2009年日本平和大会in神奈川 国際シンポジウム・特別報告
呉東 正彦
神奈川
原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会共同代表
原子力空母G・ワシントンの横須賀母港の危険性と反対運動
1、米海軍横須賀基地は第7艦隊の根拠地として、多くの米海軍艦船が母港としてきました。そして昨年9月25日に、多くの市民の反対と、原子炉事故への不安の中、原子力空母ジョージ・ワシントンが、米海軍横須賀基地に配備され、その母港となりました。
2、そして今年1月から4ケ月間、米海軍横須賀基地内で、原子力空母ジョージ・ワシントンの原子炉のメンテナンス作業が行われました。米海軍は、朝日新聞の質問に対し、上記作業が放射能物質を扱うことを認め、3月19日の米下院の公聴会で、米太平洋軍キーティング司令官は米海軍が横須賀基地にcontrolled industrial facilityをすでに建設した、と述べ、3月末に米海軍は、メンテナンス作業から発生した放射性廃棄物を輸送船に積替え米国へ搬出しました。
これらの事実によって、原子力空母ジョージ・ワシントンの原子炉のメンテナンス作業は、放射能を帯びた一次冷却水とフィルターの交換、原子炉の部品の交換等の作業を含み、それ故に作業員の被曝、放射性廃棄物の発生と保管問題、そして周囲の環境への放射能漏れのおそれを生じさせる、大変危険な作業であり、市民の生命身体健康への具体的危険性を増大させるものであることが明らかとなりました。
3、3000万人が住む首都圏の入り口を、原子力空母が母港とすることによって、もし原子炉が事故を起こせば、死の灰が東京や横浜にも降下するおそれがあり、条件次第では、100万人以上が死亡すると専門家は予測しているのです。
そして原子炉事故の危険を更に増加させているのが、米海軍原子炉のノーチェック体制です。日本政府は現在国内の原発については、法に基づき、完全な情報公開と、立入り、運転停止等を含めた完全な安全性のチェック、監督体制を実施していますが、米国の原子力艦の原子炉については、全く情報の提供を受けられず、立入り、運転停止等を含めた安全性のチェックが全くできません。これは私達市民の安全を米国への人身御供にしようとするものに他なりません。
4、これら原子力艦のメンテナンス体制が整うことによって、原子力艦の寄港回数も増加して、その拠点化も進んでいます。
今年8月24日原子力空母ニミッツが、横須賀に寄港しました。原子力空母ジョージ・ワシントンが横須賀を母港としているにも関わらず、もう1隻の原子力空母ニミッツを横須賀に寄港させることは、今までになかったことです。8月28日に原子力空母ニミッツが横須賀基地を出港した翌日に、元戦略原潜であったSSGNオハイオが横須賀に寄港しました。9月2日にオハイオが出港した翌日に原子力空母ジョージ・ワシントンが横須賀基地に帰港しました。
さらに現在、空母の停泊している12号バースの隣の13号バースに大型の原潜が停泊できるようにするため、このバースの海面の浚渫工事が行われようとしているのです。
5、私達は、10年以上にわたって、この原子力空母の母港をストップさせるために活動を続けてきました。2回にわたる原子力空母の母港化について住民投票を求める運動等様々な取り組みの中で、原子力空母配備に不安を抱き、自分たちの将来は自分たちが決めたいと市民が確実に増えてきました。そして、昨年の原子力空母の横須賀配備は、私達の運動の終わりではなく、ますます増大する原子炉事故の危険から私達の安全を守るための新たな運動の始まりとなったのです。
今年6月の横須賀市長選挙では、私も市長候補として原子力空母母港反対を訴えました。私は当選することが出来ませんでしたが、母港を容認してきた現職の市長は落選して新しい若い市長が誕生しました。
8月の衆議院選挙では、原子力空母母港を容認した保守政権にかわって、新しい連立政権が誕生しました。私達は、新しい政権に対しても、これまでの日本政府の原子力空母への態度からのチェンジを働きかけていきます。
6、軍事機密である原子力空母の母港を外国である日本におき、修理作業を行うということは、米国にとって矛盾に満ちた選択に他なりません。そして日本政府や横須賀市が、無条件に協力するのではなく、当たり前の情報公開や、安全性のチェック、より危険な行為への歯止めを求め、財政的にもきちんとチェックしていくことは、この矛盾をさらに表面化させ、原子力空母母港撤回に繋がる条件を整えていくはずです。
7、私達は、これからも今までに以上に、市民への宣伝活動、原子力空母母港ストップの裁判、そして住民投票を求める運動など、様々な取り組みを通じて、原子力空母母港撤回を求めて活動を進めていきます。12月13日の午後1時からは、横須賀市内で、原子力空母母港撤回を求める市民のパレードも行われます。
同時に、国際社会に対しても、アメリカ政府や議会、世論に対しても、3000万人が住む日本の首都圏に原子力空母の母港があることの危険性を訴え、1日も早い母港の撤回を求める働きかけを行っていきます。
本日ご出席の皆さんにも、是非私達の運動への力強いご支援をお願いいたします。
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