2007年大会INDEX

2007年日本平和大会in沖縄 国際シンポジウムパネリスト発言


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高・維京
(韓国)

駐韓米軍犯罪根絶運動本部事務局長
Ko You Kyoung (コ・ユギョン)
The Campaign for Eradication of Crimes by U.S. Troops in Korea, Bureau Chief)

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駐韓米軍再編と問題




 駐韓米軍基地の再編は、2000年海外駐屯米軍基地の再編という米国の要求で交渉が始められ、2002年3月韓米間連合土地管理計画 (LPP = Land Partnership Plan)協定締結の合議に至った。1次基地再編に合意後、その年の12月、第34次韓米年次安保協議会議(韓美年例安保協議会議。SCM = Security Consultative Meeting)を通じて未来韓米同盟政策構想(FOTA = Future of the ROK-US Alliance Policy Initiative)を推進することが決まり、2004年10月米2師団と竜山基地の再配置合意に至った。
 再配置により休戦線(DMZ)近隣に配置された米軍を撤收させる代わりに、平澤(Pyeongtaek)、群山(Kunsan)地域など、中国と隣接する西海岸米軍基地が拡張、強化される。約3万7千人の駐韓米軍が2万5千人に削減されたが、新たに再編された駐韓米軍は世界紛争地域のどこへでも戦闘に參加可能な部隊として再編されるだろう。米国は駐韓米軍再編にかかる費用の大部分を韓国が負担せよとの巧妙な要求をしている。
 駐韓米軍基地の再配置は汚染された古い基地を返して、米国の軍事的目的に合った、戦争のための新たな基地をつくることである。故に韓国内で米軍基地は、絶え間なく問題を発生させる原因となるのである。


