2000年大会INDEX

2000年日本平和大会in沖縄国際シンポジウム パネリスト発言



イズマエル・グアダルーペ


ビエケス救済発展委員会
(プエルトリコ)

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I.ビエケス:世界平和に反する軍事要塞

A. 歴史的背景

1.ビエケスはカリブ海に浮かぶ、プエルトリコを形成している島々のひとつです。そのビエケス島では全人類に対する軍事演習が行われています。プエルトリコの島々は、アメリカ、パナマ運河、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ海上交通の中心に位置しています。16世紀以降、これらの島々を支配するものが大西洋の北半球の往来を支配するための軍事的鍵を握ると考えられてきました。ビエケス島を占領している軍事施設は、セイバ(プエルトリコ東岸の町)にあるルーズベルト・ローズ海軍基地の一部です。基地の建設は、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領がみずからが指揮し、原子力潜水艦を停泊させるための埠頭と地下の秘密施設を備えています。

2.このような軍事施設を建設するために、1939年から1944年ごろまでにアメリカ海兵隊はビエケス島の全面積の約33000エーカー中26000エーカーもの土地を強制的に収用しました。全地区の住民が隣の島サンタ・クルスに移住させられ、そのほか数千人がビエケス島の中心部に追いやられました。ビエケス島民の辛抱強さが、島をそっくり明渡し軍事目的のためだけに使用されるという事態を防いだのです。セイバでも3つの地区から住民が追い出され、ある海岸沿いの町では海岸すべてが基地に占領され民間が使える温泉や砂浜はひとつもありません。

3.ビエケス島は横に長い長方形をしていますが、彼らが島を分断したやり方は、まず島の東部に海対陸、空対陸、そして陸対陸の射撃ができる大きな演習場をつくりました。ここではあらゆる種類の武器の演習を行っています。海からの侵略の演習や爆弾の演習を行うところです。そして島の西部には南米大陸と大西洋をスパイするためのレーダー施設のそばに大きな弾薬貯蔵地があります。約9500人の島民は、西の弾薬貯蔵地と東の砲撃演習で荒廃した地域にはさまれた、残りの33パーセントの土地にひしめきあって住んでいるのです。


B.ビエケス島の軍事的重要性

4.1898年の米西戦争の際に、アメリカはプエルトリコを軍事占領し、スペインの敗北以後アメリカは今日までこの占領を続けています。

5.アメリカはその後直ちにビエケス島と隣接するクレブラ島で軍事探査と小規模の演習を始めました。第二次世界大戦に備えてルーズベルト・ローズ基地の建設を開始。自国の海岸から遠く離れたところに軍事境界線を置くためです。このようにしてプエルトリコ人はすべて、大西洋におけるアメリカの防衛の最前線にたつ戦力にさせられたのです。

6.第二次大戦後、アメリカはビエケス島を爆撃演習場として使い、朝鮮半島やベトナムでの戦闘、キューバのビッグズ湾への侵攻、1955年のドミニカ共和国、さらにはグラナダやパナマへの侵攻の際にはここから出撃しています。

7.きわめて重要な事実として、まさに今年2000年、アメリカはビエケス島でさまざまな核兵器の演習をしたことが確認されています。機密扱いをとかれた秘密文書が、アメリカの核爆弾の少なくとも一発が1966年に戦闘機からビエケス島の海中に落とされたことを証明しています。また、彼らがことあるごとに繰り返し否定してきたことですが、アメリカ海軍は「あやまって」ビエケス島で劣化ウラン弾の演習をしたこと、ナパーム弾も使用してきたことを、ついに認めました。

8.島にはあまりにも荒廃がすさまじく、ナパール弾やオレンジ剤が使用されたことが確実であることを示す地域がありますが、これらの地域は数千人の住民が住むところから2マイルも離れていません。


C. 世界平和にたいする脅威

9.ビエケス島での軍事演習・配備は、カリブ海全域の平和とアメリカ全体における地理軍事上の力のバランスをおびやかすものです。ビエケス島からアメリカは、自分の政治・経済上の必要から逸脱するいかなる国にたいしてもおどしをかける体勢を整えているのです。武器の使用はアンティル諸島全体を汚染します。原子力潜水艦の通行は、カリブ海全域の生存にとってダモクレスの剣であり、アメリカ大陸での核兵器の輸送を禁止しているトラテロルコ条約に違反しています。

