2001年日本平和大会IN名護

大会基調報告
国際シンポジウムにおける国際社会への訴え
国際シンポジウム
討論のまとめと行動提起
海外参加者のプロフィール

基調報告(要旨)

実行委員会を代表して 日本平和委員会・事務局長 須田 博


はじめに

 日本平和大会は、今年で十六回目を迎えるが、アフガニスタンへの報復戦争という形で実際に世界的な戦争がおこなわれているなかで開かれるのは、初めてである。同時多発テロと米軍による報復戦争は、今日の世界の平和、日本の進路、二一世紀の平和運動の責務をめぐって大きな問題をなげかけている。同時に、それとの関係で平和大会が一貫してかかげてきた「日米軍事同盟打破、基地撤去」の課題も新たな重要な意味をもってきている。こうした状況に立ち向かい、二一世紀の平和な世界と日本をつくってゆくためにはどうすればよいか。これにこたえることが今年の日本平和大会の中心的な課題である。


報復戦争やめよ、テロ根絶、海外派兵反対

 (1)九月の同時多発テロとその後の米軍による報復戦争、それへの自衛隊の参戦というかつてない事態は、二一世紀の世界と日本の平和に大きな試練と課題を与え、国際社会はその対応を鋭く問われた。世界各地から「テロも戦争も反対」という大きなうねりがわきおこり、日本でも報復戦争やめよ、テロ根絶の運動が様々な人々によって展開された。これらを通じて同時多発テロと報復戦争の問題では、以下の三点が重要であることが明らかになった。1)テロは絶対に許されない人類社会への犯罪であり、その根絶は平和な二一世紀を実現していくうえでも不可欠の重要な課題であること、2)テロ根絶のためには国連憲章と国際法にもとづく裁きを求める国際社会の団結した努力が必要であること、3)これに反した米軍の軍事行動は、テロ根絶に重大な障害をつくりだしており、軍事攻撃の中止は、テロ根絶のためにも、人道上からも緊急の課題となっていることである。これにたいしてアメリカは、国連中心の対応に背をむけ、軍事同盟も動員して、軍事報復にすすめている。こうした事態は、あらためて国連憲章にもとづく世界の平和秩序をつくってゆく課題のいっそうの重要性を浮き彫りにしている。
 アフガニスタンでは、タリバン政権が事実上、崩壊する一方、ビン・ラディンの行方はわからないまま、米軍の空爆や掃討作戦がつづくなかで、新政権協議もはじまっている。事態は流動的だが、アメリカの軍事報復がテロ根絶にも、平和にとっても、アフガニスタンの再生にとっても、大きな矛盾と障害を生み出している。

 (2)日本政府は、報復戦争参戦法を強引に成立させ、日本の参戦を急いだが、こうしたやり方が、テロ根絶のうえで国際的にも認められている道理ある道筋に反するとともに、憲法の平和原則をふみにじることは明らかである。十一月二十五日、補給、輸送、修理・整備、医療、港湾業務の五分野での「協力支援活動」などのため、自衛艦船六隻、航空機八機、一五〇〇人の出動がおこなわれたが、初めて戦時に軍事支援行動に踏み切った参戦行為であるとともに、日本国憲法の平和条項をズタズタにじゅうりんする暴挙として、厳しく糾弾されなければならない。日本政府の対応は、テロ根絶のためのまじめな検討もなく、なにがなんでも米軍支援で自衛隊を派兵したいということだけだった。報復戦争参戦法をめぐる論戦では、政府の答弁の支離滅裂ぶりと開き直りが際だった。自衛隊の派兵は、国連中心の法による解決に背をむけ、憲法をじゅうりんする言語道断の暴挙であるとともに、海空軍ももたないタリバン軍に対応するために護衛艦を出し、しかもタリバン崩壊後に出動するなど軍事作戦上も専門家が首をかしげる愚行ともなっている。ここには、米軍の軍事行動を自動的に支持し、軍事的対応しか考えつかず、参戦協力していく日本政府の異常で深刻な対米追従の姿があるが、その根底には日米軍事同盟の存在がある。
 在日米軍から空母キティーホークをはじめ一万人が出動するなど、日本は報復戦争でも不可欠の出撃拠点になった。一方、沖縄などでの米軍の演習の激化や周辺住民に異常な恐怖を与えた米軍基地警備など、戦争と直結する基地の「危険」に直面するなど、米軍基地国家の危険をまざまざと見せつけた。
 米政府当局は、報復戦争参戦法と自衛隊の出動によって、日米関係は「世界的な同盟関係」となる「戦後史に新しい章」(アーミテージ国務副長官)を開いたと評価している。自衛隊は、これまで「日本有事」(日本への武力攻撃の場合)や「周辺事態」(アジア太平洋での紛争が日本の安全に影響を与える場合)にのみ米軍支援の軍事行動を行うという条件がついていたが、今回はそうした「制約」を取り払い、米軍支援の軍事行動を世界のどこでも展開するという新たな危険な段階を画すものになっている。
 くわえて、政府が、武力行使も認められている軍事組織であるPKF(国連平和維持軍)への自衛隊の参加に道を開こうとしていることも自衛隊海外派兵の枠組みを拡大するものとして重大である。