1. 駐韓米軍基地再編と戦略的柔軟性

 2004年米軍基地再配置協定1)が締結されるまで韓米間の交渉が進行する間、さまざまな市民社会団体は、駐韓米軍の性格変化、即ち駐屯軍から機動軍へと変り、朝鮮半島の防御の目的ではなく、先制攻撃概念まで含まれた東北アジア地域軍として変化することへの憂慮と批判を提起した。しかし当時のノムヒョン政府は駐韓米軍の性格変化を認めようとはしなかった。しかし米軍基地再配置協定が国会批准を受け、住民の土地を強制的に收用し、所有権を剥奪した後に、韓米両国は駐韓米軍の戦略的柔軟性を公式的に合意した。
 2006年1月韓米外務長官間の共同声明で発表された戦略的柔軟性(strategic flexibility of USFK)合意は朝鮮半島以外の他紛争地域に対する米軍の介入論議を巻き起こした。韓米相互防衛条約(the ROK-U.S. Mutual Defense Treaty)の範囲を超える駐韓米軍の活動によって、韓国は、自らの意思とは関係なく紛争に介入せざるを得ないかもしれないのだ。韓米相互防衛条約に基づいて締結された駐韓米軍地位協定(SOFA = States Of Forces Agreement)によって駐韓米軍は無料で土地の提供を受け、韓国政府に駐屯費用(burden sharing)を負担させている。従って米国が韓米相互防衛条約に違反した場合、韓国が土地と費用を負担せねばならない法的根拠が喪失する。しかし韓米両国はこのような問題提起を巧みに避けている。条約や協定ではない長官間共同声明という形式を取ることで、憲法で保障された権利侵害を問うことすらできなくなってしまったわけだ。
 このような問題提起は2004年12月の基地再配置協定の批准当時にもなされたが、外交安保に該当する事項故に、早急に処理してくれという政府の要請によって、徹底した検証なしに批准された。国会は協定を批准する代わりに、指摘された問題点を検討する聴聞会(hearings)を開催することにしたが、この約束は3年過ぎても守られていない。
 協定に対する国会批准以後、政府は‘国会同意’を根拠に地域住民の土地を強制的に収用する手続きに入った。総合施設計画(MP Master Plan)もなしに国会同意を受けたこの事業は事業計画推進過程においていくつかの問題を抱えている。
 2005年11月、米国は丈夫な平澤米軍基地建設のために洪水予防用として基地予定敷地を2~3m規模高める盛土を要求した。堤防が丈夫なため不必要だという韓国側の説明にも関わらず、米国は1800万m3 (25トントラック144万台)規模、5千億ウォンほどの工事費がかかる盛土を要求し、韓国政府はこれを受け入れ規模を協議している。
 また2007年の春になってその輪郭をあらわした総合施設計画によると、平澤拡張敷地349万坪(2,850 acre)中、空軍基地近隣拡張地である64万坪(523 acre)には施設計画がない。竜山基地と米2師団の移転による土地買入で住民の土地を收用しておいて、今になって何も計画がない安全地域圈だというのだ。政府にとって‘国会同意’とは、自分達の事業を合理化させる根拠となるだけ、‘国会同意’を受けるために充分な説明もなく、同意の前提であった聴聞会開催意思さえ見えてこない。
 駐韓米軍の地域軍化、迅速機動軍化は韓米軍事同盟が対北防御から侵略同盟へと変ることを意味し、韓国政府はアフガン、イラク戦争に軍隊を派遣し米国の戦争を助けるだけでなく、自国国民である平澤の大秋里(Daechuri)、トド里(Doduri)住民へ暴力を行使、村から強制的に追い出した。
 韓米両国は駐韓米軍再配置のために2004年362万坪(2,957 acre)の土地を米軍へ提供することに合意し、平澤住民を強制移住させた。しかし合意以後、追加でより多くの土地が米軍へ提供されている。平澤の場合、既存の349万坪(2,850 acre)に、安全地域圈設定という理由で462,800?(14万坪)規模の土地買入2)が追加された。
 米空軍基地がある群山の場合、2,019,000m2 (61万坪)規模の安全地域圈と、909,000?(約28万坪)規模のヘリコプター部隊敷地のための土地提供が進められている。地域住民の証言によると住宅街に近い基地内に弾薬庫が増え、安全地域圈が拡張されているという。住民居住地域であることをわかっていながら、近隣に危険物質を拡大駐屯させるということは住民の安全を考慮していない証拠だ。また2つのヘリコプター大隊800人の米軍が駐屯する計画で追加土地提供がなされており、すでに戦闘機の騒音に悩まされている住民がヘリコプターの騒音によって深刻な被害を受けることが予想される。


