2005年日本平和大会in神奈川 国際シンポジウムパネリスト発言
新原 昭治
国際問題研究者
日本平和委員会理事
1.周辺住民の怒りに包まれる日本における基地再編
いま、わが国では、10月末にワシントンでおこなわれた日米両政府の外交・軍事首脳の協議の結論で米軍再編の具体的方向が示されたことに対し、米軍基地が最も集中している神奈川県と沖縄県をはじめ、全国の関係地域の住民が自治体ぐるみでいっせいに強い反発を示しています。関係している自治体は全国の12都道府県の55自治体といわれますが、そのすべてが反対していると報じられており、米軍基地問題でこれほど全国的ひろがりをもった批判と憤激の表明は、わが国でもこれまで見られなかったものです。
なぜこれほどの憤りをもたらしているのでしょうか。それは、日米両政府が、地域住民の基地を減らせ、基地をなくせというきわめて切実な要求を頭から無視して、ブッシュ政権の地球的な侵略戦争態勢強化のためのもっとも中枢的な基地として在日米軍基地を強化する路線を日本国民に強引におしつけたことにあります。
その結果、日本国憲法第9条が約束する「平和国家」日本への道は、ますます遠のき、アメリカの軍事力による世界支配のためのいっそう重大な軍事拠点化が、私たちの頭上に迫っています。私はこの許しがたい日米軍事同盟強化のたくらみに、もっともきびしく抗議するものです。
米軍再編での小泉内閣の取り組みの本質を象徴しているのは、国民が平和に生きる権利と人権を完全に否定した不法なやり方です。その手法は、二つの点できわだっています。
第1は、日米両政府がこの問題のすべての交渉内容を、いっさい国民に隠し、暗黒の秘密交渉でおこなったことです。このようにして、アメリカの戦争政策のための、アメリカ政府いいなりの米軍基地の再編強化の方針を勝手に決めて、いまそれをごり押ししています。
第2は、全国の関係地域の住民と自治体の意向を正面から無視したことです。昨年10月はじめ、小泉首相は東京で講演し、基地再編問題はまず「地元自治体と協議し同意を得て、そのうえで、米国に提案して交渉する」と述べました。しかし、それはまったくのごまかしでした。こうしたやり方に、全国の関係地域の自治体がいっせいに異議を唱えているのはあまりにも当然です。
2.何を米軍再編によって狙っているのか
では、このように日本国民の意思、とりわけ基地被害に苦しむ基地周辺の住民の意思を無視して、国民に隠れてワシントンとの秘密交渉で事を決めるほど日米両政府をあせらせたのは何でしょうか。
それは、彼らが、イラク戦争のような国連憲章破りの戦争を、世界のどこででも再現するために在日米軍の軍事態勢を強化しようとしているからであり、このような目的の米軍再編強化に日本国民の支持が得られるとは彼ら自身考えていないからにほかなりません。
米軍再編をつうじて、アメリカが実現を追求しているのは、2つの重要な目標です。第1の目標は、全地球的な規模で、アメリカが先制攻撃戦略をいっそう実行しやすくするためです。第2の目標は、日本の自衛隊など、アメリカのいいなりになる国の軍隊を、アメリカが世界でおこなう戦争の前線に引きずり込むためです。
(米軍の先制攻撃態勢の強化)
まず第1のアメリカの先制攻撃戦略態勢の強化の目標について、見てみましょう。今年5月に明るみに出た米国防総省の米軍再編問題に関する指導文書は、再編のねらいについてこう書いています。
「世界のさまざまの地域を超越して行動できるようにし、『縫い目』なしに世界的規模で戦力投入ができるようにすること」。そして、とくに「迅速展開能力を強化」しなければならない、と。要するに、地球上どこにでも軍事力を投入して一方的な侵略的戦争、先制攻撃の戦争を遂行するために、より効率化をはかり、軍事攻撃の態勢の強化を実現するための再編であります。これによって、世界のどこででもアメリカの一方的意思で戦争できるようにし、同時に、その圧倒的に強力な戦力の世界的展開によってアメリカ政府の思い通りの結果を手に入れるための、軍事脅迫行動をすすめようとしています。それは、まさしく国連憲章が明確に禁じた「武力による威嚇」「武力の行使」そのものを遂行する態勢です。
