2001年大会INDEX

2001年日本平和大会in沖縄・名護国際シンポジウム パネリスト発言

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佐藤 光雄


安保破棄中央実行委員会 事務局長

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報復戦争をやめさせ、テロ根絶と世界平和の実現を

 ―平和運動の新たな共同の追求

報復戦争の誤り―国連中心のテロ根絶を

 米国の同時多発テロ行為は、いかなる理由によっても正当化できない卑劣な犯罪行為です。それは、米国への攻撃にとどまらず、国際社会に対する攻撃です。
 同時に私は、アフガニスタンへの報復戦争の誤りも明白となりつつありることを強調したいと思います。
 米軍が爆撃をはじめてから50数日がたちました。タリバン政権が崩壊―北部同盟はじめ反タリバン勢力が国土の大半を制圧したと伝えられています。しかし、米軍は依然、空爆を続けており、一般市民の犠牲が増大しています。タリバンの軍事施設をねらってされる空爆も、クラスター爆弾や、燃料気化爆弾BCC82といわれる米国が持つ通常爆弾の最大級の大量殺傷兵器が数発使用され、市中心部から郊外にいたる破壊、モスク、病院、市場といった人が集まる場所にも着弾し、大きな被害をだしていたことが明らかになっています。
 軍事攻撃は、報復戦争そのものといわなければなりません。
 この間の経過は、報復戦争が、(1)テロ反対の国際世論に分岐をもたらし、テロ根絶に有害であったこと、(2)一般市民への犠牲や大量の難民を生むなど、アフガニスタンとこの地域の平和と安全をふみにじるものであったこと、そして、(3)民族自決権のうえにたったアフガニスタンの復興に重大な障害をもたらすものであったこと、をはっきりとしめしています。
 いまもっとも必要なことは、報復戦争をただちに中止し、人道援助を強化することです。私たちは、労働者のナショナルセンター「全労連」、民主・平和諸団体16団体で「自衛隊派兵反対共同センター」を結成し、難民支援カンパを全国によびかけています。
 テロ根絶には、国際的な一致協力が不可欠です。これ抜きには、テロ組織を追いつめ、テロ犯罪を根絶することはできません。テロ根絶のためには、軍事力による報復でなく、法と理性にもとづいた解決が必要です。国連が中心になって、国連憲章と国際法にもとづいて、テロ犯罪の容疑者、犯罪行為を組織し支援したものを逮捕し、裁判にかけ、法にてらして厳正に処罰することこそ、テロ根絶の道です。そもそもテロ事件直後に採択された国連安保理1368決議でも、法による裁きを明確にうたっていました。
 一部に、ブッシュ政権がテロ問題をきっかけに、「単独行動主義」から国際協調路線に変わったかのようにみるむきもあります。しかし、報復戦争の強行や国連による多国籍軍への不参加を表明するなど、その「単独行動主義」的な姿勢には変化がないことを強調したいと思います。
 核不拡散条約再検討会議での核兵器廃絶の約束を踏みにじったミサイル「防衛」構想の推進、未臨界核実験の強行、CTBTの死文化策動、地球温暖化防止の「京都議定書」の批准拒否など、従来問題にされてきた軍事外交路線ににも変わりありません。
 こうしたアメリカの覇権主義には、この間も本質的な変化はないし、世界の平和と民主主義への重大な脅威にほかなりません。


日本政府のはたすべき役割

 重大な問題をもたらしているアフガニスタンへの報復戦争に、日本政府が追随・荷担しつつあることは、きわめて重大です。
 日本政府は、自衛隊を報復戦争に参戦させるための新たな法律を強引に成立させ、11月25日、補給・輸送、修理・整備、医療・港湾業務の5分野での「協力支援活動」などのため、自衛艦船6隻を出動させました。航空機8機の派兵も予定しており、戦後はじめて戦時に軍事支援行動に踏みきりました。これは、アジアへの侵略戦争への反省のうえにうちたてられた、戦争放棄と戦力の保有を禁じた憲法第九条をまっこうからふみにじるものです。
 日本政府の対応は、テロ根絶のためのまじめな検討もなく、なにがなんでも米軍支援で自衛隊を派兵したいということだけでした。アーミテージ氏の「ショー・ザ・フラッグ」の声に応じて、軍事的対応しか考えずに、参戦協力していく日本政府の姿勢は、国際的にも異常です。こうした対米追随の根底にあるのが、日米軍事同盟です。
 しかし、こうした方向は、国民との矛盾を深めつつあります。ある世論調査では、米・英のアフガン軍事攻撃について、「支持しない」が47%で、「支持する」は40%、自衛隊のインド洋展開についても「支持しない」が53%で「支持する」の38%を大きく上回っています。また、憲法九条の擁護をもとめる声は、つねに国民の多数世論となっています。
 日本政府は、この第九条を持つ国として、報復戦争参加でなく、人道的貢献にこそ全力をつくすべきです。


世界の平和運動の新たな共同を

 野蛮なテロを根絶することは、21世紀に、人類がこの地球上で平和に生きていく根本条件の一つであり、世界平和に不可欠の平和運動の重要課題です。テロ犯罪に対し、軍事力で報復することは、さらにいっそうのテロ行為と武力報復の悪循環をもたらし、無数の新たな犠牲者を生み、事態を泥沼に導くものです。これまでも述べたように英米の報復戦争の誤りは明白です。
 いまこそ国連中心にテロ根絶を求めるための国際連帯の強化が切望されます。20世紀の二つの世界大戦の反省の上から、人類の英知を結集した到達点としての国連憲章、国際法に依拠してこそ真の解決がはかられ、前進の道が開かれると確信するものです。
 この点で私は、国連憲章にもとづく世界の平和秩序をめざす国際的な共同がもとめられているし、また今日、その発展の新たな可能性が生まれていることを強調したいと思います。
 また、今回のテロ事件と報復戦争のなかで、大量破壊兵器、核兵器の脅威があらためて注目されました。私は広島の原爆で身内13人が死亡し、1955年の第1回世界大会から46年間、すべての世界大会に参加してきましたが、この核戦争の脅威を根本的に除去するためにも、核兵器完全廃絶が緊急課題となっていることを強調したいと思います。
 今回テロ事件の背景として、パレスチナ問題や南北問題があることが指摘されています。私たちは、それらの問題が解決しなければ、テロは根絶できないという立場はとりませんが、こうした問題の解決にも真剣にとりくむことが重要になっていると思います。
 いまも戦闘が続いているパレスチナ問題の公正な解決、世界的規模で拡大した貧富の差の是正、貧困や飢餓の解決、持続可能な発展をすべての国に保障することなどが重要です。
 本シンポジウムが、テロ根絶という新しい平和運動の改題での共同にむけて、実りあるものになることを期待して発言を終わります。