この「多様な」インフラには、いくつかの概念的な支柱があります。
第一に、柔軟性です。ペンタゴンは、完全な行動の自由をのぞんでいます。もしドイツなどの「従属」国家が、将来のアメリカあるいはアングロサクソンの戦争に、米軍基地や施設を使わせるのを躊躇するなら、彼らは迅速に他の「従属国」の基地を使用できるようにしたいと思っているのです。同様に、アジアの再編の主力をになう韓国の計画は、米軍のインフラを柔軟にし、多くの軍事機能に対応できるものにするためです。すなわち、「体制交替」(regime change)の戦争に役立つとともに北朝鮮を抑止するためのものであり、韓国の対外・国内政策に影響をおよぼす、東アジア全体、ひいてはペルシャ湾までのアメリカの軍事介入を援助するためのものです。
第二は、スピードです。新たなリリーパッド基地は、軍事介入の起点として使用されることになります。アメリカの攻撃対象国が防衛態勢をとり、長期の抵抗戦略を準備するまえに一撃を加えることを可能にするのです。
米軍の前進配備部隊は、三段階の統合機構に沿って組織されることになります。1)イギリス、日本、沖縄、グアムとカタールにあるような主要な中枢基地、2)スペイン、韓国、ディエゴ・ガルシア、クウェートにあるような、より小規模なセンターあるいは「前進作戦基地」、3)タジキスタンからペルーにいたる諸国の「リリーパッド」基地などです。
弊害、権利侵害、アメリカの戦争を終わらせるために
在外米軍基地の抑圧的インフラから生じ、それによって強化されている「弊害と権利侵害」と帝国戦争を、いかにして終わらせるか、簡単な答えはありません。しかし、アメリカの奴隷制廃止運動の指導者、フレデリック・ダグラスの「たたかいがなければ、権力の側は何も明け渡すことはしない」との言葉に見識を見出すことができます。そして、武力による抵抗の勝利に加え、政治的、知的、文化的、経済的、精神的など、さまざまなレベルで、たたかいは起こっているのです。
アメリカの選挙の直後、そしてファルージャの新たな侵攻の前夜、アメリカの主要な平和と正義の活動家たちと組織は、希望を取り戻し、将来進むべき道を示すために行動しました。選挙後1週間は、アメリカの選挙民の48%がブッシュとチェイニーに反対票を投じたこと、意気消沈することは抑圧者に武器を渡すようなことだと、人々に知らせるために全力をあげました。自然発生的に、あるいは激励されて、人々は地域で集まり、またインターネットを通じて一つになり、人間が持っている力、さらには、集団の努力の力を私たち自身に思い起こさせてくれました。
11月3日から、人々は平和のビジルを組織し、会議に参加し、ファルージャの予想される大虐殺に対する抗議行動を計画しました。セミナーや小規模な会議などで、私たちは、政治的な突破口や機会はどこにあるか、何を優先課題とするかについて模索し始めました。連絡委員会のマーク・ソロモンが言うように、殺戮をやめさせ、民主主義のうちまだ残っているものを守り、社会保障制度で残っているものが破壊されるのを防ぐために「すべての連合体の中心部分」を組織することが求められています。
短期的には、運動の焦点は、ブッシュの就任に抗議する大規模なデモになります。アメリカ全土の地域で小規模な抗議行動を行いつつも、主要な全国的なデモを行う計画がまとまりつつあります。ポルトアレグレの世界社会フォーラムは、国際的な討論と計画作りのための重要なフォーラムの場となるでしょう。そして、2月下旬に、アメリカで最大の平和連合体である平和正義連合は、全国大会を開きます。
そしてこれから春までの間、戦争をやめさせる活動に加えて、私たちの努力の多くは、NPT再検討会議のために教育し動員することに向けられねばなりません。これは、主に、平和市長会議のキャンペーンを支持し、5月1日のデモを組織することを通じて、進められます。
また、私たちは歴史的な時期に生きていることを思い起こさねばなりません。ローマ、スペイン、日本、そしてほとんどのイギリス、フランスの軍隊は、彼らの帝国の衰退と崩壊とともに自国に帰りました。このように、帝国主義と軍国主義に反対し、民主主義をめざすより大きなたたかいの一部として、私たちの反基地闘争を理解することが、依然として不可欠なのです。私たちの行動がより広範な文脈のなかで行われるなかで、アメリカが、増加する国家赤字や貿易赤字を埋め合わせるために、ヨーロッパ、アジア、石油の豊富な中東の国々に依存し、ますます孤立したのけ者の国になっていることを思い出すべきです。あるときオランダの元外務大臣が私に言ったように、また、ヨーロッパでの団結の高まりに見られるように、これらの国々のいくつかが「もう十分だ」という結論に至るかもしれません。彼らは、アメリカの債権を売却し、いくつかのアメリカの企業から資本を引き上げることによって、アメリカの砂上の楼閣、そして軍事インフラの多くを倒す力を十分に持っています。南アフリカのアパルトヘイトを終わらせるためにとった行動と同様なのです。
私たちのことを、イラク戦争を終わらせ「体制変更」に影響を及ぼすために国内での活動に専念していると言うのは、控えめな言い方になります。反基地運動の私たちがここ数ヶ月、もっと運動できなかったことを申し訳なく思っていますが、私たちは出来る限りのことをやっています。3週間前、アメリカ各地、アジア、ラテンアメリカから、基地に反対する学者、活動家の新しいがまだ正式ではない国際ネットワークが、ロードアイランド州のブラウン大学に集まり、お互いから学びあい、これまで行われた米軍基地に反対する社会運動のうち最も成功した戦略は何であったかを話し合いました。(ナショナリズムと反帝国主義に根ざし、強力な国際連帯と経済的に実際的能力をもつことが優先されました。)いかなる政治運動でも基礎になるものは知識であり、これが私たちの道徳的想像力を高め、分析に役立ち、行動を支え導いてくれることから、私たちがこの会議で行ったこと、そして将来行うことは、米国の兵員、基地、戦争マシーンを撤退させるというアメリカの私たちの責任をよりよく果たす基盤をつくることに役立つと期待しています。この会議で私たちがとったささやかな行動のひとつは、辺野古の新基地建設に反対し、現地の反対運動への支持と連帯を表明する声明を採択したことでした。