2. 返還米軍基地の環境汚染問題

 数十年間、肥えた土地にしてきた農民の土地を強制的に奪っておきながら、米軍から返してもらったのはゴミと汚染だらけの土地だった。
 駐韓米軍再配置に伴い、2011年までに約60の基地と訓練場が返還される予定にある。しかし 2007年4月、6月に返還手続きが完了した29の基地と訓練場は米国の浄化なしに返還された。
 2001年に改定された韓米SOFAとそれによる返還基地環境浄化手続きを扱ったSOFA付属書Aによると、返還される米軍基地は韓米両国の共同調査を経て、汚染が発見された所を米国が浄化した後 返還することとなっている。 問題は浄化の基準であり、米国の浄化措置に対する韓国政府の検証である。
 韓国環境部は韓国法による環境浄化を要求したが、米国は‘公知であり切迫、人体に相当な危険が及ぶ程度(KISE=Known Imminent and Substantial Endangerment to Human Health)‘という基準を出してきた。米国が示したKISEという基準は基準ではない。いくら汚染された土地や地下水だといっても人が暮らさない非武装地帯の場合、人間に有害ではないという理由で浄化しないなど、米国が示す論理は甚だ米国中心的だ。世論調査で80%ほどが返還米軍基地を米国が浄化せねばならないと考えているという。世論が不利に動いていると考えた米国は △地下油類貯藏タンク除去 △PCB品目除去 △輸送部と有害物質/廢棄物集荷場の目に見える流出物_掃 △小火器射撃場の被弾地内の鉛、銅汚染土壤除去、および處理 △駐韓米軍によって運營される射撃場表面の不發彈處理 △貯藏タンクの油類放出、および除去 △暖房および温水裝置排水、_掃および流水分離 △冷房裝置の冷却劑排水および除去の8項目の措置を取り、油類以外の地下貯蔵タンク除去、小火器射撃場全体の鉛と銅汚染土壤除去、(地下水中の)浮遊油6ヶ月間の除去の追加措置を取るとした。これに対する韓国側の合意なしに米国は一方的に自分達の計画を発表した後、8項目の措置が完了した基地の警備を撤收させた。
 環境浄化に対する合意がなされなかったため、米国の一方的な通報をうけいれられないと環境部が反対したが、国防部(the Ministry of Defense.MND)は米軍から基地管理権を受け取り、 米軍ではなく韓国軍人が基地警備にあたっている。
 米国が一方的に基地管理権を返したのには、毎月40万ドルに達する警備用役費を節約するためだ。すでに閉鎖された基地を守るのに費用がかかるため、これを節約するために警備を一方的に撤收させたのだ。すでに返還された米軍基地の環境汚染を浄化するならば、少なくとも1千億ウォンから最大10兆に至る多くの費用がかかることが予想される。つまり韓国国民は米国のゴミを後始末する環境浄化費用を税金で負担せねばならないわけだ。 
 米国が環境浄化をせずに一方的に基地を返還したことに対しては、国会議員も深刻な問題意識をもち、2007年6月、国会環境労働委員会は返還された米軍基地に関する政策聴聞会を実施した。現場調査と韓国側交渉部門の調査を通じて米国が約束した8項目の措置と追加措置も全くなされておらず、SOFA手続きも無視したまま基地が返還されたという事実が明らかになった。国会聴聞会の結果、今後米軍基地が返還される前に環境浄化基準を具体的に明示して、米国が浄化するようSOFAを改定せねばならないという課題を提出した。2008年以後に追加で米軍基地が返還されると予想されるが、韓国政府はいまだにSOFA改定のための協商提議さえ行っていない。
 