 (3)報復戦争やめよ、テロ根絶、海外派兵反対の運動で、自覚的な勢力が全国の草の根から、世論と運動を広げるために奮闘するとともに戦争法反対で共同した宗教者、市民団体、航空関係労組と「共同センター」に結集した諸団体との共同行動をいち早く展開したことは意義があった。これまでこの種の運動に参加したことがなかった青年や女性をはじめ広範な人々がインターネットで連絡を取り合い、積極的に声をあげ、「ピース・ウォーク」など平和の取組に参加してきたことは重要である。これらの人々がアメリカの覇権主義、報復戦争による被害、アフガン国民の人権などさまざまの問題について考え始めていることは、大きな意味で平和大会の運動との連係が今後ひろがる条件が生まれていることを示している。十一月十七、十八日に行われた世論調査(テレビ朝日)で、米・英のアフガン軍事攻撃について、「支持しない」が四七%で、「支持する」の四〇%を上回ったこと、自衛艦のインド洋展開についても「支持しない」が五三%で、「支持する」の三八%を大きく上回ったことは、重要である。このことは、侵略戦争肯定の歴史教科書を公立中学校の採択地区では採択させなかった平和の力が引き続き健在であること、この間の広範な人々による多様な運動のひろがりが世論を動かしてきていることを示しており、今後のたたかいに確信を与えるものとなっている。

 (4)テロと報復戦争をめぐる国際社会や国内外の世論と動向で大切なことは、米軍の軍事攻撃への批判の広がり、国連中心の解決を求める動きなどにも示されているように、二〇世紀の平和を求める人類の到達点が生きており、その重要性と有効性がいっそう浮き彫りになったことである。戦争の世紀ともいわれた二〇世紀は平和を求め、民族自決と戦争の違法化をすすめた世紀でもあった。報復戦争に反対し、国連中心の法と理性にもとづいた解決を求める動きの広がりは、二一世紀を国連憲章にもとづく平和秩序を形成してゆく新しい出発点ともなるものである。


新米軍基地建設、米軍の横暴・基地被害とのたたかい

 (1)名護・辺野古沖への新米軍基地建設をめぐる動きも重大な局面を迎えている。「海上ヘリポート案」について名護市民はすでに九七年に市民投票で拒否する態度を明確に表明している。今回、政府はこの「海上ヘリポート案」の二倍もある巨大な最新鋭基地建設計画を「三工法八案」のなかから選択するよう迫り、岸本市長もそのなかからの選択を市民に押しつけようとしている。「三工法八案」のいずれであっても、市民の意思を踏みにじり、生活、環境を根底から破壊するとともに、市民への「公約」である「一五年使用期限」、「使用協定」などをまったくホゴにして強行する点でも、国際的な勧告も無視してジュゴンなど環境に致命的打撃を与えるという点でも、二重三重の暴挙である。このたたかいは、「基地のない沖縄」を求める沖縄県民の生活と安全、環境を守るたたかいであるとともに、二一世紀も日本を米軍基地体制にかたく結びつけ、日本をアメリカの世界支配のための戦争協力の拠点とする道を許さないたたかいの焦点となっている。
 これにたいしこの間、ヘリ基地反対協を中心に地元名護で粘り強い反対運動が展開されてきた。昨年の平和大会で提起されたジュゴンと平和を守れ、米軍新基地建設反対の「平和キャラバン」も、沖縄・名護の代表を迎え、全国すべての都道府県で多彩な行動が展開され、署名運動も推進されるなど新基地建設反対の国民世論を広げるうえで重要な役割を果たした。年内にも基地建設の位置確定をしようとする動きがすすむ中で、条件付きで新基地を容認してきた人びとのなかからも、基地の「規模が大きすぎる」「自然環境を破壊する施設だ」との声があがるなど新たな矛盾が噴出している。名護・沖縄での新基地反対の運動に、全国的な支援と連帯を強化することが重要になっている。