10.毎年アメリカはNATOや米州機構の加盟国とともに共同演習を行っています。この地域での共同演習に加えて、アメリカは近年、ビエケス島を他の国に演習用に「貸して」います。1998年にはこうした演習によりフランスやイギリスなどから7000万ドル以上を受け取っています。

11.要するに、ビエケス島の使用は西側の大国やそれに次ぐ国々が、常に地球全体に脅威を与えているということなのです。


II.ビエケス島民:アメリカの軍産装置の人質

A. 汚染

12.ビエケス島民はオレンジ剤、ナパーム弾、劣化ウラン弾および通常兵器を浴びてきました。また、1999年にはロバート・F・ケネディ氏の息子が、未知の保管場所に置かれている数百の戦車とともに二つの舟艇が海岸に沈められていることを認めています。

13.ですから大西洋とカリブ海の風を受ける熱帯の島ビエケス島は、高度に汚染されているのです。工場も、石油輸送艦も、汚染をもたらすようなものは産業上あるいは商業上なにもありません。民間の汚染源やストレスはないし、栄養豊富な海産物や農産物を食べているのに、ビエケス島のガンの発生率はプエルトリコ全体の平均を26パーセントも上回っています。30歳以下の島民では、プエルトリコの青年の平均を50パーセント上回っています。医学的研究により、島民の髪の毛から水銀とウラン、子どもたちの分泌物からウランが検出されています。小学校の教師をしていた私は体を水銀に汚染されています。漁師や家族が化学物質で汚染されているのです。子どもたち相手の仕事をしている人、海ではたらく人たちが化学物質で汚染されているとは!


B.ビエケス島の生活の破壊

14.ルーズベルト・ローズ基地のビエケス島にたいする演習と包囲は、島民の経済を損なっています。ビエケス島からプエルトリコ本島までは15分ほどで行けるはずなのですが、アメリカ海軍が歴史的な交通ルートの使用を禁止しているために、実際には1時間以上もかかります。ビエケス島では、アメリカ海軍の許可なしには高いビルを建てることも空港の拡張をすることもできません。

15.漁業従事者が大変多いにもかかわらず、ビエケス島の漁民は島の沿岸で漁をすることができず、アメリカ海軍が決めた距離の遠く離れたところまで行かなければなりません。演習中は漁を中断せねばならず、再開したときには、海は破壊され汚染されている、あるいはそのいずれかの状態になっています。

16.アメリカ海軍はビエケス島にはお金を使わず、90あまりの全体として低賃金の非熟練職の雇用を提供するだけです。この60年間にアメリカ海軍は、島への投資に配慮するどころか、売春、暴力、未解決の殺人、民間人との争いをもたらしました。

17.最近選出されたビエケス島市長は子どもの頃に軍人が民間人を殺害するところを目撃した人です。この犯罪は、アメリカ海軍の権力のおかげで未解決のままです。私たちの新しい市長が選挙中主にビエケス島からのアメリカ海軍の撤退計画を訴え、60パーセントの得票を得たことは、強調されるべき重要な点です。アメリカ海軍にたいする同じような計画を掲げたもうひとつの政党をあわせると、アメリカ海軍に反対する二人の候補者の得票は、全体の70パーセントにのぼりました。アメリカ海軍を養護するただひとりの候補者は、30パーセントの得票にとどまりました。

18.プエルトリコの失業率は政府発表で11パーセントですが、ビエケス島では26パーセントになっています。実際の数字はプエルトリコ全体で25パーセント、ビエケス島では約60パーセントと推定されています。漁業と観光中心の経済では、住民の70パーセントに公式な貧困ライン以下の水準をおしつける軍事占領の下では、発展することはできません。アメリカが島を演習に貸すことで年間7000万米ドルも稼いでいるというのに、島民はそのうち1セントたりとも受け取っていないのです。

