沖縄からの発信
米軍基地被害の根絶を求める国際連帯を
2000年12月1日
沖縄・那覇
1、2000年日本平和大会の国際シンポジウム「沖縄からの発信 米軍基地被害の根絶を求める国際連帯を」が、2000年11月30日から、12月1日まで沖縄県・那覇市で開催された。ジョセフ・ガーソン(フレンズ奉仕委員会、アメリカ)、フランチェスコ・イアヌゼッリ(「ピース・リンク」、イタリア)、イム・サムジン(韓国緑色連合)、イスマエル・グァダルーペ(ビエケス救済発展委員会、プエルトリコ)、マリア・I・レイナト=プレマーホ(中南米移民エンパワーメント、プエルトリコ)、須田博(日本平和委員会)が、パネリストとして参加した(敬称略)。また、アメリカ・フレンズ奉仕委員会(ハワイ)、ルイーザ・モルガンティーニ(欧州議会議員、イタリア)、アラブNGO調整センター(エジプト)、オーストラリア反基地連合、ギリシャ国際緊張緩和平和委員会、ドイツ平和評議会/日独平和フォーラム、非核フィリピン連合から文書報告が提出された。
2、パネリストは、11月29日、シンポジウムに先立って、米海兵隊の新基地建設が計画されている名護市を訪れ、これに反対してたたかう住民と交流し、心からの連帯を表明した。交流では、米軍新基地建設に反対する、国際的な連帯と共同を強化・発展させることの必要性が強調された。また名護市宮城常吉助役と会見し、住民投票にしめされた意思にもとづき、市民の利益と安全をまもる立場にたって、新基地建設受け入れを撤回するよう訴えた。
3、在外米軍基地に固有な被害には、戦争の危険と主権侵害、環境と健康の破壊、個人と商業財産の破壊、騒音公害などが含まれる。放射性物質の放出を含む軍事的事故は、人命を奪い食物連鎖を破壊してきた。住民の土地は、ときとして、国際法を侵害して、基地のために接収されてきた。地域社会、とりわけ女性は、レイプや性的虐待を含む耐え難い程高率の犯罪によって傷つけられている。各国に存在する米軍基地は、その成り立ち、規模、形態、機能は様々だが、共通して、アメリカの世界戦略にそった、覇権主義的な軍事干渉・介入の足場とされているだけでなく、地域住民にとって、人権侵害と生活破壊、環境汚染を日常化する諸悪の根源となっている。パネリストは、以下の点を強調点した。
―日本:海兵隊、空母軌道部隊、航空遠征軍など、世界に例をみない「殴り込み部隊」の配備をはじめ、130余りの米軍基地、4万人の米兵が全国に駐留しており、夜間離発着訓練、国内法を無視した市街地上空をふくむ低空飛行訓練、実弾砲撃演習など、「植民地」のような米軍の「治外法権的」な横暴がまかりとおっている。その75%が集中する沖縄では、航空機事故、凶悪犯罪が頻発し、騒音、環境被害など、事態はいっそう深刻である。地域住民の意思を無視した、名護への米海兵隊の新基地建設計画は、ジュゴンなどの稀少生物が生息する貴重な自然環境を破壊する懸念が国際的にも指摘されている。
―韓国:95の米軍基地と3万7千人の米軍が駐留しており、その面積は8万エーカーに達する。これらの基地によって、市民は環境破壊と人的被害の脅威にさらされている。政府機関をはじめ韓国人は、米軍基地に立ち入り、環境の実態を知る権利がない。現在米軍には、移転にともなう環境回復の義務がない。米軍はこれまで、ハン河への毒物投機などの環境破壊事件をひきおこしてきた。米空軍クーニー射爆場(梅香里)では、半世紀にわたって、連日戦争のような演習が行われており、これまでに11人が誤爆で死亡している。騒音による健康破壊も深刻である。
―ヴィエケス:このプエトリコ東海岸沖にあるこの自治島には、東西を弾薬庫と軍事演習場に挟まれた地域に9千3百人が住んでいる。この軍事施設は、全島の3万3千エーカーのうちの2万6千エーカーを占めている。軍事演習は、重大な環境破壊、高いガン発生率、騒音、極度の貧困、住民の苦悩、動植物群の破壊を引き起こしている。とくに軍事試験や演習には、化学・放射性物質器も使用されているので事態は重大である。プエルトリコは、不服従行動、抗議行動、ロビー活動などを通じて、海軍演習場の撤去を明確に表明しているが、米連邦政府が自らの意思を押しつける政策はかわっていない。市民の不服従行動の際の逮捕者にたいする連邦裁判所の審理がまたれている。
―イタリア:先のユーゴスラビアにたいする戦争でしめされたように、在伊米軍基地とイタリア軍基地は、アメリカの攻撃的干渉政策を代行するNATOの作戦のために利用される。核兵器の存在、原子力潜水艦による警戒行動、そして軍事演習は、事故、環境汚染、そして市民に多数の死者をもたらしている。これらの基地は、種の多様性と予防原則に反するという点で、1992年のリオ・デ・ジャネイロ世界サミットのとりきめを侵害するものですらある。このとりきめは、核蓄蔵と原子力推進部隊を含む軍事作戦についても適用されるものである。