 (2)全国各地で米軍の横暴に反対する新しい動きがひろがっていることも重要である。NLP(夜間離着陸訓練)が、三沢、大和市長による「友好関係の中断」表明やNLP関連五市長による「意見交換会」によって、一時中断に追い込まれるとか、墜落事故に抗議して三沢市長がF16機の飛行再開を拒否するとか、佐世保市長が無通告入港に抗議して原潜の入港を拒否したなど自治体首長が切実な要求を米軍につきつける事態が生まれている。戦争法の具体化である米軍艦船の入港にたいして北海道をはじめ各地で地方自治体を含む反対の声がひろがり、入港が中止された例も生まれている。海兵隊による実弾砲撃演習に反対する自治体決議もあがっている。住民と自治体の要求は、事件・事故だけでなく、教育、環境、地域振興など広範囲なものとなっており、しかも沖縄での女性暴行事件を契機にして「海兵隊削減」「地位協定見直し」が沖縄県議会や一連の自治体決議になり、全国にも広がるとか、厚木基地周辺の一連の自治体が「空母母港化解消」の決議を行うなど抜本的解決を求めているのが特徴である。また「平和キャラバン」での交流など平和運動との共同・連携もすすんでいる。これらの取組みをいつそう広げることが求められている。

 (3)報復戦争が続けられている下で、日本の基地は危険な変貌をとげている。「致命的武力の行使認可区域」(厚木基地)など各地から米軍基地での異常な警備の強化が報告され、自衛隊による警備も開始されている。また、米側は訓練の激化にともなう爆音被害や事故にたいして、「厳戒体制下の訓練」「すべてとりやめることできない」など開き直っている(沖縄、厚木、三沢)。テロ対策として、化学物質の検査器の設置や炭そ菌対策のマスク支給(岩国)、原潜寄港の非公開をはじめ、自衛隊艦船や弾薬移動などに関する基地の「情報統制」の強化(佐世保)もおこなわれている。これらは、基地周辺住民と基地との新たな深刻な矛盾をうみだしている。とくに沖縄では、観光客が激減し、「雇用・経済危機突破県民大会」でも「被害は基地集中に起因」とする決議があげられるなど、基地問題が新しい角度から取り上げられている。こうした問題でのたたかいも必要になっている。


自衛隊の実戦化・増強、有事立法の制定反対

 (1)報復戦争で、米軍支援のために世界的に展開する新しい危険な段階を迎えた自衛隊は、実態面でも、実戦部隊化をすすめており、米軍と自衛隊の「基地警備」任務も持つようになった。また、自衛隊は、IT革命への対応、空中給油機や大型ヘリ搭載護衛艦の導入、テロ・ゲリラ対策や生物・化学兵器対策などの訓練・装備の拡充などをすすめている。日米共同訓練でも、対ゲリラ作戦訓練がおこなわれている。一方、災害出動をテコにした自治体との連携を強め、国民への宣伝・広報活動をひろめ、小中学校の「職場体験」授業で自衛隊体験が四五〇校にも及ぶという事態もすすんでいる。しかし、国民が自衛隊にどんな役割を期待しているかについての世論調査をみると、「国内の災害救援活動」三七%がトップであり、「米軍のパートナー」は一%にすぎず、選択肢八項目のなかで最低である(「朝日」二〇〇一年五月二日付)。明らかに米軍の支援・補完部隊である自衛隊の実態とのギャップがあり、本質的な矛盾がある。ところが、政府は五年間で二五兆円強もの軍事費をつぎ込んで自衛隊の増強をはかろうとしている。軍事費の大幅削減を強く要求し、リストラ反対、雇用の確保、医療大改悪を許すななどの課題を掲げて奮闘している運動との連係を大いに発展させる。

