2006年大会INDEX

2006年日本平和大会in岩国・広島 国際シンポジウム特別報告


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吉岡 光則


岩国市住民投票を力にする会会長
岩国平和委員会事務局長

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艦載機移駐反対のたたかい



 ここ岩国市は広島市の南西35kmにあり、町の中を流れ瀬戸内海に注ぐ錦川のデルタの3分の2すなわち570万?と2000万?余りの海が、米第3海兵遠征軍の戦闘攻撃機部隊の基地にされています。現在、爆音や墜落事故などの被害をなくしてほしいという市民の願いを逆手にとって、「滑走路沖合移設事業」と称する新たな基地の増設工事が、09年春完成予定で進められています。そしていま、ここに厚木基地から艦載機部隊を移駐させるという計画が打ち出されたのです。これを許せば、岩国基地は、所属米軍機総数では嘉手納基地を抜いてアジア最大の航空基地になります。艦載機の岩国への移駐の目的は、海兵隊と海軍の統合運用による「殴り込み」機能の強化・効率化です。岩国は、アジアはじめ世界の国々にとって最も危険な基地のひとつになります。
 安保条約廃棄・岩国基地撤去山口県実行委員会は昨年6月19日、中国・四国地方の仲間によびかけて3,500人の反対集会と岩国基地包囲行動を行ないました。私たちは、この行動が以後の市民のたたかいに火をつけたと思っています。
 岩国市長は昨年の6月議会で、艦載機部隊の岩国移駐は「基地の性格を完全に変えるもので、市民への被害は計り知れない」と反対を表明し、岩国市議会も6月23日、反対を決議しました。ついで、岩国市自治会連合会が反対を決議し、市民過半数の反対署名を集めるなどかつてない市民の動きも起こりました。反対運動は、広島県西部はじめ岩国基地の被害を受けてきた各地に広がりました。
 しかし、「2+2」の「中間報告」以後、政府の圧力、山口県知事、岩国市議会の議長らのグループ、商工会議所、周辺町村長などが、移駐受け入れ前提の条件交渉を主張し始めたために、あくまで移駐に反対する市長は住民投票に踏み切りました。そして、3月12日、投票者の約87%、全有権者の過半数が「艦載機受け入れ反対」を表明したのです。
 住民投票を歓迎する市民グループは、投票成功のために奮闘しました。私たちは「艦載機受け入れ反対に○をする会」を結成し運動しました。この会は、日米安保条約廃棄・基地撤去を方針としている労組・民主団体・政党の共闘組織ですが、その方針を市民に押しつけるのではなく、思想信条・社会的立場の違いを超えて市民の最大公約数的要求でたたかいの輪を広げることこそいまのたたかいの焦点だという立場で、とにかく投票に行って一人ひとりの意思を表明しようとよびかける大量宣伝と対話をくりひろげました。対して、艦載機受け入れ派は、「防衛は国の専管事項」「反対しても無駄。それより見返りをもらう方が得策」などと投票ボイコット運動を起こしました。その中で、「投票ボイコットとは市民を馬鹿にしている」「黙っていたら際限なく国のいいなりにされる」といった対話が市民の間に急速にひろがり、前述の結果になったのです。
 その後3月20日に、岩国市は周辺7町村と合併し、4月23日に市長選挙が行なわれました。移駐計画の白紙撤回を主張する井原前市長と、政府・自民党の全面支援を受けた艦載機受け入れ派候補との争いとなりましたが、井原氏が得票率69%で圧勝しました。
 住民投票や市長選は、岩国市民の基地問題に対する初めての意思表明の機会でした。そして、いずれの結果も艦載機移駐計画に対する市民の怒りを示しています。ひとつは、「もう堪忍袋の緒が切れる」という、日米安保も基地も必要だと思ってきた人を含む大方の市民に共通する基地公害に対する怒りです。もう一つは、冒頭に述べた「滑走路沖合移設」事業に騙されたという憤りです。
 しかし、5月1日に「ロードマップ」が発表され、同月末、日本政府はこれを「閣議決定」しました。以後、政府は、「地域振興策」を餌に、岩国市長を屈服させようとさらに圧力を強めています。市民の一部に「いくら反対してもだめなのか」といった悲観的気分が生じていることも事実です。「地域振興策」への幻想も一部にあります。同時に、「基地がなければこんな問題も起こらないんだ」と考え始めた市民もいます。
 10月22日に、合併後初の市議会議員選挙がありました。地方新聞のアンケートで艦載機移駐に反対と答えていた候補者が、定数34の半数を占めましたが、新しい議会がどういう方向を打ち出すか、予断を許さない面もあります。岩国市長は、態度を変えてはいません。いずれにせよ、市長や市議会の姿勢を決めるのは私たち市民の世論です。そのことは、住民投票、市長選、市議選を通じて多くの市民が実感しています。
 「反対に○をする会」改め「住民投票を力にする会」は、いま、互いに励まし合って、粘り強くたたかいましょうという気持ちを込めて、「いやなものはいや!艦載機来るな」「静かな空はみんなの願い」と書いたポスターを貼り出す運動を進めています。
 今度の米軍再編は、日米安保条約や基地を必要だと思ってきた多くの人びとに、もっとも大きな矛盾をもたらしています。直面する一致点での共同を追求しつつ、対話を深め、広げていかねばならないと考えています。同時に、沖縄・神奈川をはじめ全国のたたかう人びと、および「平和を愛する諸国民」(憲法前文)との連帯を具体的に追求したいと考えています。