2002年大会INDEX
2002年日本平和大会国際シンポジウム 特別発言


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高草木 博(たかくさき ひろし)

原水爆禁止日本協議会

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「草の根の行動が推し進める21世紀反核平和の流れ」


 発言の機会をいただいたことに感謝します。
 今年8月、原水爆禁止2002年世界大会は、24カ国65名の海外代表、全国の草の根から約1万の代表を結集して開催されました。大会には大別して三つの特徴があったと思います。新アジェンダ連合、非同盟、東南アジア非核地帯を代表する8つの国の国家元首・政府首脳からメッセージが寄せられ、エジプト、マレーシアなど世界の非核の流れで重要な役割を果たしている政府代表も参加して、豊かな交流と核兵器廃絶への探求が行われたこと、21世紀の主役となる若者の参加が数の上でも、役割の点でも大きく前進したこと、そして、大会が、「核戦争を防ぎ、核兵器廃絶の世界的な合意をつくりだしてきた」ことを世界の反核平和運動の到達点として確認し、逆流を封じる反核平和の流れをさらに発展させるよう一致してよびかけたことです。大会から約100日間へたいま、内外情勢の発展は、イラク問題をめぐっても、この間の国連軍縮審議をめぐっても、この流れが世界の本流であることを強く確信させるものとなっています。

 いま、国際情勢の焦点となっているイラク問題は、ブッシュ政権が「悪の枢軸」と名指して、一方的に武力攻撃を準備し、しかも核使用を重要な選択肢としている点で、反核平和運動にとっても重大な挑戦となっています。同時に、このイラク問題での米国の対応は、「同時多発テロ」で追い風に乗ったブッシュ政権の覇権追求にとってのアキレス腱となっていることを見ることが重要です。実際、今年1月、米議会に提出されたブッシュ政権の核攻撃計画=「核態勢見直し(NPR)」は、3月その全容がほぼ明らかになると世界の反核平和運動からいっせいに反撃を受け、アメリカでは、広がりつつあった報復戦争一本槍の対応にたいする批判を一挙に加速させ、国連の舞台でも、非核保有国にたいする核兵器不使用の安保理決議に抵触するとの、厳しい批判に直面せざるを得ませんでした。日本原水協が、人類の安全の根幹にかかわる問題として、核使用計画を止めさせるよう国連安保理事会に提起し、「核兵器使うな、なくせ」のイニシアチブを取ったのも、このときのことでした。さらに、「平和に対する脅威」を決定し、必要な措置をとる国連安保理事会の権限をハイジャックし、米英が一方的に武力行使を決定するという無法なやり方もまた、武力攻撃の適否で意見を分かつ諸国も含め、世界のコンセンサスともいうべき厳しい批判をうみだしました。ことし夏に予定していた米英の武力攻撃の挫折がアラブ諸国をはじめ、世界の一致した批判で挫折したのもまさにこのためでした。そして、国連安保理での審議の開始とともに、武力一本槍の対応にたいし、「ストップ戦争(Stop the War)」で一致した世界諸国民の世論と行動が、いま、武力攻撃の手を封じています。11月8日、国連安保理が全会一致で採択した1441号決議は、武力行使自動発動の手を抑え、国連中心の解決を明らかにした点でこうした流れを反映するものです。
 同時に私たちは、現在のイラク問題が、1990年8月、イラクが行ったクウェート侵攻と占領という国際法のじゅうりんに端を発していること、その大量殺りく兵器の解体と査察受け入れは、イラク自身が安保理決議を受諾し、合意したものものであり、イラクもまた、その合意を遵守し、平和を守るべき重大な責任を負っていることを指摘しておきたいと思います。

 核軍縮をめぐるこの間の国連審議の内容と結果も、反核平和の世界の流れを確信させるものです。今年の軍縮審議でのひとつの特徴は、紛争解決の問題と並んで国連憲章の根幹をなす軍縮問題でも、ブッシュ政権の一国行動主義により、国連中心の協議と合意がじゅうりんされていることへの広い認識でありました。第一委員会審議で、議長や軍縮担当の事務次長が強調した最初の問題もまた、ユニラテラリズムに対するマルチラテラリズの重要性でした。また、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准・発行拒否やABM条約からの脱退などを批判し、「核兵器廃絶の明確な約束」実行を求める流れが、引き続き多数を結集していることも特徴です。10月下旬に行われた第一委員会での決議採択でも、「核兵器廃絶の明確な約束」とそれを含む13項目の軍縮措置の実行、非核保有国への核不使用(いわゆる「消極的安全保障」)の確認などを含んだ新アジェンダ連合の決議(L3)が賛成118、反対7、核兵器廃絶交渉の開始を求めたマレーシア提案の決議が賛成106、反対30、CTBTの発効促進決議が賛成125、反対1と、いずれも大差の支持を得ています。
 もうひとつ大事なことは、これらの問題でカナダ政府が取った態度です。10月下旬、私たちがニューヨークでカナダ代表部を訪れた際、カナダ外務省の交渉担当者は、核使用の危険を懸念して廃絶を求める日本原水協の指摘に対し、「同感だ」と述べ、カナダのクリティエン首相がNPRが明るみに出た4日後にはブッシュ大統領に会って非核保有国への核不使用の立場に変更があるかを強く問いただしていたことを明かしました。NATO加盟国であるカナダ政府は、核兵器の先制使用についてもなおこれを否定しない態度にとどまっていますが、そのカナダが、ことし新アジェンダ連合の決議に賛成票を投じたのは、まさにブッシュ政権の核政策に強い懸念をもったからでした。ここにも、反核平和の流れが世界の大勢として着実に前進していることを確認できると思います。
 他方、日本政府が出した決議は、「核兵器廃絶への道程」をテーマにしながら、内容的には、核不拡散条約の未加盟国に対して加盟を迫る一方で核保有国にたいしては「核兵器廃絶の明確な約束」の実行を求めることさえせず、非核保有国にたいする核兵器不使用の保障にも言及しないものでした。日本政府は、「日本は安全保障をアメリカの核抑止力に依存している」とし、「アメリカ政府が反対しない範囲」でしか、核軍縮の措置を求めないという態度を取っています。憲法と「非核三原則」、被爆国日本の国民世論に照らして、こうした日本政府の態度を改めさせることは、日本の平和運動の国際的責任であることを強調したいと思います。