ハーバート・ドセナが私と同様に話してくれると思いますが、この2年間、世界中で反基地運動の波の高まっています。最も感動的なことは、フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウスの指導の下に東アジアで始まった世界的な反基地ネットワークの誕生です。5年前のソウルの会議で、アジア・太平洋とアメリカの反基地活動家は、情報を共有し、可能な協力を探求し始めました。その後、ジャカルタやソウルで会議が開かれ、「基地ノー」ネットワークが去る1月、ムンバイの世界社会フォーラムの反基地会議で立ち上げられました。
このネットワークのEメイルネットワークは、世界中の数百の人々、組織の役に立っています。各基地に関する詳細な情報や、抵抗運動を掲載したホームページがまもなく開設されます。私たちは、行動と連帯のなかで協力をすすめるための多くの方法を、ゆっくりであるが模索しています。
アジア・太平洋の基地への抵抗には、辺野古の座り込み、韓国のキャンドルライト行動、フィリピン国民の米軍と基地再確立に反対するたたかい、ハワイの先住民が基地の拡張に反対し、自分たちの神聖な土地を取り戻すために、勇気を持って伝統的宗教や文化に依拠しようとする試みなどがあり、そして、さらに西に行くと、ディエゴの移住させられた人々が、自らの家と文化に帰ろうとする決意があり、これらのたたかいは、反基地運動の私たちすべてを鼓舞するモデルとなっています。
ラテンアメリカでは、コロンビアで高まるアメリカの戦争を援助するためにつくられているエクアドル、ペルー、コロンビアの新しい基地網の建設に地域コミュニティが抗議しています。ヨーロッパでは、活動家がアメリカとNATOの核基地で市民不服従の活動を行っています。イギリスの反基地キャンペーンに加え、OFOGというスカンジナビアの若者の活発なグループが、ノルウェーとスウェーデンの秘密基地を探し出し、抗議する重要な活動をしています。これらのグループは、平和人権ヨーロッパネットワークで、さらに、最近ではヨーロッパ社会フォーラムで集まり、情報を共有し、活動を調整して行っています。
もちろん、現実はダイナミックで破滅的です。同時に、軍事化された体制の日々の活動は、過去にそうであったように、私たちに重要な好機を与え続けています。ヘーゲルの言う歴史的瞬間は、私たちがまったく予想しないときにやってきます。95年に沖縄の12歳の少女が拉致され暴行された事件に対する世界の人々の怒り、それに対する非暴力の抗議の連帯、アルプスのリゾートで、無謀な飛行を行った米兵パイロットが、スキー場のリフトのケーブルを切断し、イタリア人が死亡した事件への同様の怒りと連帯を思い起こしてください。ジョン・レノンは「人生は、他のことを行うと計画をしているときに、起こるものだ」と述べた。増大するラテン系住民の票をめぐる競争が予期せぬ統合をみたことは、数十年にわたる勇気ある運動を強化し、ヴィエケスの基地の閉鎖をアメリカの中心的な問題にしました。EDSA革命の引き金となったのは、マルコスによるアキノの殺害であり、米軍基地のフィリピンからの撤去に導いた抵抗運動を燃え上がらせました。
最後に、冷戦の初期に出されたクエーカーの声明、「権力に対し真実を語る」から引用したいと思います。それは、当時のように、現在も雄弁に語っています。「今日の世界における軍事力は、自由とは相容れない。安全ももたらさず、悪と立ち向かうにも有効ではない。」粘り強さと想像力をもって、アメリカの私たちは、米軍基地撤去をめざす運動と連帯する方法を見つけ、これをつくり出すでしょう。
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*Dr. Joseph Gerson is the Director of Programs of the American Friends Service Committee in New England. He is deeply involved in the U.S. peace and anti-war movement and participated in the founding conferences of United for Peace and Justice, The Asia Peace Assembly, and the European Network for Peace and Human Rights. His books include: The Sun Never Sets: Confronting the Network of Foreign U.S. Military Bases , With Hiroshima Eyes: Atomic War, Nuclear Extortion and Moral Imagination , and The Deadly Connection: Nuclear War and U.S. Intervention . For more information, write JGerson@afsc.org, see www.afsc.org/pes.htm, or phone 617-661-6130.
1. David D. Kirkpatrick. "The Antiwar Right Is Ready to Rumble", New York Times, Nov. 7, 2004
2. The quote is from Richard Viguerie, "the dean of conservative direct mail." David D. Kirkpatrick. "Some Backers of Bush Say They Anticipate a 'Revolution.'" New York Times, Nov. 4, 2004
