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2009年日本平和大会in神奈川 国際シンポジウム・パネリスト発言
ストップ戦争連合(フィリピン)/外国軍事基地撤去国際ネットワーク 米軍のプレゼンスと介入、今も続く平和で基地のないフィリピンを目指すたたかい
米国とフィリピン政府が新たな協定を立案するのにさほど時間はかかりませんでした。それは現在、「訪問米軍の地位に関する協定」と婉曲 的に名づけられています。つまり私たちの仕事はまだ終わっておらず、これは、フィリピンでの平和と正義を求める今日の運動の中でたとえ最重要ではないにしても、引き続き重要な課題となっています。 2001年以降、米軍は絶え間なくフィリピンを訪れ、フィリピン軍とのバリカタン共同軍事演習を毎年行っています。この種の演習は、バタネス(北部)からタウィタウィ(南部)まで国内各地の施設で年間を通して実施され、その数は増大しています。2002年以降は、米軍特殊作戦部隊がミンダナオ各地のキャンプに継続的かつ無期限に駐留しています。国内各地 の港に寄港し停泊する米軍艦船は増え続けています。フィリピンが いまや、新しくより洗練された形で米軍に基地を提供していることは明白です。(フィリピン地図参照) これらの演習は、継続し、拡大し、深化し つつあるフィリピンでの米軍のプレゼンスと介入の一部です。1991年まで米軍がフィリピンに維持していた巨大な基地ほど目立ち ませんが、現在の基地利用がもたらす影響は当時に劣らず直接的で、平和と人々の安全に対する脅威も重大です 。にもかかわらず、フィリピンでの米軍の活動のほとんどは国民から隠されており、米比両政府は故意に 米軍のプレゼンスを覆い隠し、 入手可能な情報とは明らかに異なるように見せかけて います。ミンダナオへの初の軍隊配備から8年のあいだ 、配備の動機と実際の活動、直接的な戦闘行為への参加、恒久的軍事施設の建設など の疑惑 に対する未回答の疑問が増大 しています。 このような動きを懸念し、社会運動、市民社会団体・ネットワーク、学者、地方自治体役員などが共同して市民ピースウォッチを設立しました。彼らの多くはストップ戦争連合・フィリピンに名を連ねています。憂慮する市民の独立したイニシアチブが団結して、国内の米軍のプレゼンスと介入を継続的に報告する活動をおこなっています。市民ピースウォッチは、米軍のプレゼンスと介入の問題に関する国民的議論に貢献するため、現地 調査、一貫した監視行動、調査、報告、ロビーイング、情報活動など 重要で時宜 を得た活動を開始 しています。 市民ピースウォッチの重要な活動の一つは、フィリピン南部のサンボアンガ市と スールー州での現地 調査でした。サンボアンガ市は、2002年からフィリピンに配備 され ている米軍特殊部隊の本部が設置されている都市として知られています。この部隊から何人かが小さなグループに分かれて 、表向きにはアブサヤフ(米政府がテロ組織と認定している)を標的とした軍事攻撃が進行中の スールーへ派遣され ています。 市民ピースウォッチがサンボアンガ市と スールーで昨年おこなった事実調査は、以下の懸念をより強める証拠を発見し確認しました。 フィリピン憲法の明白 な違反と、人命と人権に対する実際の危険を踏まえ、市民ピースウォッチは、フィリピン国内、特に南部での米軍の作戦と介入に関する下院と上院による調査を 要求し実施するよう 、国会議員に 求めています。私たちはまた、米軍のプレゼンスと介入に関する公正で独立した再検討と調査が実施されるまで、国内への米軍配備の中止、具体的にはフィリピン統合特殊作戦タスクフォース(JSOTF-P)の駐留と軍事演習の実施の中止を求める緊急要求を発表しました。 これによって、フィリピンにおける米軍の活動に関する上院による一連の調査・問い合わせ活動と、訪問軍地位協定見直しの勧告が実現しました。先日フィリピン上院は、対米協定を見直し再交渉すること、米政府が見直し作業を拒否した場合は協定を廃棄することを大統領に求める決議を行いました 。先ごろヒラリー・クリントン米国務長官のフィリピン訪問後 、フィリピン大統領は(予想通り)米国の対テロ戦争に対するフィリピンの支援と協力の継続を宣言しました。 訪問軍地位協定に関する上院立法監視委員会など、さまざまな市民グループによるミンダナオでのその後の調査活動と現地調査は、非常に重要な最新情報を提示しています。中でも注目すべき は 、米軍即時撤退を求めるミンダナオ連合による調査結果で、以下のことを断定しています 。 a) 米兵の 戦闘作戦への関与 フィリピン国軍(AFP)は、米軍が収集した情報にもとづいて行動しており、つまり米兵は諜報支援活動や情報提供を通じて戦闘作戦に直接的に関与しています。