2009年12月11日(金)開会総会
日米軍事同盟打破、基地撤去2009年日本平和大会実行委員会
実行委員会を代表して 日本平和委員会事務局長 千坂 純
はじめに
日本平和大会は、1986年以来、平和な日本と世界の実現をめざし、とりわけ米軍基地を縮小・撤去し、日米軍事同盟をなくすことをめざして、開催されてきました。この私たちの運動は、今、現実の政治を動かす重要な力となって働いています。私たちの運動もその一翼を担った、先の総選挙での国民の審判によって、自公政権は退場させられ、これに代わる新しい政治が探求されはじめています。このなかで、私たちがとりくんできた、沖縄の新基地建設反対、米軍への「思いやり予算」削減、核兵器持ち込み密約問題などの課題も、政治の大きな焦点となり、私たちがたたかえば、平和の要求を実現しうる可能性が生まれているのです。こうした新しい情勢のもとで、日米安保条約改定50年を迎える2010年に向け、私たちの平和のとりくみを強める方向を提起します。
1.平和を求める国民の世論が政治を動かす時代が始まっている
(1)大きく変化した情勢――自公政権を退場させた国民の力と要求
この間、私たちは、自公政権がすすめてきた、アメリカいいなりのイラク戦争加担、自衛隊の海外派兵と憲法改悪、米軍基地再編強化などの動きに反対し、運動をくりひろげてきました。そしてそれは、これまでにない新しい局面を切り開いています。
米軍再編強化反対のたたかいでは、沖縄の新基地建設反対の粘りづよい市民、県民のたたかいで、この13年間、杭一本打たせていません。そして09年6月には県議会で与野党が逆転し、新基地建設反対決議を採択しました。さらに今年8月の衆院選挙ではついに新基地建設推進派の自公候補を全員落選させました。沖縄・高江では、米軍ヘリパッド建設に反対する住民の、2年以上にわたる連日の監視・抗議行動で、その工事をストップさせています。横須賀でも、原子力空母配備に反対する市民の共同の運動が発展し、市長選挙では、公約を破って原子力空母配備を受け入れた現職市長を落選させる成果を生み出しました。米空母艦載機移転反対の住民投票で勝利した岩国でも、市庁舎建設補助金の打ち切りなどの卑劣な攻撃によって反対派市長が僅差で落選した後も、米軍住宅建設反対運動や爆音訴訟など、基地強化に反対する市民の共同が広がっています。築城基地の滑走路延長も住民・自治体の反対でストップさせました。憲法改悪に反対し憲法9条を守る運動でも、全国7000に広がった「9条の会」や憲法改悪反対共同センターの運動などによって、憲法9条守れの世論が大きく広がり、来年の国民投票法施行を前に、国会の憲法審査会が機能しない状況をつくりだしています。自衛隊の海外派兵反対のたたかいでも、無法なイラク戦争に加担する航空自衛隊の米軍・多国籍軍の輸送活動を憲法9条違反と断ずる名古屋高裁判決をかちとり、アフガニスタン戦争を支援するインド洋での自衛隊補給活動を中止に追い込む状況を生み出してきました。
こうした平和を求める国民の運動と、国民の暮らしを破壊する大企業の利益優先の新自由主義的構造改革路線への国民の猛烈な不安と批判が、総選挙での審判に結び付き、ついに自公政権を退場させたのです。ここには、国民の行動と選択こそが、政治を変える最大の力であることが、くっきりと示されています。平和を求める国民の世論が政治を動かす時代が始まったのです。
(2)国民の平和の要求と矛盾深める「日米同盟基軸」