3. 増える駐韓米軍の重大犯罪

 駐韓米軍による犯罪の全体数は減ってきている。最近になって駐韓米軍再編に伴い1万2千5百人が削減されたため一層減ってきている。しかし昨年と今年、駐韓米軍人による重大犯罪はいつになく増えている趨勢だ。 米軍人の数は減っているのに、重大犯罪が増加しているのは 深刻な事態だ。重大犯罪部分で減っていないのはアフガン戦争、イラク戦争と深い関連があり、駐韓米軍の戦略的柔軟性による循環配置の結果として表れる状況だと考えられる。
 2007年4月5日、フェルドメン(Pfc. Feldmann, 当時21)一等兵は昼間からソウルの江南でベイズル(Sgt. Basel当時23)兵長と酒を飲み、午後6時頃、チョンダム洞の道ばたを子どもを連れて歩いていた30代の女性にわいせつ行為に及んだ。ベイズル兵長は現場で警察に連行され、逃げたフェルドメン一等兵はベイズル兵長の電話を受けて警察に自首し、被害女性に土下座して謝罪した。被害女性は謝罪を受け入れ、これ以上問題にしないとして、ふたりの米軍人は解放された。しかし彼らは解放されてから30分ほどしてから、近隣の建物の公衆トイレで女性を性暴行しようとした。悲鳴を聞いて建物の警備員が駆け付けると米軍人は逃走し、出動した警察に逮捕されたが、犯罪事実を否定した。フェルトメン一等兵は建物のトイレに入っていないと言い、ベイズル兵長はトイレに入ったのは事実だが女性を性暴行しようとはせず、ぶつかって転倒させたと主張した。
 ふたりは拘束、起訴され、裁判を受けて1審の結果、懲役刑が宣告され抗訴した。裁判過程で女性を性暴行しようとしたベイズル兵長は、イラク戦争参戦後遺症を訴えた。1年間イラク戦争に服務し、親しい同僚たちが目の前で死亡する場面を目撃するなど精神的な衝撃を受け、飮酒教育治療を受けているというのだ。ベイズル兵長はイラク戦争に参戦する前には酒も飲まなかったと主張した。
 このような主張は群山でも同じだ。2007年4月22日の夜12時頃、群山米空軍憲兵(the 8th Security Forces Squadron) 所屬マーティンス一等兵(Martens, 24, 1st Class)とカーペンター一等兵(Carpenter, 27,1st Class)、そして米国籍の民間人チェスボロ(Chessbro, 21)の3人は事前に計画を立てて、タクシー運転手を暴行しタクシーを盗もうとしたが失敗して逃走した。当時タクシーに置いあった服などの証拠品から、近隣を捜索して3人を逮捕した。現在拘束、起訴され裁判を受けて1審で懲役刑を宣告された。これに抗訴して2審裁判が進められている。3人はタクシー運転手暴行以前にも、近隣住宅街に駐車中の車荒らしをした疑いがある。タクシーの運転手を主導的に暴行したとされるマーティンス一等兵は、裁判過程でイラク参戦による後遺症で病院治療を受けていると証言した。マーティンス一等兵は懲役刑が宣告された日に法廷で気絶したこともある。
 米軍の主張が事実ならばこれは深刻な問題である。戦争参戦後遺症で病院で情神治療を受けている者を軍隊で服務させ続けるのも問題だが、海外で服務させるのは米国政府が犯罪を助長しているという批判を受けるに充分だ。今後戦争地域による駐韓米軍の循環配置が続くのならば、このような事件があとを絶たないだろう。
 米国防省は陸軍に循環配置プログラムを通して、どのような戦闘旅団も紛争地域に即時投入されるように訓練を実施している。駐韓米軍の戦略的柔軟性と循環配置は、参戦米軍人がきちんとした治療を受けないまま再び韓国に戻ってきて勤務することを意味し、今後は一層の犯罪発生と被害が憂慮される。去る6月26日の米軍新聞によると、駐韓米軍の麻薬服用も増加趨勢にあるという。
 最近の米軍犯罪は女性に対する性犯罪だけではなく、タクシー運転手暴行と奪取事件が頻繁に発生しており、暴行など行きずりの韓国人を暴行する事件も起きている。67歳の女性暴行事件(2007.1.14.ラミレズ二等兵(Pvt. Ramirez)。米2師団所属当時23。懲役4年宣告)、議政府でのタクシー運転手暴行、および奪取事件(2007. 3. 26. 憲兵アダムス一等兵(pfc. Adams, 21) 懲役3年6月宣告。抗訴裁判中)、東豆川(Dongducheon) 廣岩洞(Gwangamdong) 地域住宅乱入、器物破損、美容室放火(2007. 5. 19) などの猟奇的な事件が続出している。米軍の戦争参加後遺症の実態調査と対策が要求される。


4. 結び

 世界平和のために米軍が駐屯しているという地域で発生している被害は、平和とは正反対の位置にある。暮らしていた土地を失い、共同体が破壊され、犯罪と汚染にさらされている駐屯地域の市民の安全と平和が脅かされているのだ。米軍の安定的な駐屯のために地域市民の税金で建物を立て、武器を買い入れている。米軍の軍事訓練と武器によって戦争地域の民間人は死へと追いやられている。悪循環の連続だ。
 米国は軍隊を駐屯させている国家との軍事同盟強化、一体化を推進しており、これは私たちにとって深刻な挑戰だ。韓国の場合、平和協定の締結、北米関係の正常化などが推進されている反面、韓米同盟の強化を通じて多額の国防費支出、武器の導入を推進している。日本もまた憲法改定の試み、日米同盟の一体化などを通じて軍事化を推進している。米国の軍事政策に同調して、アジア地域の軍事化が強化されることを防ぐために、アジア地域の平和運動が共同の声をあげ、交流と連帯強化に努めなければならない。
 米軍駐屯による被害と米国の戦争に同調する軍事化は、米国が軍隊を送っている世界各地域で発生している。戦争ではない平和のための私たちの活動が、地域と国境を越えて交流と連帯を通じ、一層広まっていくことを願っている。