2001年大会INDEX

2001年日本平和大会in沖縄・名護国際シンポジウム パネリスト発言

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コラソン・ファブロス


非核フィリピン連合事務局長

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戦争ではなく正義を!
(求む:世界平和のための世界連合)

 沖縄にやって来ると、いつも胸が痛むと同時に、心が温まり、勇気づけられます。というのは、ここで、米軍の駐留によって、沖縄県民が(私の国、フィリピンのように)堪えなければならないものを、たくさん目にするからです。土地と資源の略奪、爆撃、土地と海の環境破壊、女性と子供の虐待、人権の侵害、経済的搾取、内政干渉などです。このような困難や攻撃があるにもかかわらず、平和で核のない、基地のない沖縄と日本をいつの日か実現しようとする、みなさんのたゆまぬたたかいと献身は、私たちを励まし、胸を熱くしてくれます。このような集まりこそが、将来の世代に希望を与え、安全な明日への保証を与えてくれます。

 核のない、基地のないフィリピンを代表してご挨拶を申し上げるときには、いつもよいニュースで始めたいと思っているのですが、残念ながら、今日はそうすることができません。アメリカのフィリピン領土へのアクセスを認める秘密の協定の交渉が行なわれているのです。私たちの知っている限りでは、現在、フィリピン政府は、憲法と基地のないフィリピンへの国民の願いをふみにじり、これに調印しようとしています。現在、相互兵站支援協定(MLSA)と呼ばれているもの、アクセスのために必要な枠組みとなるこの協定の詳細は、ワシントンでの、フィリピン大統領とアメリカの国務省との会議で取り上げられました。この秘密協定は邪悪なもので、フィリピンをアメリカの戦争マシーンのくびきに結びつけるものです。MLSAは、アメリカ政府がフィリピン領土で軍事基地と軍隊を維持する権利を実質的に回復させることになります。MLSAは、アメリカがフィリピンから撤退した後すぐ、1992年11月から交渉をしてきた物品役務相互提供条約(ACSA)の名前が変わっただけのものです。ACSAは、上院の強い反対のため調印されませんでした。そして上院は、1991年9月16日、アメリカに対し、フィリピンに軍事基地と軍隊を駐留させ活動することを認めた1947年の比米基地協定の更新を拒否しました。

 フィリピンと日本の反基地運動にとって強力な同盟者であるブーン・シャーマー氏は、最近送ってきたメッセージの中で、こう述べています。「アメリカ政府は、軍事顧問を送り、アロヨ政権が南フィリピンのイスラム教徒の暴動に対する対応を強化し、アメリカの軍事経済支配への追従を保証するために、軍事援助を約束した。現在アメリカは、アフガンで戦争をおこなう一方で、世界貿易センターへのテロ攻撃を世界の覇権主義的支配を強化する新たなたくらみの目隠しにしようとしている。特にフィリピンに対してこの政策をやり遂げようとしている。アメリカはフィリピンを、第三世界の軍事介入の跳躍台として新たに利用できるようにすることをめざしている。以前のように、アメリカの軍事支配は、フィリピン経済のアメリカ企業による支配を強めることになるだろう。」

 国民の多数は現在も、経済面での外国の利益の押し付けに苦しんでいます。それは、アメリカの世界的な軍事力によってのみ可能なのです。ACSA、SOFA、VFAやその他の軍事防衛協定は、アメリカを中心とする、国境をなくし主権を無視するグローバル化の軍事的要素とみるべきです。グローバル化とは、多国籍企業を介して外国資本が自由に移動するだけではなく、国際資本を保護する軍事的要素も含んでいます。現在、フィリピン全土が米軍基地とされ、米軍顧問や兵士の遊び場にされています。彼らは、フィリピン人を虐待し、軍事演習では地方自治体による逮捕を恐れることなく、自然環境を破壊することができます。ここに参加されているみなさんが考えておられるように、私も、自分たちの土地や海は、富の源、生活の手段以上のものであると考えています。それは、私たちの夢や理想の宝庫なのです。アポリナリオ・マビニの不朽の言葉によると、それはこう表現されています。「神がこの世の私たちに与えた唯一のパラダイス。私たち種族が受け継いだ唯一の財産。私たちの祖先から唯一受け継いだもの、そして、子孫へ手渡す唯一の未来である。そのおかげで私たちには、命、愛、利益、幸福、名誉、神がある。その独立は私たちの自由であり、その進歩は私たちの理想であり、その尊厳は、私たちの栄誉であり不朽の名声である。」いかなる国であってもこの権利を奪うことは、傲慢の極みです。

 1992年に、ブーン・シャーマー氏が新しい比米物品役務相互提供協定について話をし、ものを書き、警戒をよびかけていたのを思い出します。それは、現在、グロリア・マカパガル−アロヨ大統領によって復活されようとしています。フィリピンの外国軍とその施設の撤去を求めてきた国民の運動が、アロヨ大統領を政権の座につけた主要な勢力であるということは皮肉なことです。