こうした自公政治ノーの国民世論を背景に生まれた新政権の「公約」には、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍のあり方についても見直しの方向で臨む」(連立政権合意)とするなど、国民の要求を反映したものもあり、その実行が国民の目の前で試されています。核密約の調査を開始したことなども、自公政権になかった変化です。しかし、同時に新政権は「日米同盟を基軸」とする立場に立っています。日米首脳会談では「日米同盟が日本外交のすべての礎」(鳩山首相)とその「深化」をめざすことを確認しました。しかし、この立場は国民の平和の要求と根本的に矛盾するものです。実際、沖縄の新基地問題などでは、普天間基地の「国外・県外移設」という「公約」とアメリカの軍事的要求との間で大きく揺れ動き、県民、国民の批判を高めています。
こうした状況は、国民の世論と運動、草の根の私たちの行動が政治を変えるという実感を多くの人々に与える一方、様々な平和の要求の実現をはばむ根源に日米軍事同盟があることへの認識を深める、政治的体験を生みだしています。このなかで、どういう日本、どういう日米関係をめざすのかの、広範な人々による模索が始まっています。いまこそ、広範な人々との対話、共同を広げ、米軍基地も軍事同盟もない憲法9条を活かした非核平和の日本、平和なアジアと世界をめざす活動を強めることが求められています。
(3)私たちの運動をあと押しする世界の平和の流れの前進
世界の大きな変化、平和の流れの広がりも、私たちの運動を励ますものとなっています。無法なイラク戦争にみられる、ブッシュ前政権がすすめてきた一国覇権主義は深刻な破綻に陥り、この批判の中でオバマ大統領が誕生しました。このなかで、国連を無視した単独行動主義からの一定の転換が生まれています。核兵器廃絶を求める声は世界の大勢になっていますが、このなかで、オバマ政権も「核兵器のない世界」を追求することを米国の国家目標とすることを宣言し、9月の国連安保理首脳級特別会合で「核兵器のない世界のための条件を築くことを決意」する決議が採択されたことは、国連として初めてのことであり、重要な変化です。
一方でオバマ政権は、アフガニスタン戦争をいっそうの軍事掃討作戦の強化によって「解決」しようとし、大規模な増派をすすめることを発表しました。しかし、これは住民の犠牲の拡大と、戦争と報復テロとの悪循環を招くだけです。必要なのは戦争を中止し、政治的和平を実現することです。このアフガン戦争への反対世論は、米国内でも多数となり、NATO(北大西洋条約機構)諸国でも撤退を求める世論が多数を占めています。この4月のNATO結成60周年に際し、アフガン戦争反対と結びヨーロッパ規模のNATOノー行動が展開されたことは注目されます。オバマ大統領がアフガン増派と合わせて、2011年7月の撤収開始を表明したのも、そのゆきづまりの表れです。
このNATOをはじめとする軍事同盟に属する国々は、半世紀前には52カ国、世界人口の67%を占めていましたが、軍事同盟は次々と解体・機能停止し、実態的に機能しているのはいずれもアメリカを盟主とするNATO、日米、米韓、米豪の4つしかなく、そのもとにある国は31カ国、世界人口の16%に過ぎなくなっています。そして、それとは逆に、東南アジア諸国連合(ASEAN)、東南アジア友好協力条約(TAC)、欧州連合(EU)、南米諸国連合(CSN)など、国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざす平和の地域共同体が、大きく広がっています。
また、エクアドルが憲法に外国軍事基地禁止の条項を明記し、米軍基地を撤去したのをはじめ、チェコで国民の7割が反対した米「ミサイル防衛」基地建設計画を撤回させるなど、米軍基地を撤去し、外国軍事基地を拒否する流れも、世界に広がっています。
2.いま、憲法の輝く非核・平和の新しい日本めざし行動を――米軍基地も軍事同盟もない日本を
こうしたなかでいま、特に次の要求の実現をめざして行動を強めましょう。
(1)米軍基地の縮小・撤去を――沖縄への新基地建設はノー!