10月末の日米の軍事・外交首脳の協議の結論は、そのいわゆる「中間報告」と称する文書のなかで、次のように明確に述べられています。「米国の打撃力及び米国によって提供される核抑止力は、・・・・引き続き日本の防衛力を補完する不可欠のものであり、地域の平和と安全に寄与する。」
米軍が日本におく「打撃力」とは、海ではこの神奈川県の一大米海軍基地横須賀を母港とする米空母打撃軍に代表される殴り込み戦力であり、今回、空母は地元の人びとの猛烈な反対をおして原子力推進空母と交代することが発表されました。海兵隊は司令部要員などが若干減るというだけで、沖縄や山口県岩国などにひきつづき殴り込みの先鋒部隊を常駐させ、その態勢存続のための基地新設と一連のたらい回しが大問題になっています。首都の東京にある横田基地をはじめ日本に4つある大規模な米空軍基地を拠点とする空軍の「航空宇宙遠征軍」は、ひきつづきその侵略的な打撃戦力を日本列島の北から南までの要所に配置しつづけます。そして、あらたに米陸軍はこの神奈川県の座間基地を強化し、海外への手軽な遠征出撃機能を強化した部隊の現地指揮にあたる前線司令部の中枢機構を米本国から移すことも発表し、これに反対してきた相模原市、座間市をはじめ同地域の一連の自治体と住民がこぞって強く反対しています。
また、沖縄では、とくに海兵隊のいわゆる「打撃力」の温存と強化をめざして、人口密集地のどまんなかにある普天間海兵航空基地の撤去の代替条件として名護市辺野古沖を埋め立てて新基地建設をすすめようとしてきたものの、それが住民の強い抵抗によって阻まれると、こんどは、その辺野古沖と目と鼻の先の米海兵隊基地キャンプ・シュワーブ沖を埋め立てて、そこに新しい攻撃戦力のための新基地建設を、周辺住民への重大な爆音被害などが生じることを知りつつ、推進するとの計画を発表し、ついに自民党の稲嶺県知事までがそれに反対を表明するような事態になっています。
これとあわせてみなさんのご注目を惹きたいのは、「核抑止力」という名目であたかも核先制攻撃のための戦力が日本の防衛のためであるかのような欺瞞のもとに、日米両政府間の核密約にもとづいて、いつでもアメリカの核兵器と核戦力を日本の米軍基地に持ち込むための態勢が、ひきつづきとられ、むしろ最近あらたに強化されつつある兆候がみえることであります。今回の日米両政府発表が、平然とアメリカの「核抑止力」への依存を表明しています。広島と長崎で世界最初の核兵器投下という人類が許せない大犯罪を犯したそのアメリカ政府が、被爆国の日本を核兵器の先制使用のための基地として再強化しつつあることは、絶対に許せません。
(日米両軍の共同の戦争態勢づくり)
アメリカがこの再編で追求する第2の目標である、日本などアメリカのいいなりになる国の軍隊を、戦場で米軍とともに肩を並べて戦えるようにするための本格的な態勢づくりについても、いま展開されつつある状況を見ておきましょう。
日米両軍による共同の戦争態勢づくりへの方向付けは、今回の日米両政府の軍事・外交首脳の結論でもっとも注目された内容の一つです。
東京国際大学教授の前田哲男氏は、これを「日米連合軍化」という新たな性格を注入したものと分析し、さらに加えて日本「国外での軍事活動」の基本方向を与えたものと指摘しました(沖縄タイムス10月31日付)。まさしくこの米軍再編は、日本の自衛隊が、いまや日本国憲法第9条を完全に“亡きもの”にして、世界で米軍とともに戦争する態勢を露骨に具体化しようとするものにほかなりません。この日米両軍の連合軍化の方向が、憲法第9条の明文破棄を内容とする自民党の初めての「新憲法草案」と日を前後して発表されたのも、偶然ではありません。
このような日米間の軍事同盟の危険きわまる新展開は、ブッシュ政権成立前夜に、米国防大学の研究所が発表した「アーミテージ報告書」の提言がいよいよ実行に移されようとしていることを示しています。あの報告書は、日米間の軍事力強化のために設定されたガイドラインの忠実な実施や日米両軍の戦力構造の強化を促して、ちょうどアメリカとイギリスのあいだの軍事同盟と同じように、日米同盟関係が「戦力分担の時代に入るべきだ」と提言していました。
