2006年大会INDEX

2006年日本平和大会in岩国・広島 国際シンポジウムパネリスト発言


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デブトラリン・キナ


グアム
「チャモロ・ネイション」代表

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アメリカの軍事化:団結の力


 私は、ある国に深い関心と混乱を抱え、この大会に参加しています。その国は、17世紀の半ば、オランダ人が入植し、そしてイギリス人の支配を経て、独立しました。その国では、先住民は征服されましたが、先住民との関係が現在も問題になっています。その国は、他国と敵対的で、現代技術の活発な活用により豊富な自然資源を破壊しています。かつては奴隷を受け入れていた国。そして今は、この過去の束縛の最後の痕跡をぬぐうためにたたかわなければならない国。それは、もちろんアメリカのことです。
 昨年の今頃、米政府は7000人の海兵隊を沖縄からグアムに移転する計画を発表しました。以来、軍備拡張の流れとともに、その規模はコントロールできないほど増大し、終わりがないようです。
 最初は7000、次に8000。プラス9000人の家族や軍属。最終的に、グアムの知事の6月28日の発表によると、陸海軍の35000人の兵士と家族がやってくることになりました。この中には、15000人の搾取されているフィリピン人労働者は含まれていません。彼らはよりよい賃金を求めて家族を離れ、懸命に働いています。建設ブームがあるからなのですが、途上国の荒廃に拍車をかけています。彼らの税収は、グアムの人々に還元されません。
 米国は21世紀の植民地を軍人と戦争マシーンであふれさせようとしています。海軍によると、すでに3隻の原潜が配備されていますが、新たに6隻追加されることになっています。大規模なグローバル・ストライク(全地球的打撃)と6番目の空母の配備など計画はたくさんあります。米太平洋司令部の副司令官ダニエル・リーフは、最近、アンダーソン空軍基地に、諜報・監視・偵察の核となる施設をつくる計画を発表しました。この強化は、すでにグアムの3分の1の土地を占拠している強大な空軍と海軍の戦力の誇示を補うだけのことです。
 にもかかわらず、この野蛮な人口統計学的な変化にグアムがどう向かい合おうとしているのか、減少しているがグアムの人口の37%はチャモロ族であることなど、誰も語りません。帝国の狂気の戦争計画のなかをチャモロ族がどう生き延びるのかなど誰も心配しません。
 現在まで、社会的・環境的影響調査は行われず、グアムの人々はこの強化が島と人々にどのような負担を強いるのかわかっていません。沖縄の最近の実情調査によると、強姦や強姦殺人を含め驚くほど社会暴力が起きていることが明らかになっています。沖縄が日本に返還されて34年、4790件の軍人による民間女性への暴力事件が起きています。にもかかわらず、国防総省の誤報役人たちは、海兵隊員たちは家族を大事にする者たちであると保証しているのです。
 基地の拡張主義者たちは、現代の米軍はより親切でやさしい、地元の自治体当局ともより協力的で、地域社会のニーズにより敏感であると主張しています。しかし、移転についての神秘的な基本計画は、3度にわたる約束にもかかわらず、グアムにまだ提示されていません。ですから、私たちは、軍備拡張のたいまつが今よりひどくなり私たちに火傷を負わせることがないよう望みながら、何もわからずあてもなく心配している状況です。
 一方で、グアムは最近、最大規模の共同軍事演習場のひとつにされています。22000の兵力、30の艦船、280の戦闘機が「勇敢な盾」作戦に参加しました。その同じ週末、海軍が水道を管理している多くの村で水道水の供給が停止されました。これらの村人たちは、60日間のうち30日ほど水道水の供給を受けることができず、いまだに水が不足しています。果てしない軍の欲のために土地をさらにとりあげる計画もあります。米軍は外国、国内の脅威から市民を守るために存在していると言われるけれども、誰が軍の横暴から2級市民を守ってくれるのでしょうか。
