ディミティ・ホーキンズ
オーストラリア平和委員会
テロ根絶と平和運動の役割
日本平和大会にオーストラリア平和委員会からのご挨拶を送ります。この重要な会議に招待してくださって本当に感謝しています。
オーストラリア平和委員会を代表してここに来る前に、私は2ヶ月間ニューヨークにいました。そこで、婦人国際平和自由連盟と協力して、軍縮と国際安全保障を扱う国連第一委員会の活動、包括的実験禁止条約の交渉、総会の議論などのモニターを行なっていました。10月1日から5日、国連で「国際テロリズムを根絶する措置」について集中審議が行なわれ、この問題で170人の演説が行なわれましたが、これもモニターしていました。
これらの国際的な議論のなかで、テロリズムの実効的な定義づけをしようとのよびかけが、一貫してくり返し行なわれました。国際テロリズムの議論の中で国連が行なったブリーフィングで、「テロリズムの定義がないことが、人類に対する重大な脅威にとりくもうとする国際的な努力を深刻にむしばんでいた」との主張がされました。そのうえ、多くの政府は、テロは何もないところには起こらない、むしろ、社会的、政治的疎外や経済の後退などの理由で生じると、多くの政府が主張しました。自由の闘士や独立を求めてたたかっている人々をめぐり、テロリズムという言葉の定義づけやその原因を明らかにするという両方の点で、大きな論議がありました。
国際的な平和運動は同じ問題をかかえています。テロ撲滅でいかに役割を果たすかというテーマに入る前に、私たちがこの問題の根本原因だと考えているもの、またいかにテロリズムを定義づけるかという問題を検討する必要があります。
イギリスのジェレミー・グリーンストック国連大使が「テロリズムのように見え、テロリズムの匂いがし、テロリズムのように人を殺すのが、テロリズムである」と言いましたが、極度に単純化した定義に甘んじるのでは十分ではありません。
それよりも、この現象にかかわる問題の全体を見なければなりません。テロ根絶という課題を達成するためには、貧困を無くし、紛争を防止・解決し、人権と法の国際的支配を促進するために、努力しなければなりません。また、国家の支出を軍事から社会的優先課題にふりむけ、戦争経済を変えてゆかねばなりません。
1945年以来のあらゆる紛争に、核戦争の可能性が潜んでいました。最近、アメリカとロシアが核兵器の削減を発表したにもかかわらず、まだ世界には36000以上の核兵器が存在し、多くは一触即発の警戒態勢にあります。プーチン、ブッシュ大統領が今月はじめに交渉した大幅削減は、あと10年間は完全に実施されることはないでしょう。そんなに長く待つことはできません。そのうえ、核物質は劣化ウラン弾という形で、湾岸戦争やユーゴスラビアで使用されてきましたし、現在の紛争でアフガニスタンでも使用されていると思います。
オーストラリアの最近の放送で、リチャード・バトラーが強く示唆したことは、小型核兵器は、簡単に必要な国に運び込み、組み立て、爆発させることができる、そしてそれによって、アメリカのミサイル防衛計画は効果がなくなり、全く防衛に役立たないということでした。それはまた、テロ集団がその兵器を使うというおそろしい可能性も指摘しています。平和運動はもちろん、この可能性を数十年にわたり指摘してきました。
軍縮という目的は、私たちの活動にとってもっとも重要なものです。大量破壊兵器、すなわち、化学・生物兵器、核兵器などは廃絶されねばなりません。私たちの運動におけるこの活動の緊急性は、現在国際的に不安がひろがっている状況から見て、ひきつづき高まっています。
国連には、国家や非政府組織による、テロにとりくみ根絶するための活動を支援することができるたくさんの国際条約があります。テロに関して12の国際条約があり、現在、特に、核テロに関する条約の交渉が行われています。また、現在交渉されているテロリズムに関する包括的条約は、これらの条約を強化することをめざしています。
国連にはまた、強力な基本原則があり、50年以上広範に支持されてきました。国連憲章と世界人権宣言は、すべての人々の政治的、社会的、経済的権利を規定し、これらの文書はいくぶん、テロにとりくむ私たち自身の対応を模索するうえで、依拠することができるものです。
オーストラリア平和委員会は、世界平和、民族の独立、人権の擁護、民主主義、環境、コミュニティ全般がうまくいくのは、世界人権宣言で明確に規定された原則が守られた場合のみであると考えています。特に、「すべての人が、個人の生存、自由、安全保障の権利を有している」という第3条です。