 最後に、私は、原水爆禁止2002年世界大会のよびかけに応えて、9月11日、内外に提唱した新しい署名運動「ヒロシマ・ナガサキをくりかえさないために――核兵器の使用を許さず、核兵器全面禁止・廃絶を要求します」を、全国でいっそう大きく広げることをよびかけます。
 この運動は、ブッシュ政権による危険な核戦略が、世界の人々のあいだに大きな憂慮を引き起こしているなかで、「核兵器使用を許すな、廃絶の約束を実行せよ」とのもっとも広範な声を結集し、「20世紀から21世紀へ、反核・平和の世界の流れ」を実らせようというものです。これには、国際的にも9・11テロ犠牲者遺族のリタ・ラサールさん、イギリス反核運動のリーダー、ブルース・ケントさん、全国でも埼玉の土屋知事、吉永小百合さんなど、さまざまな階層の方々が支持を寄せています。「核使用許すな・廃絶を」の世論と、覇権主義の戦争と日本を戦争に引き込む有事法制を許さないたたかいを両輪に、草の根の力を結集して非核平和の日本の実現へ、前進しようではありませんか。


国際連合安全保障理事国への手紙

(原文英語)

イラク問題の国連による平和的解決と一方的攻撃の中止をもとめる

 日本平和大会・国際シンポジウムのパネリストを務めた私たちは、国際の平和と安全の実現をめざす立場から、国際連合安全保障理事諸国が、イラクの大量破壊兵器査察をめぐる諸問題を平和的に解決するようつよく要請するものです。
 国連憲章は、「国際紛争を平和的手段によって…解決しなければなら」ず、「武力による威嚇又は武力の行使を…つつしまなければならない」(第2条)としています。そして、加盟国への武力攻撃にたいする自衛権を例外として、唯一安全保障理事会に「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な…行動をとる」(第42条)権限があたえられています。
 国連安全保障理事会が11月8日に採択した決議1441は、イラクが決議を履行しなかった場合、「直ちに理事会に報告するよう指示」し、安保理が次の措置を決定することとなっており、イラクへの自動的な武力行使の委任を排除しています。安保理各国は、この決議にもとづいて、問題を国連の枠内で解決することがもとめられています。この点で私たちは、アメリカ合衆国が、イラクにたいし先制的な武力行使を留保していることに、大きな懸念を表明せざるをえません。そのようなことがゆるされるならば、国連が想定した世界秩序はくずされ、一方的戦争を前提とした暗澹たる世界を招来することにもなりかねません。一方、イラクには、この決議を履行するために全面的に協力すべきです。
 アメリカ合衆国が、核兵器先制使用の可能性を公然と肯定していることは、ヒロシマ・ナガサキの悲劇に示されるように、国際人道法への明白な違反にほかなりません。
 イラクの大量破壊兵器査察問題にどう対処するのかは、21世紀の平和的展望にかかわる重要問題となっています。イラク問題を、国連の枠組みで平和的に解決し、国連憲章にもとづく世界の平和的秩序確立への展望をきりひらくことを訴えるものです。

 したがって私たちは、以下の点を貴国に要請します。
―決議1441を関係諸国が厳格に履行することによって、イラクの大量破壊兵器問題を平和的に、国連の枠組みのなかで解決すること。
―国連憲章に反する、イラクへのいかなる武力行使もおこなわず、その計画、準備を放棄すること。
―核兵器の使用とその威嚇をゆるさず、それらを禁止すること。核兵器全面廃絶を実現すること。

 貴国の誠意ある回答をお待ちします。

 2002年11月22日

(パネリスト各氏の署名)
ジョアンヌ・コマフォード (Ms. Joanne Comerford)フレンズ奉仕委員会(アメリカ)
イ・ユジン (Ms. Lee Yujin)緑色連合(韓国)
ガン・テイク・チー (Mr. Gan Teik Chee)公正な世界のための運動(マレーシア)
内藤 功  日本平和委員会代表理事(日本))
高橋和枝  新日本婦人の会副会長(日本)