在日米軍基地の実態は、@世界ではソ連崩壊後大幅に在外米軍基地が縮小しているのに、自衛隊との共用基地を含めると基地面積が2倍以上に拡大、A海兵遠征軍、空母打撃群をはじめ「日本防衛」とは無縁の海外侵略部隊の一大拠点であり、イラク・アフガンへの常時出撃基地とされている、B地位協定や裁判権放棄密約で米軍に治外法権的特権を与え、事件・事故・犯罪が多発し、住民に深刻な被害を与えている、Cその米軍に「思いやり予算」など世界最大の駐留経費負担を支出――など、世界に例を見ない異常なものです。一刻も早くこの事態をなくし、米軍基地の縮小・撤去を実現することが求められています。「これ以上の基地強化、基地被害は許せない」と、保守的な自治体も立ち上がった米軍再編強化反対の自治体・住民ぐるみのたたかいも、こうした状況の下で生まれたものです。
こうしたなかで新政権は、「米軍再編や在日米軍のあり方についての見直し」を掲げましたが、その立場はアメリカの圧力のもとで大きく揺れ動いています。とりわけ沖縄の新基地建設問題をめぐっては、「国外・県外移設」の公約も反故にし、「県内移設」の方向で結論を出す危険が生まれています。しかし、沖縄県民が超党派で「普天間基地の撤去、新基地建設・県内移設反対」を掲げて2万1千人の県民大会を開いたことや、世論調査でも7割以上が県内移設に反対し、沖縄の米軍基地の縮小・撤去を求める声が83.5%に上ることに示されているように、県民の意思はすでに明確です。この13年間の沖縄県民のたたかいが示しているのは、基地の無条件撤去以外に解決の道はないということです。
新政権は、米軍基地の現状と「米軍再編」計画を、アメリカいいなりに当然視し、その枠内で『基地のたらい回し』をするのではなく、異常な米軍基地の状況を根本的に見直し、「危険な基地はいらない」と、国民の立場に立って堂々と米政府と交渉すべきです。沖縄県民とともにその声をあげ、米軍基地の縮小・撤去を実現しましょう。
横須賀の原子力空母配備と原子力潜水艦の恒常的な寄港、原子炉メンテナンスなどの動きも、首都圏3000万人の命を危険にさらす極めて重大な問題です。原子力空母母港撤回、岩国、座間・相模原、横田など米軍再編強化やめよ、異常なグアム基地建設費用支出や「思いやり予算」の中止、日米地位協定の改定の声をあげましょう。
(2)核兵器のない世界実現の先頭に立ち、非核の日本を
NPT(核不拡散条約)再検討会議に向けて、核兵器廃絶実現へのこれまでにない新しい変化が生まれています。鳩山首相は国連で「核兵器廃絶の先頭に立つ」「非核3原則を厳守する」と演説しました。この言明に立って、いまこそ被爆国日本にふさわしいイニシアティブを発揮すべきときです。特に、核兵器廃絶条約締結交渉の合意を正面から提起し、その障害となっている「核抑止力」論を打破するイニシアティブを発揮すべきです。
ところが新政権は、国連決議でも核兵器廃絶条約締結を正面から提起せず、ひきつづき日米軍事同盟の下でのアメリカの「核の傘」は必要との立場を表明し、核密約の調査・検証の作業でも、核搭載艦の寄港・通過も含めて拒否する立場を現時点では明言していません。これでは本当に被爆国にふさわしい役割を果たすことはできません。
私たちは、アメリカの「核の傘」を脱却し、核密約を公表・破棄して、非核3原則を名実ともに厳守することを求めていく必要があります。横須賀、佐世保、ホワイトビーチへのトマホーク核ミサイル積載任務をもった原子力潜水艦の寄港拒否も実行すべきです。
NPT再検討会議に向けて、「核兵器のない世界を」署名を大きく広げ、非核の日本を求める世論を広げましょう。
(3)自衛隊の海外派兵を中止し、憲法にもとづく平和外交を
これまで自公政権は、イラク・アフガン戦争を支持し、自衛隊を派兵して戦争に加担するという、憲法違反の暴挙を重ねてきました。ソマリア沖にも武力行使の危険をはらんだ海空陸の部隊の派兵が続いています。そして自衛隊の中心任務に海外活動を位置づけ、陸上自衛隊中央即応集団のような海外派兵を中心任務とする部隊の育成や市街地戦闘訓練、空中給油機や大型の輸送艦、「ヘリ空母」(ヘリ搭載護衛艦)など、海外派兵型の軍拡をすすめてきました。「米軍再編」を通じて、世界規模で米軍と自衛隊が一体に戦争できる態勢をつくるために、座間・相模原基地での陸軍の司令部の一体化、横田基地での共同統合運用調整所の設置や空軍の司令部の一体化などをすすめています。憲法9条改悪のねらいも、こうした世界規模で米軍・自衛隊が戦争できる体制づくりにあります。憲法の立場で、こうした流れをたちきることこそが求められています。