米工作員は明らかに、AFPの作戦行動に技術的情報を提供しています。彼らは、衛星受信機、ラップトップコンピューター、スキャナー、無人航空機(UAV)、スパイ機(P-3 Orion)を駆使して、反政府派と 疑われる市民に対する攻撃に必要な情報を提供しました。米軍への供給物資を運ぶダインコープ 社 (軍事請負業者)のヘリコプターが、モロイスラム解放戦線のキャンプ地や対アブサヤフ攻撃地で目撃されています。 米兵はまた、負傷したフィリピン兵の輸送という形で戦闘支援をおこなっています。このような役割は、軍事用語では「戦闘支援」または「戦闘後方 支援」と定義されています。米兵はこうした活動を紛争 地域で展開しており、直接的な戦闘に従事するAFP兵士と一体となって活動しています。当局はよく、米兵はインフラ整備活動、医療任務、その他人道支援のためにその地域にいるのだ と説明します。そのような活動は「民間軍事作戦」の分野に入ります。 b) フィリピン領土内にあり、 米軍が単独で使用しているインフラに関する証拠
フィリピン憲法は、条約で承認 されていない限り、フィリピン領土における 外国軍兵士、基地、施設のプレゼンスを禁じています。調査結果が示すように、米軍は外国軍隊のインフラに対する憲法上の制限にもかかわらず 、フィリピン軍事要員 の 立ち入りも 禁止する特定の地域を 設置し、通信設備など諜報 活動 のためのインフラを建設しています。米軍自身も ホロ の施設を「新型作戦基地920」と規定していますが、これは米国はもはやフィリピンに基地を保有していないとする主張と相反するものです。フィリピンは米国との間の条約の細かい規則を堅持しているのに、実際上米軍はフィリピン領土内に設置した基地から 作戦を行って いるのです。 C) 米軍兵士 が関与した市民に対する人権侵害その 他の事件
フィリピンへの米軍配備に関する2003年2月21日のCNNのインタビューの中で、米ペンタゴンの高官は「無制限の戦いとなるだろう 。これは訓練ではない 」と宣言しました。これは、フィリピンにおける米兵の活動の性質 と範囲の広さ を示しています。 特 にモロイスラム解放戦線(MILF)、モロ民族解放戦線(MNLF)、新人民軍(NPA)に対する戦闘作戦に参加するフィリピン兵士との一体ぶり は、先にあげた匿名のペンタゴン高官の主張と一致しています。米海外基地見直し委員会までもが米軍の作戦基地として認識している、米軍要員 の恒久的または長期的使用のための施設が 建設されていることを示唆する証拠は、フィリピンにおける米軍のプレゼンスは短期的なものではなく、また単なる演習のためでもないことを示しています。さらに、米 太平洋軍司令部 が管轄する部隊であり、2002年以降今日まで続くサンボアンガ市のキャンプ・ナバロに配備されているJSOTF-Pの存在は、米兵の「時々の」 訪問についてしか定めていない VFAの枠組み から明らかに逸脱しており、フィリピン政府による本格的な調査を実施するための明確な根拠となるものです。私たちは、VFAを憲法と相容れないと考えていますが、フィリピン国内に米軍要員が継続的に駐留することにより、このVFAそのものが破られていることもまた明白です。 フィリピンへの 米国 の軍事介入を正当化する理由や 根拠として、とりしまる権限もないままにVFAが常に引き合いに出されるため、 私たちは この一方的な協定のすみやかな破棄を何度も強く求めてきました 。 私たちの活動はさまざまな領域で 、狭い範囲から広い範囲に渡る地域での活動を統合して継続しておこなわれており、外国軍事基地の撤廃をめざす地球規模の運動に貢献しています。国際連帯、一貫した持続的な活動のイニシアチブ、メディア活動、さらに重要なのは、献身的で熱心な活動家の重要な集団を多くの領域(大学、政府、ビジネス、教会 、社会運動、地域社会など)で大きく広げる活動です。活動を未来に引き継いでゆく学生、若い世代に焦点を当てた活動は優先課題です 。 私たちは、市民生活と社会的関与は日々実践されるべきであるという信念に基づき、国際的問題を、生活上の問題や地域の懸念事項と結びつけて 取り組んでいきます。 悲痛で困難なこの国の歴史から 得た経験に 学び、私たちは、人々の力によって達成した独裁者の追放、基地の閉鎖、原子力発電所の 稼動 に対する抵抗、腐敗した無能な指導者の追放などの経験から、これからも引き続き激励 を受けるでしょう。沖縄やビエケスの友人、イタリアの米ダル・モリン基地建設に反対する友人、プラハ、エクアドルのマンタの友人や、平和と正義と自由のために世界各地で組織し団結する人びとによる粘り強く 献身的なたたかいや勝利から、私たちは引き続き勇気を与えられるでしょう。 |