 第26回グアム議会は委員会を設置し、1946年から58年のマーシャル諸島における米核実験がどれほどの被害をグアムにもたらしたかの調査をおこなうことを決めました。その委員会は報告をだし、グアムが放射能の汚染にさらされた事実を明らかにしました。グアムはマーシャルから1200マイル西に位置しますが、エニウェトク環礁やビキニ環礁で行われた67回の核実験のうち10回以上の核実験による放射性降下物にさらされていました。
 爆弾から出たさまざまな放射性物質を測定した飛行機がグアムにもどってきて、放射能を洗い流す作業も行われました。
 現在まで、アプラ港とココス環礁の汚染はまだ除去されていません。グアム環境保護局は、この地域の水中のダイオキシンががんをひき起こすほどの危険なレベルであるために、この地域の魚を食べないようにとの警告を発しました。グアムのちょうど東部で、2005年に4人の目玉のないマーシャルベイビーが生まれました。このことは、人間が隣人を殺す効果的な方法を競うことのつけは、その人が生きている間に見ることのない孫たちが支払うのだということを教えています。
 関連する汚染の報告があたり一帯から出ています。最近、テキサスのハリス郡で、50年間の罪にまみれた退役米海軍大尉が、公証人の前で、グアムはマーシャル諸島の水爆実験の放射性降下物にさらされたと証言しました。当時、グアムに駐留していた原爆・生物・化学戦争防衛担当官のバート・シュライバーは、1952年11月3日、エニウェトクでの水爆実験の2日前、グアムで放射性物質が発見された後、彼の上司が彼に他言するなと命じたことを文書の中で証言しました。放射性降下物は、疑うことを知らない人々の上に、ちりのように降りました。そのようなことがなければ平凡な朝でした。今日、もうひとつ世界に蔓延しているのは、ひどい無気力さです。世界から人々全体が奪われようとしているのに、それを止めようとしない無情なやる気のなさがあります。
 とりわけ、アメリカがそうです。アメリカは手に負えない軍の駐留、農民や貧困者への重税などを望まない革命家や、基本的に他人の踏み台になるために背中に鞍をつけて生まれてくる人はいないと信じている人たちによってつくられた国です。この考え方は、アメリカの独立の原則でした。それがゆっくりとした死にさらされています。
 人間の生活に価値を与えるすべてのもの−家族、仕事、教育、どこで子どもを育て、どこで頭を休めるか−すべてが政府の決定に委ねられています。政府が国民の要求に耳を貸さなければ取り上げられてしまいます。それゆえ、人の人間性というものは、政府に、富裕層、特定宗教の人たち、特定の人種の人たちに対してだけでなく、すべての国民の声に耳をかたむけさせることによってのみ守られるのです。
 イタリアの哲学者の言葉に、「物事の新しい秩序を導入する先頭にたつことほど、とりかかるのが困難で、行うのは冒険的で、成功が不確かなものはない」というのがあります。これはすべての世代の人々がとりくむべき方法であり課題です。そしてその道は、多くの危険にあふれています。
 誰も友人からの不同意や、同僚からの非難や、社会の憤りを招くようなことをあえてしたくはありません。道徳にもとづいた勇気は、たたかいでの勇敢さや偉大な知性よりも貴重なものです。しかし、それは世界を変えようとしている者にとって、なくてはならない素質です。好むと好まざるにかかわらず、私たちはおもしろい時代に生きています。危険であり不確実な時代、しかし、人類史上、いかなる時よりも、最も創造的な時でもあります。そして、ここにいる私たちは、新しい世界をつくるうえでどれほど貢献したか、そして、その努力の中でその人の理想や目標がどれほど形になったかが試されるのです。
 会議が終れば、私は自分の国の帰り、私たちは離れ離れになります。もし、53歳の女性が世界の若者たちに何か言えるとしたら、それは、私たちはそれぞれ自分のやるべき任務を持っているということです。時々、問題や困難を抱え、孤独になったりもします。私もそういうことがあります。しかし、みなさんがたたかっている大義、みなさんの努力にどれほど感銘をうけているかということを、私自身だけでなく、みなさんが会ったことがない人たちに言いたいのです。他の国々でもともにたたかっている人々がいるということから勇気をもらいましょう。そして、とりくんでいる問題はそれぞれ異なりますが、私たちの目標は同じです。よりよい未来をつくるという共通の目的に向かって、ともにがんばりましょう。