3. Ron Suskind. "---------------------" New York Times Magazine, October __________, 2004
4. See Hannah Arendt. The Origins of Totalitarianism. New York: Meridian Publishing, 1972.
5. See Katha Pollitt _______________________
6. Thomas Frank. "Why They Won", New York Times, January 5, 2005
7. Garry Wills. "The Day the Enlightenment Went Out", New York Times, Nov. 4, 2004.
8. George Wright. "Wolfowitz: Iraq war was about oil", The Guardian (U.K.) June 4, 2003.
9. 120,000 U.S. troops, 20,000 "coalition" troops - primarily British, and 20,000 mercenary forces.
10. The U.S. Declaration of Independence, written in 1776, stated that because King George III of Britain had "kept among us in times of peace" "Standing armies" that committed "abuses and usurpations" it was necessary to declare independence from Britain and to fight a war for that purpose.
11. Wayne Parry. "F-16 on Training Flight Strafes N.J. School", Boston Globe, Nov. 5, 2004
12. Calculating the numbers of bases, installations and the nations they are in, is an imprecise art. The figures cited here are conservative and do not take into account military warehouses, which are sometimes counted as installations. Similarly, some use the figure of 100 nations. This includes military attach_s in U.S. embassies. And, with President Bush having promised that the U.S. would be fighting an overt and covert war in between forty and eighty countries, at this time only senior figures in the Pentagon and CIA and White House have access to the complete list. Among the best calculations are those of Chalmers Johnson in The Sorrows of Empire: Militarism, Secrecy, and the End of the Republic, New York: Henry Holt and Co., 2004,
13. "The National Security Strategy of the United States". http://www.nytimes.com/2002/09/20/international/20STEXT_FULL.html
14. Condoleezza Rice. "Our Asia Strategy", Wall Street Journal, October 24, 2003
15. Michael R. Gordon. "A Pentagon Plan To Sharply Cut Gig's In Germany", New York Times June 4, 2004
16. Jim Garamore. "Global Military Posture's Part in Transformation", Armed Forces Press Service, Dec. 2, 2003.
17. Michael R. Gordon, op. cit.
18. Bradley Graham. "U.S. May Halve Forces in Germany", Washington Post, March 25, 2004
19. "Ailing Guam looks for boost from U.S. military", Japan Times, Aug. 1, 2004
20. "Local opposition is overshadowing feasibility of U.S. troop realignment", Japan times, July 19, 2004
21. Alan Boyd. "US reorganizes its military might", Asia Times on Line, Nov. 27, 2004
22. See, among others, Thom Shanker. U.S. Retools Hussein leisure Palace as Camp Victory, New York Times, June 12, 2004.