 (2)政府は、有事立法を二〇〇二年の通常国会に上程する姿勢を示している。今回の有事立法制定策動の特徴は、?昨年十月発表されたいわゆる「アーミテージ・リポート」にも見られるように、直接、アメリカの要求にもとづいて浮上したものであること、?新ガイドライン・戦争法、報復戦争参戦法の下で、これらの具体化をすすめ、そこへ国民を強制的に総動員するためのものであること、?与党合意と首相指示にもとづく準備作業がすでにおこなわれていることなどである。政府は、万一のさいの備えなどと宣伝しているが、実際には報復戦争参戦法などに示されるように、アメリカの軍事行動支援のために、日本が自治体、民間も含めて総動員するためのものである。有事法制に反対するうえで、それが?「日本防衛」と無関係であり、アメリカの軍事干渉に協力するものであること、?憲法で保障された国民の権利をじゅうりんするものであることなどを国民に大いにひろげる。また、職場、地域、学園からの世論と運動をひろげるとともに、広範な国民的な共同をよびかける。


ブッシュ米政権の世界戦略と「国防計画見直し」
 
 ブッシュ新政権の世界戦略の特徴は、経済、環境、軍事などあらゆる面で国際ルールを無視した身勝手な外交姿勢(「単独行動主義」)を強め、それによって世界各国との矛盾をひろげていることである。アフガンへの軍事攻撃についても、アメリカは非軍事的措置など自分にとって国連を使った方が都合のいい分野では国連を利用するが、軍事行動についてはかたくなな「単独行動主義」をとっており、国連中心の平和秩序に背を向けていることをあらためて明らかにした。
 とくにブッシュ政権が、九月三十日に発表した「国防計画見直し」(QDR)で、アジアを重視し、基地網をいっそう強化しようとしていることは、アジアの平和の流れに逆行するとともに、日本を基地国家としてしばりつけるものであり、重大である。QDRでは、「世界の決定的に重要な地域で、より大きな柔軟性を米軍にもたらすような基地システム」をつくることを提起し、西太平洋、インド洋、アラビア湾での基地網と展開能力の増強を打ち出すとともに、日本などの「決定的に重要な基地」を維持し、戦力投射の中枢(ハブ)の役割を果たすように強調している。報復戦争での在日米軍の動きと自衛隊の米軍支援とピッタリと重なっているのも、偶然ではない。
 ブッシュ政権は、核兵器を巡って、NPT再検討会議での核兵器廃絶の約束を踏みにじって、ミサイル「防衛」構想をすすめ、未臨界核実験を強行し、CTBTの死文化をすすめている。アフガニスタンへの軍事攻撃にさいして、核兵器をはじめとする大量殺戮兵器の使用の可能性を排除せず、実際に、クラスター爆弾や気化爆弾などの非人道的兵器を国際世論の批判にもかかわらず、使用している。国連での核軍縮論議のなかでも、アナン事務総長が核兵器によるテロの危険とともに、そのためにも核兵器廃絶の緊急性を強調した。非同盟諸国提案の核兵器廃絶交渉開始を求める決議が圧倒的多数の賛成で可決され、これが世界の多数世論であることを重ねて示している。こうした事態は、核兵器廃絶の緊急重大性とともに、それを覇権主義的思惑で妨害している米政府の重大な責任を世界の人びとに知らせた。


重要な課題となった日米軍事同盟からの離脱
 
 この一年間の平和をめぐる動きは、日米軍事同盟からの離脱がいよいよ重要な課題になっていることを浮き彫りにしている。基地問題の元凶は安保条約であり、その廃棄こそ基地問題の根本的な解決策である。歴史教科書問題であらためて日本の侵略戦争への態度が問われているが、侵略への無反省を前提にした自民党政治が「育成」されてきた背景にも、安保条約がある。テロ問題でも日本がアメリカいいなりの外交姿勢をとり、自衛隊を参戦させることのみに熱中する軍事対応主義にすすむ根底には安保条約がある。日米軍事同盟のもとでは、国連憲章にもとづく世界の平和秩序やアジアの平和の流れとの矛盾がいよいよ深くなり、日本は世界から孤立する道をすすむことになり、そのことへの疑問や批判もひろがっている。安保廃棄の世論形成への多様な回路がひろがり、廃棄を求める多数派の形成にむけた客観的条件が成熟してきている。