19.前に述べたように、私はもと教師で、最近退職したばかりです。私は演習が行われるたびに、ビエケス島ではいかに通常の生活のすべてが中断されるかを証明することができます。学校の授業に悪影響を及ぼし、子どもたちに被害を与え、人々は起こり得ることへの恐怖としか説明できないような感覚におそわれます。数十件にのぼる事故が起こっています。家の庭に爆弾が落ち、スクールバスが弾の破片をあび、民間の砂浜が爆撃されています。教育者として私が一番やりきれないのは、若者が学校教育を終えると、住んでいる場所には雇用の機会がないために島の外に職を求めなければならないという事実です。彼らは軍事演習を遠く離れたところではなく、私たちの家から数百メートルのところで行っているのだということを思い起こしてください。


C. プエルトリコの主人はアメリカ

20.アメリカが代表なしの課税というスローガンとともにやってきたことは横暴以外のなにものでもありませんが、今日彼らはみずからを世界一の人権擁護者と自称しています。ビエケス島でアメリカは、土地に67パーセントもの課税を行いそれを管理するための代表権はなんら認めていません。自国やプエルトリコ国民のあらゆる組織がアメリカ海軍の撤退を要求しているにもかかわらず、アメリカはそれにまったく耳を貸さず、世界の世論をあざむこうとしています。

21.アメリカがこうした態度をとることができるのは、1898年の侵略以来アメリカ政府がプエルトリコを植民地として維持してきたからです。国民が選んだ知事はいますが、プエルトリコの政治機構はすべてアメリカ連邦政府の支配のもとにおかれています。何よりも、プエルトリコの知事はアメリカの市民権を持っていなければなりません。アメリカ連邦裁判所はいつでも自分の都合で裁判や訴訟に介入することができます。アメリカ議会は、プエルトリコ国民の関与なしにプエルトリコにとって悪い影響を及ぼす法改正を一瞬のうちに行うことができます。

22.こうした政治上の支配は、経済においても同じです。その証拠として、1999年のプエルトリコの生産は国民一人あたり15000米ドルですが、国民一人あたりの収入は1万米ドルに満たなかったという事実をあげましょう。プエルトリコの男性、女性、子どもはみな、毎年何らかの形で5000米ドル以上をアメリカ帝国に納めているのです。合計で、アメリカは1999年にプエルトリコから約220億米ドルも引き出しました。プエルトリコの労働人口は約100万人ですから、1999年にプエルトリコの労働者一人あたり21000米ドルの収益を生み出した計算になります。これはプエルトリコ政府の公式の統計にもとづく数字です。プエルトリコで生み出される労働と富の36パーセントがアメリカに渡っています。これほどの莫大な収益をアメリカに渡している国、他国とこれほどに不均衡な関係をもつ国は、世界のどこにもないでしょう。(ビエケス島、2000年11月「国際人権法廷」での経済学者の証言より)

22b.上記のことを裏付けるデータ
1999年プエルトリコの総生産:599.45億米ドル
うちプエルトリコに所有権:382.29億米ドル
アメリカ帝国に支払った利子または税金:217.17億ド米ル
599.45億米ドル中の217.17億米ドル=全生産の36パーセント


D. プエルトリコ国民の訴えを無視して支配者として居座るアメリカ

23.1999年4月19日、一騎の戦闘機(これはドイツの戦闘機だったとの疑いがあるが公式調査はこれを否定)が発射した爆弾がねらいを外れビエケス島の基地で働いていた民間労働者を殺害。この死がビエケス全島民とプエルトリコの国民9割の怒りに火をつけました。

24.プエルトリコ知事みずからプエルトリコの全政党および教会、われわれビエケス島の女性市長と地域代表からなる委員会を任命しました。

25.この委員会は、ビエケス島の状況とアメリカ海軍が私たちの生活に及ぼしている影響について徹底調査を行いました。以下はその主な結論です。
1) ビエケス島でのあらゆる軍事活動を即時かつ永久に中止・放棄すること。
2) アメリカ海軍はビエケス島の全領土の汚染除去をすること。その費用は低く見積もっても100億米ドルになる。
3) アメリカ海軍はビエケス島の占領地をすべてビエケス島民に返還すること。
4) アメリカ海軍はビエケス島民に数億万の賠償を支払うこと。