しかし、いまの世界の動き、とくにイラク戦争とイラク軍事占領の生々しい実態は、日米両政府が日本の自衛隊を引き込んでアメリカの世界における戦争のための共同軍事態勢をきずくには、あまりにもすさまじく、新たな戦場に追いやられるかもしれない日本の若者も含めて、世界の人々の生命と暮らしを無残にもないがしろにする危険性を、かつてのどの時よりも多くはらんでいることを、きびしく警告しなければなりません。
かつて湾岸戦争のさい、米陸軍戦車大隊の隊長として戦場にのぞんだ経験を持つ退役米陸軍中佐のR・ジンマーマン氏はさきごろ、志願者が先細りになってきた米陸軍の補充要員をめぐる米国防総省のあれこれのあわれままでの対応措置について、あるアメリカ国内の軍事問題のサイトで論評し、事態打開のため、アメリカ政府は退役兵士のための福祉手当等を削ってまで、べらぼうな額の報奨金や死亡手当で若者を惹きつけ、入隊を勧誘しているが、それでもうまくすすまないと書きました。実際、9月末で締め切られた2005会計年度の米陸軍の新兵募集の結果は、目標に10%近く及びませんでした。ジンマーマン氏の論評は、戦争態勢を継続する米軍の課題と現実の新兵不足というどうにもならない矛盾に目をつけながら、いま、米国の政治家の多くは、窮状から這い出るため、古代ローマ帝国時代におけると同じような「異民族のお雇い兵」の現代版を追求しようと夢見ていると書いていました。
日本の自衛隊を世界の戦争で米軍とともに肩を並べて戦わせる構想の具体化が急がれているのは、まさしくそういう理由によるものであり、だからこそ日米両政府は、こんどの米軍再編の交渉を完全な秘密交渉ですませて、その結論だけをまるで封建時代の領主のように、国民に無理矢理おしつけているのです。
こういうねらいにそって、今回の日米両政府の軍事・外交首脳の発表は、米軍と自衛隊による基地の共同使用や、両軍の指揮・統制のための司令部間の連携の強化とか、相互運用性の向上、そのための共同訓練の強化などを、正面切って掲げ、これによって両軍の軍事「能力を強化する」と明確に方向づけています。
3.世界的な米軍基地網を正当化する戦略的発想はどのようなものか
では、ブッシュ政権がこのような米軍再編をすすめて、世界にひきつづき米軍基地網をはりめぐらせ、新たな先制攻撃の戦争をいつでもやれるようにしつつある背景には、どのような戦略的発想があるのでしょうか。
それは、他のいかなる国も対抗することを許さないほどの圧倒的に強力なアメリカの軍事力による世界支配こそが、「世界の平和」の保証だという発想にほかなりません。
このことは、3年前にこの政権の「国家安全保障戦略」の執筆の中心にいたコンドリーザ・ライス国家安全保障担当大統領補佐官、いまの国務長官が明確に語っています。
2002年10月1日にニューヨークで一節です。「平和を守るためのすべての手段を支援するため、アメリカは文句のつけようのない21世紀の軍事力をつくりあげ、維持するであろう。われわれは、いかなる潜在的対抗者もアメリカやわが同盟諸国の力を追い越そうとか、肩を並べようなどと夢見て軍備を増強するのを、思いとどまらせるよう追求するであろう。」このようにして「軍事的競合を思いとどまらせることで、紛争の可能性と莫大な費用のかさむ世界的軍拡競争を未然に防止することができる。」
ある人は、これを19世紀の帝国の力が絶頂期にあったかつてのイギリスの戦略思想ときわめて似通っていると評しました。両者に共通するのは、彼らのいう「平和」とは、彼らの他国への軍事的制圧のことであり、必要次第では彼らの側からの戦争をも意味していることです。
そのために、いまアメリカは、秘密基地まで含めると優に1000を超える世界各地に設けた海外基地網を、圧倒的力による対外的軍事支配の足場、戦力投入の拠点にしているのです。
アメリカは、植民地主義崩壊の世界史の流れの中でみずからもフィリピンなどかつての植民地支配を放棄しましたが、軍事基地網による世界の軍事支配の力は、かつての植民地支配のカナメをなしたイギリス帝国が足元にも及ばないほどのきわめて強力なものです。核兵器と情報技術を含むハイテクの軍事利用と宇宙の軍事拠点化に典型的に示された一連の人類の知的資産の到達点が、旧時代的な覇権主義、帝国としての世界の軍事支配のためにアメリカによって用いられ、それが、世界の米軍基地網に凝縮しています。