21世紀―日本から世界に平和の巨大なうねりを
 
 21世紀の世界の平和を実現するため、干渉と侵略をくりかえすアメリカの覇権主義でなく、内政不干渉と紛争の平和的解決を柱とする国連憲章を中心にした平和秩序を確立しなければならない。国連憲章は、戦争の違法化をすすめたものだが、日本国憲法は、戦争の放棄、武力による威嚇・武力の行使の禁止、常備軍保持の禁止を明記しており、この分野で最も先駆的な位置をしめている。被爆国として核兵器廃絶の世論を世界にひろげてきた日本の平和運動の責務は、この点でも、いっそう大きい。非核、平和の日本の進路を切り開くためには、安保条約を廃棄して、中立、平和、独立の日本へと切り替えなければならない。今日、日米軍事同盟のもと、日本は負の大きな役割を担わされているが、その日本が新しい道に踏み出すならば、経済力や憲法を生かし、世界の平和と進歩、繁栄に巨大な貢献をするだろう。報復戦争反対のたたかいも、沖縄での新基地建設反対のたたかいも、その大きな展望を切り開くことと結びついた、たたかいでもある。切実な緊急要求でたたかい、共同の輪をひろげると同時に、その根本解決の展望を示し、そこにむけて多数派を結集していく努力が大切である。外交政策では対米追従しかないといわれる小泉首相は、憲法の平和原則にたいしむきだしの攻撃を行うとともに「構造改革」の名のもとに、国民にリストラ、医療大改悪など各分野で未曾有の生活破壊を押しつけている。こうしたもとで内閣支持率も前月比六・七ポイント減の六三・六%となるなど、変化がうまれている(「時事通信」一一月調査)。「自民党政治はダメ」といって自民党総裁になり、国民の間に幻想をひろげてきた小泉首相の政治は、安保問題でも、生活問題でも、矛盾、対立を鋭くし、そこに自民党政治のいまの危機の深さが示されており、生活防衛、平和などさまざまの分野での要求と運動を広く合流し、自民党政治を国民的に大きく包囲することが求められている。いまこそ、日本の平和運動の真価を発揮し、本平和大会を新たな跳躍台として、日本から世界に巨大な平和のうねりを広げよう。

○報復戦争の中止、国連を中心としたテロ根絶、自衛隊の海外派兵反対、アフガン難民救援に全力あげよう。

○沖縄・名護への新米軍基地建設反対の運動を飛躍的につよめよう。

○安保五〇周年にあたり、日米安保条約廃棄の学習・宣伝を繰り広げよう。


 これらの課題で世論と運動を大きくひろげるため、この平和大会の討議でこの間の経験を交流するとともに豊かな創意、アイデアを大いにだして出していただくことを期待する。

国際シンポジウムにおける国際社会への訴え

2001年日本平和大会・国際シンポジウムに参加した7ヶ国のパネリストは、国際社会にたいして、以下の訴えをおこないました。
(沖縄、名護市、2001年11月29日〜12月2日)