いまオバマ政権は泥沼化するアフガンへの増派をすすめ、新政権は50億ドル(4500億円)のアフガン支援をすすめようとしています。しかし、こうした戦争を支持しながら「支援」するのではなく、戦争の中止と和平への努力へのイニシアティブを発揮することこそ、憲法にもとづき日本がやるべきことです。
民主党が、「官僚答弁の禁止」のなかに内閣法制局長官も含め、「政治主導」で憲法解釈を勝手に変え、海外の自衛隊の武力行使に道を開こうとする危険性も、注視しなければなりません。憲法9条守れの共同をさらに広げ、憲法を活かした平和外交を実現しましょう。
(4)安保50年に向けて――日米軍事同盟を廃棄し、平和友好の日米関係を
○国民の要求と「日米同盟」との矛盾の深まりのなかで
これまで見たように、米軍基地の縮小撤去の問題でも、憲法を守り非核の日本を実現する問題でも、国民の平和の要求と日米軍事同盟との矛盾が、いっそうみえやすくなっています。また、暮らしの問題でも、雇用や農業、営業、福祉の破壊などの根源の1つに、日米安保条約にもとづくアメリカいいなりの経済政策の推進があることが、明らかになっています。このなかで、立場の違いを超えて、日米関係はどうあるべきかの議論と探求が広がっています。ここに世論発展のあたらしい条件があります。
たとえば米軍基地問題で「日米同盟」「日米安保」と激しくぶつかる沖縄では、世論調査で、日米安保条約について「維持すべきだ」は16.7%にすぎず、「平和友好条約に改めるべきだ」が42%、「破棄すべきだ」が10.5%、「米国を含む多国間安保条約に改めるべきだ」が15.5%という結果が生まれています。ここには、私たちが今後進むべき道が示唆されています。いまこそ、広範な国民と対話し、共同を広げ、日米軍事同盟を廃棄し、平和友好の日米関係をの世論を広げましょう。
○平和な北東アジアを実現する努力と結んで
こうしたなかで、日米安保条約改定50年を節目に、日米軍事同盟強化をめざす人々は、日米安保は「日本防衛に不可欠」「アジア・太平洋の平和と安定の礎」などのキャンペーンを展開しようとしています。しかし、この世界最大の核軍事力保有国と世界有数の軍事力を持った日本の軍事同盟の存在こそが、むしろ東アジアの軍拡と緊張を高める悪循環を生みだしており、軍縮と緊張緩和の実現こそ求められています。いま必要なのは、軍事同盟の強化ではなく、「6カ国協議」合意にみられるように、相互の敵対的関係を解消し、緊張を低め、平和の関係を築く努力です。憲法の立場でそうした周辺国との関係をつくることこそ求められています。
すでにみたように、世界の流れは、核兵器廃絶とともに、米軍基地を撤去し、軍事同盟を抜け出して、国連憲章にもとづく平和の関係を広げる方向です。平和を求める世界の市民と連帯し、市民の力が政治を変えることに確信をもって、米軍基地も軍事同盟もない、憲法の輝く非核平和の日本の実現のために、いまこそ行動しようではありませんか。
≪当面の重点課題≫
●沖縄・新基地建設反対、普天間基地の無条件撤去のたたかいへの全国的な支援・連帯を広げましょう。12・17連帯集会(東京)を成功させ、名護市長選挙勝利への支援をつよめましょう。来年の沖縄県知事選挙で県民の立場に立つ知事を実現しましょう。
●横須賀の原子力空母母港を撤回させましょう。原子炉関連のメンテナンスの中止、関連施設の撤去を求めましょう。岩国、座間・相模原、横田など米軍再編強化反対の運動への連帯をつよめましょう。
●異常な「思いやり予算」廃止、屈辱的な日米地位協定抜本改定などを求めましょう。
●インド洋、ソマリア沖からの自衛隊の撤退をはじめ、自衛隊の海外派兵に反対し、憲法の明文・解釈改悪を許さない共同を広げましょう。海外派兵型の軍拡に反対し、軍事費削ってくらしにの運動をつよめましょう。
●NPT再検討会議に向けた核兵器廃絶署名を人口1割以上を目標に広げましょう。核密約の破棄と非核3原則厳守を求めましょう。原子力潜水艦の入港拒否を求めましょう。
●6・23安保条約改定50周年に向けて、草の根からの学習・対話運動を広げ、日米安保条約廃棄の世論を広げましょう。6月上旬の安保廃棄めざす集会と6月の安保廃棄めざす統一行動月間を成功させましょう。
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