しかも、数多くの秘密基地さえ存在しています。それらは、目下問題になっているCIAが各国に設けた闇の収容施設とも似た、非公然の基地群です。米国防総省が毎年発表している分厚い米軍基地リストにも掲載されない基地を3つだけ数え上げましょう。
たとえば6年前のユーゴスラビア戦争の時に「平和維持軍」施設の名目でつくったコソボのキャンプ・ボンドスティールが、いま恒久的な米陸軍基地として秘かに存在し、最近ではそこにまでCIAの悪名高い「闇の施設」の一つも存在すると指摘されて、問題になっています。アフガニスタン侵攻で米軍が最初につくった基地は、カンダハル南方の米海兵隊の秘密基地キャンプ・ライノーですが、そこは沖縄の米海兵隊、東京の横田米空軍基地と文字通りは直結しています。ここにも、ヨーロッパの人権団体が早くから問題にしているグアンタナモのような暗黒の収容施設が存在し、問題になっています。さらにいま米軍15万以上が実質的占領状態をつづけるイラクでも米軍がひそかにバクダッド周辺のキャンプ・ビクトリーなど、一連の基地の恒久化をひそかにはかっていることも指摘しておかなければなりません。
4.日本における米軍基地の存在も歴史上の一大不正から始まった
日本における米軍基地の存在は、今年で60年目を迎えました。いまや日本の米軍基地は、先制攻撃戦力のための実戦部隊とその前線指揮機構の存在の大きさなどさまざまの指標において、文字通り世界一の一大米軍基地群になっており、さらに今回の米軍再編でこの方向がいっそう顕著になろうとしています。基地の数、駐留米軍の兵員数も、この再編でドイツから大幅に減らそうとしているのとは対照的に、いまや日本はあらゆる指標で世界一の米軍基地国家になろうとしています。
日本国民にとってきわめて忌まわしいこうした巨大な米軍基地群が、わが国にいすわるようになったのは、決して公明正大の国際社会のルールにのっとって実現したものではないことを、私は歴史の動かせない事実の問題として告発したいと思います。
第2次世界大戦直後に始まった米軍の駐留は、日本の侵略戦争によって始まった連合国との戦争における日本の敗戦の結果であり、連合国の意思を代表する措置として駐留軍でした。しかし、アメリカ政府はほどなく「冷戦政策」の遂行の名のもとに、「ポツダム宣言」に違反して、みずからの覇権主義戦略のために日本をアメリカの侵略的戦略のための軍事拠点に変えました。
このためにアメリカ政府は二つの不正な措置を一方的に強行しました。
一つは、日本の47の県の一つである沖縄県を、日本から行政的に強制分離して、アメリカの軍事植民地支配下においたことです。1951年に締結された対日「平和」条約にアメリカは沖縄の無期限全面占領の規定を入れ込み、これに当時の日本の保守政府は署名しました。これは、国連憲章によっても明確に禁止されている植民地支配そのものとして、沖縄県民の強い憤激と祖国復帰の一大闘争をひきおこしたのでした。この闘争の結果、条約には規定されていなかったにもかかわらず、アメリカは沖縄の米軍全面占領を放棄せざるをえなくなりましたが、当時の日本の自民党政府の協力により大多数の米軍基地は全面占領下と同様に置かれ続けたのです。これが、今日の沖縄県での基地問題を特別に鋭い矛盾を抱えたものにしている根本的原因です。
したがって、沖縄の米軍基地は即刻、全面的に撤去されなければならないものであり、もともとそのたらい回しとそのための犠牲と膨大な経費負担を国民におしつけることのできるような筋合いのものではありません。