国際テロ根絶、軍事攻撃の中止、アフガニスタン支援をもとめる国際社会への訴え

−平和で公正な21世紀にむけた前進を−

 2001年9月11日のアメリカにおけるテロ攻撃は、国際テロの根絶が21世紀の世界の平和と安全にとって、不可欠の重要課題となっていることを示した。私たちは、平和と軍縮、公正、発展、民主主義と人権擁護をめざす運動の立場から、このテロ攻撃が国際社会と人間性にたいする卑劣な犯罪であり、いかなる理由によっても許されないことを確認し、諸国民と政府、多様な市民運動が一致して、国際法と国連憲章にもとづく法の裁きによるテロリズム根絶にむけて尽力することを訴える。
 米英による報復戦争は、強力な破壊能力をもった爆弾投下など大規模な空爆によって、アフガニスタンの市民社会生活を破壊し、難民の増大、飢餓や劣悪な健康状態による大量の死者がうまれる深刻な危険をもたらすとともに、テロに反対する国際世論に分岐をもたらし、テロ根絶をいっそう困難にするものである。この戦争は、国際法にも、国連憲章に合致するものではない。しかも、ブッシュ政権がアフガニスタン以外の国々にも、「テロ対策」を口実に、軍事攻撃の可能性を示唆していることは重大である。この戦争が当面どのような結果となるにしても、世界平和に重大な矛盾と逆流を生み出したものであることはあきらかである。私たちは、アフガニスタンへの軍事攻撃をただちに中止し、他国への拡大を行わないことを強く要求する。アメリカの同盟諸国は、アメリカ主導の軍事作戦への協力を再考し、やめるべきである。
 アフガニスタンへの武力攻撃にさいして、核兵器をはじめとする大量殺戮兵器の使用とそれへの報復の可能性が排除されないことは、平和と人類の生存への重大な脅威である。いかなる理由によっても、ヒロシマ・ナガサキをくりかえさせてはならない。大量破壊兵器の脅威を根本的に除去するために、私たちは、すみやかな核兵器廃絶と、生物・化学兵器全面禁止条約の厳守・履行をつよくもとめる。
 国際テロの背景にある諸問題にも無関心でいることはできない。貧困、飢餓、過重な対外債務などの解決をはじめ、世界的な規模の貧富の格差の是正がもとめられている。国連諸決議にもとづき、民族自決権にたったパレスチナ問題の公正な解決がはかられなければならない。こうした問題に真剣に対応しないならば、テロ根絶の国際的団結はよわめられ、テロリストたちは、はびこる余地を見いだしうる。しかし、国際テロリズムは、これらの問題の解決を待たずに、根絶されなければならない。
 二度にわたる世界大戦を経験してきた今日の世界は、無差別な殺戮も、武力による単独的な世界支配もやすやすと許すような世界ではない。平和、独立、平等、公正、人権を国際社会の規範として確立してきた20世紀の歴史の到達点にたつならば、我々は、かならず国際テロを根絶することができるであろう。そのとりくみは、国連憲章にもとづく、公正で平和な21世紀の世界秩序の確立に寄与するものとなることを確信する。
 私たちは、以下の点で、国際社会が共同して緊急に行動することを訴える。

* 英米は、一般市民を巻き込む軍事攻撃を直ちに中止すること。
* アフガニスタン市民・難民への人道援助を、NGOとも協力して強化、促進すること。
* 国連による、容疑者の特定、その確保の方法の確定と実施、今回のテロ事件についての司法的措置を確立し、裁判を実施すること。
* 包括的な国際条約の締結をはじめ、国連が国際的なテロ防止・根絶をすすめるための有効な機構と措置を確立すること。
* 民族自決権にたったアフガニスタンの再建・復興援助をすすめること。

 私たちは、世界の平和運動、市民運動、NGOが、安全保障理事国および国連加盟国にたいして、上記の行動をすすめるようはたらきかけるとともに、この訴えへの賛同を国際的にひろげることをよびかける。

(署名)
ディミティ・ホーキンス(女性)〔オーストラリア〕
   オーストラリア平和委員会
   ピース・ディフェンディング・ディスカッション調整者
佐藤光雄(日本)
   安保破棄中央実行委員会 事務局長
須田博(日本)
   日本平和委員会事務局長
イ・スクテ〔大韓民国〕
   弁護士
イ・ジェヤン(大韓民国
   大邱市 南区庁長
キム・ヨンハン〔大韓民国〕
   「不公正なSOFA改訂国民運動」共同執行委員長
コラソン・ファブロス(女性)〔フィリピン〕
   非核フィリピン連合 事務局長
アレクサンダー・ラクソン〔フィリピン〕
   基地浄化市民タスク・フォース
ミルナ・パガン(女性)〔ヴィエケス島―プエルトリコ〕
   ヴィエケス救済発展委員会 理事
ロナルド・マッコイ〔マレーシア〕
   マレーシア反核医師の会 会長(国際反核医師の会 共同議長)
マルシア・モリス(女性)〔アメリカ〕
   フレンズ奉仕委員会(コネチカット州)プログラム調整者