26.この報告はすべての人が支持しています。中央政府、自治体、政党、教会、労働組合、環境団体、市民団体、文化団体などプエルトリコ社会のすべての層が支持しているのです。これらの結論は圧倒的多数の合意だったことを強調しなければなりません。

27.詳しくは述べませんが、このプエルトリコ国民の立場はクリントン米大統領に知らせたということをお知らせします。クリントン氏はどのように対応したか?1999年12月3日、クリントン氏は次のように回答しました。「ビエケス島民は、今後3年間の演習の継続か演習の永続化か、どちらをのぞむか投票によって決定しなければならない。投票はアメリカ海軍が準備し、ビエケス島民の選択にしたがいアメリカ海軍はその選択を実行できるかどうかについて検討を開始する。」アメリカ海軍がただちに駐留している部隊をビエケス島の有権者として登録するという、不正行為を始めたことも付け加えておかねばなりません。このやり方はアメリカがビエケス島とプエルトリコを破壊する帝国であることを、もっともあからさまに示すものです。



III.プエルトリコ国民はたたかい続ける

28.アメリカによるこのような侮辱に対し、今日までに約800人のプエルトリコ国民が市民による不服従の行為により逮捕されています。プエルトリコは人口400万の国です。私たちの歴史上この50年間にこれほどの数の逮捕者を出した政治行動は、他にありません。800人の逮捕者のうち、アメリカ海軍の支配地域に入った「罪」で6ヶ月の有罪判決を受けるなど約400人がいまだに裁判で係争中です。

29.2000年2月に行われたビエケス島の即時平和実現を求める行進に、約15万人が参加しました。

30.この4月にはニューヨーク市でビエケス島の平和を求める「プエルトリコ大行進」が行われました。これには約100万人が参加しました。

31.10月には人口わずか9500人のビエケス島で、約3000人の島民がアメリカ海軍の存在に反対し、これにたいするたたかいとしての市民の不服従を支持する行進をしました。

32.同じく10月に、真昼に約300人のビエケス島民が米軍施設を囲む柵をこわし民政部を監禁。これはもう軍事プレゼンスに我慢ならないという意思表示でした。

33.今月11月にはビエケス島を支援する活動家が、アメリカ・ニューヨークにある自由の女神像のてっぺんにビエケス島の旗をつるしました。この象徴的行為は、私たちのたたかいをまさに帝国の中でも行っていくという意思と力を示すものです。

34.今月11月、プエルトリコで選挙が行われました。すでに述べたようにビエケス島民の圧倒的多数はアメリカ海軍に反対の票を投じました。プエルトリコ全体では、アメリカ海軍の即時撤退をかかげる諸政党が合計で55パーセント獲得しました。残りの45パーセントは最高3年という期間を主張した政党に投票しています。当選した知事は、ビエケス島からのアメリカ海軍の即時撤退をめざすことを明確にしています。



IV.みなさんにのぞむこと

35.ビエケス島とプエルトリコのことを広く知らせてください。

36.私たちは国際連帯を必要としています。数千人ものプエルトリコ国民が市民の不服従行動に参加し、ビエケス島の軍事基地からニューヨークの自由の女神まで占拠しています。せかい中の米軍施設やアメリカの外交施設で同様の行為を行うことで、世界にこのたたかいの重要性を知らせることができるでしょう。

37.祈ってください。

38.資金面での支援をしてください。

39.NATOや米州機構の加盟国にビエケス島で使用料を払っての演習を行わないよう要請して下さい。

40.ビエケス島で世界平和への脅威が続けられるとしても、それは死、投獄、弾圧にさらされながら全人類に刃を向けている軍事装置そのものに対抗してたたかっているプエルトリコ国民は荷担していないことを理解してください。

ご清聴と連帯に感謝します。

もう爆弾は一発もいらない。もう一秒も待てない。ビエケス島にいますぐ平和を。