結成しました。

 国民の理解と住民との連帯を発展させるため、様々な団体を対象に、ピョンテクへのツアーを組織しました。いくつかの教会はピョンテクで礼拝を行いました。農民が田植えで忙しいときは、委員会は学生などを組織し、農民の手伝いをしました。委員会は、ピョンテクの問題への国民の意識を高める運動にとりくみました。「命の土地と平和を守れ」キャンペーンは、10万人のボランティアを組織しました。

 結果として、7月10日のデモには、全国各地から12000人が集まりました。機動隊の暴力にもかかわらず、参加者は基地のまわりを人間の鎖で包囲し、フェンスの一部を壊して、基地の拡張を阻止する決意を示しました。

 デモはこの問題を国中に知らしめ、住民はこのたたかいへの確信を強めました。8月から10月、委員会はソウルの中心地(Gwang-hwa-mun)で毎週コンサートを開きました。この問題を知らせ、農民を支援するために、有名な歌手、Jeong Tae-chunが歌いました。やがて、日本、北アメリカ、ヨーロッパから、多くの平和活動家が、村を訪れ、住民を激励し、住民のたたかいへの支援を約束しました。委員会は、この問題を知らせ、国際連帯を訴えるために、日本やヨーロッパに代表団を派遣しました。2005年10月29日、委員会のメンバーは、Mun jeong-Hyeon神父と住民を先頭に、ピョンテク駅前の広場にテントを張り、基地拡張阻止を訴え、24時間ビジルを始めました。

 委員会は、12月11日に大規模なデモを計画しています。韓国政府が土地の収用をこの冬で終了させようとしているので、このデモはとても重要です。このように、委員会はできるだけ多くの参加者を組織するために、あらゆる努力をしています。国際社会がこの集会を支持し、できれば集会に参加することをよびかけます。


4. 直面する課題

 在韓米軍の変革は、米軍の世界的な再編の一部分であり、紛れもなく、アメリカが世界の覇権を維持し強化するためのものです。アメリカは、力による脅しと行使によって、世界を軍事的に、経済的に、政治的に支配するという野望を抱いています。その野望は、この軍の変革によって大きくなり、世界の他国の犠牲のうえに、自国の利益と力を得ようというものです。この軍の狂気に私たちが力を合わせなければ、私たちはみな、アメリカが長年計画し、準備をすすめている戦争の犠牲者となるのです。