*国名のアルファベット順

討論のまとめと行動提起

実行委員会を代表して

西川征矢 安保破棄中央実行委員会・事務局長
     全国労働組合総連合(全労連)・副議長


 本平和大会は、同時多発テロ、そしてアメリカの報復戦争・自衛隊参戦という、かつてない緊迫した情勢のもとで開催されました。

 海外代表を含め、千七百名以上が、この名護に平和を求めて結集したことは、日本の、そして世界の人々の平和を希求する熱い思いを表したものであり、報復戦争を推進し、自衛隊参戦を企図するものたちに、そして、新基地建設を推進するものたちに痛打を与えるものであることを、しっかりと確認しようではありませんか。

 本平和大会の最大のテーマは、テロ根絶、報復戦争をめぐる問題でした。この問題について基調報告は三つの指摘を行ないました。
 国際会議での討論と、この討論を踏まえた七カ国のパネリストの「訴え」は、基調報告の指摘が世界の平和勢力共通の見地であることを示しています。これに確信を持ち、国際世論形成に向け全力をあげようではありませんか。
 テロを口実に日本をアメリカの戦争に全面的に参戦させる動きも重視しなければなりません。
 この平和大会には、かつて日本が侵略した韓国・フィリピン・マレーシアの友人が参加しています。私たちはこのアジアの友人たちと共に、自衛隊の参戦を許さない決意を誓い合いました。ここにこそ二十一世紀を象徴する歴史的到達点と前進面があるのではないでしょうか。


辺野古の海を守りぬこう
 
 平和大会のもう一つの大きなテーマは、新米軍基地建設・米軍の横暴・基地被害とのたたかいでした。とりわけ、名護における新基地建設問題は重大な局面を迎えています。
 しかし、辺野古には、いまだに美ら海は伸びやかに広がりしっかりと守られています。九六年のSACO路線の中核であるこの新基地建設は、いささかの具体化もなしえていません。全国の仲間のたたかいに改めて深い確信を持とうではありませんか。
 参加されたみなさんの発言は、基地をめぐる運動全体が確実に前進していることを示しています。しかも、まさに多様な草の根的な共同が大きくひろがっていることを示しています。
 運動面では、若い世代にどう運動をつないでいくかが真剣に議論されました。ITを活用した青年自身の取り組みが前進しはじめました。ここでの共通点は、何よりも青年自身が立ち上がること、そして、ふつうの青年が参加可能な運動形態の提案の重要性が指摘されました。


真に“生命が”生きる世紀に

 今後の取り組みの第一として、国連を中心としたテロ根絶への対応を求め、国連、安保理事国十五カ国への働きかけを強め、ひき続き「テロの根絶を願い報復戦争と自衛隊派兵に反対する署名」を推進しましょう。アフガン難民救援募金を大きく広げましょう。
 二つ目は、新米軍基地建設に反対する取り組みです。政府に対し、ただちに建設中止の申入れを行ない、「沖縄新米軍基地建設に反対する署名」を一日も早く百万名の達成をめざし奮闘しましょう。また、連帯カンパ、意見公告運動など、創造的な支援活動にとりくみましょう。
 来年は、安保発効五〇周年を迎えます。四・二八を一つの軸に宣伝・学習行動期間を設定します。全国の職場・地域・学園で、この行動期間の成功にむけ多いに奮闘しましょう。

 平和を願う私たちの運動は、国境をこえ、文字通りグローバルな運動を築き始めています。そして、最も人間らしいこの連帯こそ、私たちの運動の最大の武器なのではないでしょうか。二十一世紀を“生命”が真に大切にされる世紀にするため互いに奮闘しようではありませんか。

海外参加者のプロフィール


【海外来賓】



イ・ジェヤン
〔韓国〕
 米軍基地をかかえる大邱(テグ)市の南区庁長。基地問題にとりくむ自治体代表として参加する。日本平和大会として、韓国の自治体との交流をもつのははじめて、日本の基地の実体と自治体のとりくみ、住民の運動との交流を強く希望しての来日である。