 95年に、ブーン・シャーマー氏は、ACSAは、「米軍基地の別名である」とし、さらに「明快に、明確に、フィリピンを、アメリカのアジア・太平洋での戦争と介入にひきつづき奉仕させるものである」と指摘しました。ACSAはフィリピンの米軍に対する「兵站支援、供給、サービス」の提供を認め、見返りに、米軍が同じものを提供することになっています。兵站支援、供給、サービスの中には、食料、宿舎、交通、石油、オイル、潤滑油、衣服、通信サービス、スペア部品、修理・メンテナンスサービス、空港・港湾の使用などが含まれています。このリストは、フィリピンの米軍基地に以前に提供されていた「兵站支援、供給、サービス」のほぼ完全な目録に類似しています。

 2001年9月11日の、ニューヨークとワシントンでの出来事をテレビで見ていた誰もが、家族、友人、仲間を失ったと思っています。どんな理由や大義をもってしても、世界のいかなる地においても、無辜の民間人の命を利用し犠牲にすることは正当化できません。私たちは、さまざまな国籍をもつ、数千人の罪のない民間人を死に至らしめ、負傷させた世界貿易センターへのテロ攻撃を明確に非難します。私たちはともに、卑劣な犯罪のすべての犠牲者に正義を、そして、あらゆる形態のテロリズムの根絶を要求します。

 あきらかに、この極悪非道の大量殺人をおこなった者には、法の裁きによる処罰が加えられなければなりません。しかし、効果ある犯罪調査をとおして犯人に処罰をくわえることを追求するうえで、アメリカ政府は、みずからが糾弾している、罪のない人を無差別に殺傷したテロリストたちと同じようにふるまうべきではありません。アメリカのような大国が怒りに燃え、盲目的に犯罪者のレベルで行動すれば、世界は危険な状態に陥ります。アメリカはまたも、1965年から1975年のあいだベトナムにたいして、そして1991年にバグダッド市民に対しておこなった無差別じゅうたん爆撃と同様の攻撃を加えるのでしょうか。それとも、広島と長崎への原爆投下のようなことまでするつもりでしょうか。これまでアメリカが中東や世界各地でとってきた単独行動主義と介入政策は、心身ともに狂信的な敵による強力な反動を生み出してきました。いま、ブッシュ大統領は、イスラム教徒にたいして五回目の十字軍遠征を開始したのです。世界は戦争の瀬戸際にあります。

 世界のすべての国と国民は、すべてのテロリズムを糾弾すべきです。それが、小さな組織であれネットワークであれ国家によるものであれ、テロは、罪のない一般市民を標的にしたり無差別に殺傷するのです。そういう点でみると、歴史的に、アメリカは長い間、他国に介入するなかでテロ国家のように振舞ってきました。そのアメリカがいま、例をあげるなら、ベトナム、イラク、リビア、パレスチナ西岸地区、アフガニスタンなどの罪のない人たちと一般市民に長い間あたえてきたのと同様の苦悩を経験しているのです。ソ連と対抗するために、ビンラディンと彼の手下の戦士を訓練し武器を与えたのは誰だったでしょう。アメリカという大国が復讐に燃えているから、血のにじむような努力に上につくりあげてきた冷戦後の平和をめちゃくちゃに破壊してもしかたないのでしょうか。アメリカにとって、こんにちの戦争は、非常に魅力的な選択肢です。兵器・軍需産業を活性化することで不景気から脱け出したいのです。

 いま、私たちアジアと太平洋の人々には、世界戦争を回避するため、平和にむけた地球規模の努力がこれまでにないほど求められています。世界平和にむけた地球的連合を生み出すことが私たちの責任です。そうすることで、異なる思想、信条、国籍をもつ者たちが、相手を消してしまおうとする代わりに、共存することができるのです。平和と正義にもとづく「代替的」な展望、概念、実践を組織し、主張する必要があります。アメリカに白紙委任状をあたえ、私たちの領土と軍隊を外国の軍事介入に再び使わせてはなりません。ブッシュ大統領は最近の声明で、確認されてもいない「悪」と「テロリズム」を相手に戦争をはじめると言いましたが、これは、あまりにも危険です。アメリカは、アメリカの敵とみなされているすべての者にたいする地球的戦争に、アメリカ国民と西側の同盟諸国すべてが条件反射的に乗り出すようしむけているのです。

 これはあまりに危険に満ちており、私たちすべてがこれを回避しなければなりません。ニューヨークとワシントンDCへの攻撃にたいする正義の追求という装いで、日々強化されている他国にたいするアメリカの攻撃と介入の出撃基地に私たちの領土を使わせることはできませんし、それを容認すべきでありません。私たちの軍隊はアメリカの傭兵ではありませんし、他国に対するアメリカの攻撃に餌を与えることもできないことです。

 9月11日以降、ある意味で、私たちの生活は変わりました。この数ヶ月、私たちすべてが、世界中でおこなわれている力強い運動、また、真の平和と正義を認識するようになったアメリカの良心に励まされてきました。この日本平和大会は、集会やデモンストレーションに人々を動員するための体系的な運動の強化にむけて、国境を越えた連帯と代替的ビジョン――つまり、世界平和の地球連合――を表現する場所となるでしょう。同時に、私たちの民主的権利と政治的行動の自由が各自の国で守られるようにもしなくてはなりません。テロリズムを取り締まるという装いのもと、今後、各国の権力エリートたちは、あらゆる民主的権利を奪おうとしてくるでしょう。

 しかし、長く困難な道のりではあっても、正義とよりよい世界の追求は不可能だなどと、一瞬足りとも考えてはなりません。私たちは必ず勝利します。