2001年大会INDEX

2001年日本平和大会in沖縄・名護国際シンポジウム パネリスト発言

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須田 博


日本平和委員会 事務局長

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米軍基地の新設反対、基地被害根絶でのたたかい

日本の米軍基地と基地問題の概況

 日本の基地問題の現状を述べるうえで、まず申し上げたいことは、ここ名護市辺野古の沿岸に米軍の巨大な最新鋭基地を建設する計画が日米両政府によって進められていることです。この基地建設計画は、名護市民への「公約」をまったくホゴにし、市民の生活と環境を根底から破壊し、国際保護動物=ジュゴンの生存を危うくするなどの暴挙であるとともに、アジアの平和に重大な脅威をもたらすものであり、日本の平和運動は、総力あげて反対運動を進めています。
 これらに見られるように、二一世紀にはいったにもかかわらず、日本は「米軍基地国家体制」ともいうべき状況にあります。沖縄をはじめ日本には一三四カ所もの米軍基地が置かれ、四万余の米軍が駐留しています。これは他の資本主義国にみられない「異常な状況」です。しかも、これら米軍は、第三海兵遠征軍、第七艦隊、航空宇宙遠征軍などアメリカの干渉戦略のための「殴り込み部隊」であり、日本の防衛とは無関係な存在であるにもかかわらず、日米安保条約・地位協定によって「治外法権的な特権」を与えられ、傍若無人に演習・訓練を繰り返しています。このため、低空飛行訓練や夜間離着陸訓練による爆音被害や墜落事故の恐怖が絶えずあり、現に三沢基地では最近もF16戦闘機による訓練用ミサイル投棄事件が起きています。とくに、基地の集中する沖縄では、今年の前半に米兵による女性への暴行など犯罪・事故が集中し、県民によるつよい抗議の意思が表明されています。
 最近の新しい特徴としては、アフガニスタンへの報復戦争の下で米軍基地に新たな変化が生まれていることです。厚木基地では「致命的武力の行使認可区域」の看板を出した異常な基地警備がやられ、普天間基地では騒音軽減を求めた宜野湾市長にたいし、基地司令官が厳戒体制下の訓練なので「すべて取りやめることはできない」と開き直っています。岩国基地では化学物質の検査器の設置や炭そ菌対策のマスク支給もやられています。基地沖縄では米軍基地へのテロ不安で観光客、修学旅行が激減し、経済的打撃を受けていますが、その要因は米軍基地の集中にある、との声が広がっています。こうした事態は、基地と住民・自治体との間に新たな深刻な矛盾を生み出しています。


政府の欺瞞的な基地対策に抗して

 この間の日米政府の沖縄基地対策の特徴は、一九九五年の米兵による少女暴行事件に端を発した県民の怒りの高まりを前に、「負担軽減」「よき隣人」など、沖縄県民の要求に真剣に取り組むかのような「ポーズ」を示しながら、二一世紀も米軍基地の確保と再編強化を進めようとしてきたことです。その対策をまとめたSACO最終報告がだされたのが、一九九六年十二月二日でした。名護の米軍新基地は、この中で、米海兵隊の普天間基地を返還する代わりに、台湾海峡、朝鮮半島をにらんだ最新鋭の出撃基地をつくってやろうというものです。しかし、五年たったいま、この欺瞞的な策動が次第に沖縄県民に見抜かれ、まだ基地の建設場所さえ確定できないでいるのです。こうした政府の欺瞞的な策動を絶えず暴露し、批判していくことが、基地をめぐり住民の利益を守るためにきわめて大事なことをこの間のたたかいは教えています。
 既存の米軍基地を巡っても、政府が米軍の横暴な演習などを野放しにしていることに地方自治体ぐるみで反対する動きが広がっていることが特徴です。NLP(夜間離着陸訓練)が三沢市、大和市の市長による「友好関係の中断」表明や関連五市の集まりが開かれる中で中断に追い込まれるとか、墜落に抗議して三沢市長がF16機の飛行再開を拒否するとか、佐世保市長が無通告入港に抗議して原潜の入港を拒否したなど自治体首長が切実な要求を突きつけています。同時に、女性暴行事件を契機に沖縄で「海兵隊削減」「日米地位協定見直し」が県議会や一連の自治体で決議され、全国にも広がるとか、神奈川県で厚木基地周辺の自治体が「空母母港化解消」の決議を行うなど抜本的な解決を求める方向に運動が発展していることは重要です。こうした基地問題を解決するため、日本の平和運動は、新基地建設反対、基地被害の一掃のため地方自治体を含む広範な共同を絶えず追及し、政府に要求実現をせまる世論と運動を広げています。同時に、基地問題の根本的な解決をめざし、日米安保条約の廃棄による日米軍事同盟からの離脱を一貫して追求しています。


重大な課題、日米軍事同盟からの離脱

 日米軍事同盟からの離脱は、アメリカの軍事外交戦略との関係で、いま重大な課題となっています。
 九月三十日にブッシュ政権が発表した「四年ごとの国防計画見直し」(QDR)報告では、アジア地域を重視し、米軍のプレゼンスの強化をつよく打ち出しているのが特徴です。同報告では、アジアを「大規模な軍事的競争に陥る可能性のある地域」とし、「米国は…北東アジアにおけるその決定的に重要な基地を維持する。これらの基地は世界の他の地域で非常事態が起きた場合、戦力を投射するためのハブ(中枢)の役割をも果たす」としています。
 このアメリカのアジア軍事戦略の中軸を担わされるのが、日米軍事同盟です。日米軍事同盟によって日本はアメリカの危険な軍事外交戦略にいっそう深く組み込まれるのです。日米軍事同盟からの離脱が急がれるのはそのためです。くわえて、今回の同時多発テロと報復戦争をつうじて、日米軍事同盟の有害さは、いっそう明確になりました。第一に、日米安保は、アメリカの報復戦争がおきると、日本も自衛隊を出動させないと「同盟国としてあいすまない」という立場に日本政府を追い込み、憲法違反の軍備増強や海外派兵に突き進ませるおおもとになっています。第二に、日米安保の下で日本政府は自分で外交路線を考えようとせず、まったくアメリカに追随しており、日本の外交はゼロに等しい状況になっているからです。
 こうした点から、日本の平和運動は、日米軍事同盟から離脱し、非同盟中立へ日本の進路を転換させようと、日米安保条約廃棄を国民世論の多数とするため奮闘しているのです。

 日本の平和運動は、基地被害では、ビエケス、フィリピン、韓国など同じ問題を抱えている国々と、地位協定、軍隊訪問協定でも韓国、フィリピンなどと連帯のたたかいを発展させる条件があると考えています。いま、アジア太平洋で強まっている非核・平和の非同盟運動の流れとも共同して基地新設反対、基地被害根絶、地位協定見直しの運動を大いに広げようではありませんか。