もう一つの在日米軍基地の存在の歴史的不正は、その他の都府県における米軍基地にかかわるものです。アメリカは、1951年の対日「平和」条約調印と引き替えに、不法に米軍基地を日本に起き続けることを画策し、当時の吉田内閣に秘かにそのための取り決めとして、日米安保条約の締結をもちかけました。このための交渉は、日本がまだ米軍の全面占領下におかれていた状況下での秘密交渉で、国民にはまったくその内容は知らされませんでした。当時の日本のどの新聞にも、調印以前には条約案の内容はいっさい報道されませんでした。そして、特徴的なことは、1951年9月8日、サンフランシスコ市内での対日「平和」条約調印の数時間後に、日本の全権団の一部がサンフランシスコの米陸軍基地の下士官集会所に連れ込まれ、そこでたった10分間の日米安保条約調印式がおこなわれたのでした。しかも、日本側から安保条約に調印したのは、日本から行った6人の全権のうち、吉田茂首相ただ1人だったという異常きわまるものでした。
これについて、米国務省はその数年後の内部用の極秘文書で、「安保条約の条文は、調印までは、ごくわずかの日米両政府関係者以外、だれにも知らされていなかった。もちろん、一般の国民はその内容を知る由もなかった。吉田首相だけが日本代表として調印したのも、残りの日本側全権使節は条約の内容を知っていなかったからだった」とありのままの経過を記しています。
こうして、日本の軍国主義と侵略戦争の惨害から平和国家を真剣に求めた圧倒的多数の日本国民の願いと選択を、だまし討ちと暗黒の秘密交渉と旧時代的な軍事植民地支配の強制によって封殺し、押し付けたのが、今日もつづく日本の膨大な米軍基地群にほかなりません。
私たちは、多くの日本国民に、とくに若い人々に対して、日本の米軍基地のこの不正な起こりについて、十分知らせていくことが、米軍基地の問題に対する私たちの取るべき基本的立場を固める上で、きわめて重要な課題だということを強調したいのです。
5.どのように米軍基地をなくすためにたたかうか
私たちは、いま米軍再編をめぐる鋭い批判と憤りの噴出を目にしています。
今後、私たちは米軍基地をなくし、平和で公正な世界の実現を求めてどのように活動すべきでしょうか。
私たちは、まず日本国内では、いま各地で自治体ぐるみで起きている住民の米軍再編強化への強い反発と抗議を激励し、ともにいっさいの米軍基地強化を許さず、また米軍基地の恒久化を絶対に阻止するために、多くの人びととの共同と連帯をいっそう強める必要があります。
そして、さらにいえば、この各地域の世論と運動を、その地域どまりにとどめずに、全国民にそれらの地域の人びとの決起とその背景についてよく知らせ、共感の世論を全国的につくりだすことが急務です。
一連の過去のアメリカ政府の在日米軍基地をめぐる解禁文書が示していることは、基地周辺住民との摩擦と矛盾が、日本全体の問題に発展して日米安保体制をおびやかすようになることをアメリカ政府が非常に恐れ、それを極力避けるために、さまざまの矛盾緩和策や一定の「負担軽減」がはかられてきたことを、明瞭に裏づけています。全国的な政治問題となることを、彼らは非常に恐れています。
そのためにも、基地の再編強化に対抗するためには、日米両政府の米軍基地再編強化のねらいとそのための作戦をリアルに見抜くことが大事であります。
同時に、日本と世界の平和のために意識的に活動する私たちは、このさい全国的に基地のない日本を実現する方向を選択しなければなりません。そのためには、米軍基地の存続を保証し日米共同の戦争態勢推進の法的基盤となっている日米安保条約の廃棄を実現するために、これを国民多数の世論にするための努力を強めなければならないことを、とくに強調したいと思います。そのために、知恵を集め、エネルギーを使う必要があります。
同時に、世界で米軍基地に反対する運動を大きく前進させる上で、きょうご出席の海外代表のみなさん方のお力も借りて、ぜひとも、海外米軍基地をなくすための国際連帯を強めたいと心から願うものであります。恐らくそのためには、いまの各国の米軍基地の状況や、米軍を世界に配置することに反対する運動の状況などについての情報を、互いに交換し、共有することが、さしあたりきわめて痛切に求められているのではないかと思います。
この点については、是非、このシンポジウムならびに今回の日本平和大会のなかで、さらに具体的な意見交換がおこなわれることを、強く希望するものであります。
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