2010年大会INDEX
2010年日本平和大会in佐世保 国際シンポジウム 特別報告

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モハンマド・イブラヒム・アルコザイ



アフガニスタン戦争とその結果


 平和大会にご招待いただき、アフガニスタンの平和プロセスについてお話しする機会を頂いたことに対し、日本の平和団体のみなさんに感謝申し上げます。
 ご存じのようにすべての国にとって平和が不可欠な要素ですが、残念ながらアフガニスタンは30年以上にわたり戦争・戦闘に苦しんできました。
 2001年時点で、アフガニスタンに国家機構は残されていませんでした。政府も、軍隊も警察も存在せず、必要なものはすべて一から作らねばなりませんでした。
 アフガニスタンの位置はインド亜大陸、イラン、中央アジアにまたがっており、歴史的にもたびたび侵略されてきました。米国がイランを包囲、弱体化させ、ロシアを排除し、中央アジアにおける中国の封じ込め、あるいはパキスタンの複雑な政治情勢に影響を与えようとアフガニスタン駐留に固執する限り、アフガニスタンに平和が訪れることはないでしょう。アフガニスタンが再びこの地域の紛争地となる前に、地域的イニシアチブが国際的な解決策とともに求められています。


内部的対話と和解

 最初の一歩は、タリバンや彼らが主導する反政府勢力がアフガニスタンの政治構造の不可欠な部分となっており、和平プロセスから排除できないという事実を直視することです。NATO軍撤退を条件として、アフガン民族の伝統にしたがってタリバンを和解プロセスに参加させる道筋をつけ、新しい民族統一暫定政権の樹立と新アフガン憲法を制定する国会の確保をめざすべきです。
 面目をつぶさない解決策として、NATOは駐留部隊の数を警察や軍隊の訓練に必要なだけに限り、平和維持活動はイスラム諸国機構加盟国による国連に認可された部隊に移されるべきです。


地域における対話のイニシアチブ

 対話に地域のすべての国が加わることは、国内の和解と並んで重要です。1992年から96年、96年から2001年までの内戦は、この地域の関係国の利害が対立した結果起こりました。たとえばパキスタンはサウジアラビアと米国の暗黙の支援のもとタリバン体制を支援した一方、イラン、インド、ロシアなどの国々は反タリバン民族イスラム戦線や北部同盟を支援しました。
 NATO主導の作戦に45の国が参加しており、28カ国がNATO加盟国で17が非加盟国です。それ自身は、作戦が行き詰るなど困難はあっても、連携が強化されている強力な政治連合です。
 部隊を派遣していなくても、アフガニスタン戦争の結果に強い関心がある国があります。パキスタン、インド、中国などです。その他の利害関係者としてロシアもあります。アフガニスタンは島国ではないのですから、わが国に平和と安全をもたらすためにどのように協力できるかについて、これらの国々と対話しなければ意味がないと思います。

 アフガニスタンの貧困は都市部でも地方でも拡大しています。政府の推計では人口の42%が貧困ライン以下の生活をしています。他にも20%の国民が貧困ラインよりわずかに上の生活であり、いつ貧困に転落するかわからない状況です。

 2001年から現在までの戦争で、反政府勢力と外国軍の作戦によって何千人もの市民が殺され、戦争による避難、飢餓、疾病、汚染、医療の不足、犯罪や不法行為によってさらに何万人もの市民が命を落としています。
 2010年7月25日、ウィキリークスによって約9万もの機密文書が公開されました。それらは、2004年1月から09年12月までの米軍の事件や諜報に関する報告です。その一部には有志連合諸国による市民の犠牲数に関して、「洗浄」され「もみ消された」情報が含まれています。報告書はクンドゥズ空爆やナンガルケール事件での市民の犠牲に関する言及も含まれていました。
 2009年11月のユニセフの報告によれば、米国主導の侵略によってタリバンが放逐されて8年を経て、アフガニスタンは子供の出生には最も危険な国となりました。アフガニスタンの乳幼児死亡率は1000人のうち257人が死亡する世界最悪のもので、70%の国民が清潔な水へのアクセスがありません。
 アフガニスタンには多くの人権侵害があります。ヒューマンライツ・ウォッチによれば、タリバン勢力の復活、過去最高の麻薬生産、軍閥の再武装など米国主導の侵略の副産物が、無実の多くの市民の福祉と人権に対する脅威となっています。
 アフガニスタンに平和をもたらすための最後の課題は、市民の犠牲をなくす、少なくとも減らすことです。そして軍事作戦に関して政府と国際治安支援部隊との間に強固な連携と協力も必要です。そしてアフガンの文化や伝統を守ることも必要です。

 私が日本国民と政府に伝えたいことは、アフガニスタンにはすでに30カ国以上の軍隊が駐留していますが、今だ、この国に平和と安定は訪れず、多くの人が殺され、飢えています。今最上の方法は、テーブルにつき、話し合いをし、平和を実現する道を見つけることです。その点で日本政府に求めたいのは、軍事的な支援ではなく民生支援をしてほしいということです。私たちには軍事基地ではなく、病院が必要です。人を殺す銃ではなく、食料が必要なのです。これは私の個人的意見ではなく、アフガニスタン国民の意見です。

 自国の平和は世界平和につながります。
 世界がひとつになり、全ての国に平和がもたらされますように。ご清聴ありがとうございました。