世界のすべての人々に平和の恩恵を保証するためには、裕福な国の貪欲さに苦しまねばならない第三世界や途上国への富を回復する努力を始めなければなりません。もし私たちが、ちょっと立ち止まって、貧しい国から富んだ国への数十年にわたる大量の富の流出が、世界貿易機関(WTO)によって促進されている構造調整計画の結果であると考えれば、不満の原因を理解することができるでしょう。政治的、経済的、社会的影響は、壊滅的です。すなわち、栄養不足、低い識字率、幼児の死亡、貧困の増大です。年間、数百万の子供たちが、債務による緊縮措置のために亡くなっています。世界銀行とIMFの職員は、一部の第三世界の国々では、政府の大臣よりも大きな力を行使することができます。彼らの政策が、銀行家が利子を集める手助けをする以上のことを行なうということを示す証拠はほとんどありません。主な勝利者は多国籍企業です。低い商品価格と低い第三世界の賃金から利益を得ているのです。貧しい国では憤りが大きくなり、最も強力な国に対する彼らの脆弱性が増大しています。この状況のもとでは、テロは増殖する可能性があります。そして、このことは世界の政府によってますます認識されています。
このパネル討論のテーマではありませんが、オーストラリア平和委員会は、みなさんの国に米軍基地がひき続き存在していることに深い懸念を表明します。地球のこの地域に国際緊張を維持するというアメリカ政府の威嚇的外交政策によって、日本の国民が、特に沖縄の若い女性が苦しめられていること、精神的、環境的被害を受けていることに怒りを覚えています。オーストラリアにも、米軍基地があります。中央オーストラリアのパインギャップには諜報基地があります。この基地は、湾岸戦争とユーゴスラビアの紛争に直接関与しました。そして、アフガニスタンの現在の紛争にも使用されているでしょう。パインギャップは、アメリカが国家利益をさらに追求するために、この地域に監視の目を光らせつづけるのです。
オーストラリアでは、同国の移民政策にかかわって、コミュニティの一部から不満が出ており、このことが亡命者の不適切な処遇という影響を及ぼしています。これらの人々の多くは、中東の祖国での貧困や恐怖から逃れてきた人たちです。わが国の政治家の民族差別主義政策は、私たちの国をこの地域で、そして世界で孤立させることになるでしょう。これがこの地域の緊張をさらに高めており、人々が難民や亡命者になる原因に何の解決ももたらしていません。さらに、これらの政策は、すでに無視されてきたコミュニティーをさらなる疎外に追い込み、テロリズムが拠り所とする憤りや欲求不満を助長するものです。
オーストラリア平和委員会は、反戦・反核の抑止力を築きあげ、テロをなくすための運動で私たちが果たす役割を見出すうえで、多くの材料があると考えています。私たちは、人々が経験から学び、運動と国境を越えて連帯を築く可能性を持っていることを確信にしなければなりません。平和の保証とテロの防止を侵害する多様な問題があります。紛争の平和的解決を見つけようとする、(軍事的でなく)文民で非戦闘員の言葉の使用を促進しなければなりません。お互いの文化や経験から学ぶ用意をしなければなりません。紛争を起こしている既存の社会関係を変えるために、私たちがよく知っている状況の中で活動することです。さらに必要なことは:
− 情報を交換するために、国内・国際のより強力なネットワークを発展させる。
− 外国軍と軍事基地の存在に抵抗する連帯のアピールに応える。
− 平和運動と、経済的正義を求める運動、女性運動、反グローバリゼーション運動とを結びつける。
− 国連や私たちの政府が、国際安全保障について発言する討論の場でのモニター活動を活発にする。
− 徹底的にテロの根本原因にとりくもうとしているとき、包括的に参照することができるテロの実効的な定義を見つけ出すために力を合わせる。
オーストラリア平和委員会は、平和のための国際連帯デーを支持し、安保理事会の民主主義的代表性を確保するための国連改革を支持します。
最後に、この会議に招待してくださったことに、いかに感謝しているかを再度申し上げたいと思います。世界中の平和運動間の関係を強化する上で、重要なのが、今日のような会議です。国際的な平和文化を築くために、このネットワークの一員でありつづけたいと思います。このように激しい混乱と国際紛争の時、平和活動家としての私たちの役割がこれほどくっきりと浮かび上がっていることはありません。私たちの運動の歴史にふさわしい円熟さと情熱でもって、目前の課題に立ち向かい、非軍事的手段によるテロ根絶のための世界の強い流れを知らせ導くうえで、いかに役割を果たすかという問題にとりくまなければなりません。力をあわせれば、実現することができると確信します。
ありがとうございました。
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