【海外パネリスト(国名五十音順)】



デミティー・ホーキンス
(女性)〔オーストラリア〕
オーストラリア平和委員会
「ピース・ディフェンディング・ディスカッション」コーディネーター

 オーストラリアの広範な平和運動のネットワークの運営にたずさわっている。沖縄の海兵隊の一部を移設する噂もながれたオーストラリアでは、名護の新基地建設反対署名に、多くの平和団体がとりくんだ。核軍縮問題にもとりくんでおり、ミサイル防衛構想に反対する国際署名運動を推進した。今回は国連総会が開かれてるニューヨークから沖縄・名護にかけつける。



キム・ヨンハン〔韓国〕
「不公正なSOFA(米韓行政協定)改訂国民運動」共同執行委員長

 日本の地位協定にあたる米韓行政協定の不平等条項の改訂をもとめる国民的な運動の先頭にたってきた。韓国に90以上あるといわれる米軍基地・施設による被害や犯罪の根絶をめざす運動を創設するうえで重要な役割をはたしてきた。最近、韓国の基地闘争の歴史をまとめた本を出している。ソウル大学でドイツ文学博士として教鞭をとってきたが、現在は、平和運動に専念している。



イ・スクテ〔韓国〕
弁護士

 緑色連合とともに、基地公害問題などの訴訟にとりくむ弁護士で、今回は、日本の基地訴訟の経験なども交流したいと来日。



ロナルド・マッコイ〔マレーシア〕
「マレーシア反核医師の会」会長(「国際反核医師の会」共同議長)

 アジア・太平洋の安全保障、核軍縮問題にとりくみ、国連総会で採択された核兵器廃絶をもとめる決議(マレーシア政府が提出)の起草にもかかわるなど、政府にも影響力をもつ平和運動家。平和大会の直前まで、国連総会(ニューヨーク)に参加するなど、国際的にも活発な活動を展開。また、沖縄問題、日米安保問題についても造形が深く、日本の雑誌に論文なども寄稿している。



アレクサンダー・ラクソン〔フィリピン〕
「基地浄化市民タスク・フォース」

 スービック、クラークなどの米軍跡地利用・開発にともなって問題となっている、米軍の有害廃棄物の除去、汚染浄化にとりくむ市民団体の代表。フィリピンでは、基地跡地の環境汚染問題について、比当局も米軍の責任であることを確認するなどの前進がある。また、基地公害問題にとりくむ各国の運動との連帯も重視しており、この問題での国際会議も開催していきている。



コラソン・ファブロス(女性)〔フィリピン〕
「非核フィリピン連合」事務局長

 原水爆禁止世界大会や、1998年の日本平和大会にパネリストとして参加するなど、日本の反核平和運動と密接な協力関係にある。フィリピンは、米軍基地撤去後も、米軍の長期駐留を認める「軍隊訪問協定」が締結されるなど、米軍プレゼンス強化の動きもあり、これに反対する運動の先頭にたっている。また、日本、韓国などアジアの運動の連帯・共同を重視して、国際活動も活発に展開。



ミルナ・パガン(女性)〔ヴィエケス島―プエルトリコ〕
「ヴィエケス救済発展委員会」理事

 三分の二を米軍基地・施設によって占められているヴィエケス島(自治領プエルトリコ)では、米海軍の演習による死傷者、犯罪、環境破壊、住民の健康などが重大な問題となっており、この演習中止をもとめる住民ぐるみの運動が展開されている。来年はじめに、この是非を問う住民投票が予定されている。昨年の平和大会、平和キャラバン集会に参加するなど沖縄の運動とは深い連帯関係にある。



マルシア・モリス(女性)〔アメリカ〕
フレンズ奉仕委員会(コネチカット州)、プログラム・コーディネーター

 フレンズ奉仕委員会では、軍縮と社会的公正をめざす活動を担当。同時多発テロ以降は、コネチカット州(ニューヨークとマサチューセッツの中間に位置)で報復戦争反対・テロ反対の共同「我々の名で戦争をするな」("Not in Our Name" Coalition)を組織する中心を担ってきた。草の根の運動の先頭にたつとともに、国際関係論の研究者でもある。沖縄や日本本土の平和運動の経験についても学びたいと、来沖への期待をのべている。