―アメリカ:基地被害の危険は、在外米軍基地にとどまらず、アメリカ本土の全域にわたる地域におよんでいるが、その多くはアメリカ人には知られていない。アメリカ市民が、巨大な軍事費を支出し、何百という軍事基地を国内と世界中に有する、アメリカの軍事化された社会がどのようなものかを認識すること、また、在外軍隊と軍事基地が、戦争の危険、人権侵害などの否定的影響をホスト国に及ぼしている事実を知ることの重要性が指摘された。そして、戦争の防止、軍事的植民化からの解放をめざし、世界中の米軍基地被害とたたかう人々と連帯するアメリカ市民の特別の責務が指摘された。
4、21世紀を前にして、世界平和の視点からも、諸国民の独立、民主主義、人権、生活、環境、地域社会の擁護という視点からも、米軍基地が世界中でまきおこしている被害を、放置することはできない。それらは、「すべての人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する」ことを表明した世界人権宣言をはじめ、20世紀にかちとられた平和と進歩のたたかいの成果とあいいれないものである。すでに世界各地では、在外米軍基地の横暴に抗議し、人間の尊厳をまもるたたかいがおきている。心ある人々は、この基地被害の現実を直視し、その被害者の声に耳を傾けるべきである。基地被害の根絶は、思想、信条、立場の違い、また、軍事同盟についての意見の違いをこえて、緊急にとりくまれるべきものである。平和運動が、様々な分野の市民運動、政治的に多様な勢力を結集して、この課題にとりくことがもとめられている。
5、基地が存在するかぎり、その否定的影響はなくならない。基地被害を完全に根絶するためは、最終的に在外米軍基地の撤去が必要である。シンポジウムでは、将来的には、すべての米軍基地撤去の実現をめざしてたたかう決意が表明された。また、国内法や住民の生活と安全を無視した、米軍の横暴を野放しにする駐留米軍の地位についての諸協定(日米地位協定、韓米行政協定など)の問題点が指摘され、その改定の必要性が強調された。
6、欧州とアジアに10万人米兵と多数の軍事基地を展開するアメリカの覇権主義的な戦略が、在外米軍基地強化の背景となっていることが指摘された。日米ガイドラインとNATO新戦略概念によって、アメリカの軍事同盟体制は、いっそう危険なものとなった。それは、同盟国を動員して、国連を無視した先制的な武力干渉を行おうとするものである。南北朝鮮首脳会談などの平和の流れのなかで、こうしたアメリカの戦略の矛盾がいっそうあらわになり、在外米軍基地維持の根拠が失われつつある。
7、戦争か平和か、21世紀の世界のあり方がとわれているもとで、米軍基地問題の解決が、新たな国際的課題となっており、そのための各国の運動の連帯と共同の新しい可能性がうまれている。米軍基地の重圧に苦しむ沖縄から、我々は、米軍基地被害の根絶、米軍基撤去をめざす国際連帯の発展ををよびかける。
ジョセフ・ガーソン(フレンズ奉仕委員会、アメリカ)
フランチェスコ・イアヌゼッリ(「ピース・リンク」、イタリア)
イム・サムジン(韓国緑色連合)
イスマエル・グァダルーペ(ビエケス救済発展委員会、プエルトリコ)
マリア・I・レイナト=プレマーホ(中南米民族エンパワーメント、プエルトリコ)
須田博(日本平和委員会)
国名五十音順
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(別紙)
今後の活動についての提案
(順不同)
シンポジウムでは、今後の活動のための以下の提案がおこなわれた。これらは、引き続き国際的に協議され、具体化されていくべきものである。
―米軍基地の影響、被害根絶と基地撤去をもとめる各国の運動についての、草の根の活動家ための資料の充実(環境破壊についてのデータ、市民不服従行動についての情報も)。
―恒常的な情報交流と世界の反基地運動の交流・連帯を可能にするネットワークの確立・発展。
―アメリカの経済的・軍事事的グローバル化を関連づける、平和運動と経済的公正をもとめる運動との共同。
―地域住民の建設反対の意思とともに、ジュゴン保護の世界環境保護会議の勧告をふまえた、名護市における米海兵隊新基地建設計画の撤回をもとめる署名などの国際共同行動。
―米軍基地の影響について知る草の根、地域、全国レベルでのフォーラムの組織(可能なら各国からの被害者・活動家も招いて)。
―在外米軍に「治外法権的」特権をゆるしている諸協定の抜本的みなおしをもとめる運動間の情報交流の促進。
―米軍基地被害に苦しむ諸国人民の平和のための国際連帯日。これらの国々の代表によるワシントンでのデモ行進。
―アメリカ軍の「治外法権的」特権を許す政府間協定の改定をもとめる運動間の情報交換の促進。
―各国の運動と状況についての情報の交流と普及のための代表団交換。
―外国軍隊などによる主権侵害についての法的措置をもとめる行動や監視行動。
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